中国が「半導体製造装置の自給自足」に苦戦している理由
Reutersが2025年末に報じたところによると、中国は国内半導体メーカーに対し、新工場を建設時に、前工程製造装置(WFE)全体の少なくとも50%を国内メーカーから調達することを実質的に義務付けているという。中国が製造装置の自給自足には程遠い状況にあることを踏まえると、こうした義務付けは意外なものだといえる。しかし、SMICが調達した一部の海外製装置が、制裁措置の影響によって使われずに放置されている状態にあることから、この要件にはメリットもあるかもしれない。ここで主な問題となるのは、「中国は同措置によって、本当に国内WFE産業を加速できるのか」「中国WFE産業は、本当に日米欧の競合に付いていけるのだろうか」、という点だ。
新しい前工程工場の装置全体の少なくとも50%を中国製にするという要件は、まだ公的規制として正式に策定されてはいない。しかし、あるアナリストは米国EE Timesの取材の中で「中国当局は、新しい工場で使用する装置について、価格ベースで少なくとも50%を、国内製のものにするよう求めている」と述べた。
ここ数カ月の間に工場を建設/拡張するために国家承認を申請する企業は、半導体製造装置(SPE)全体の少なくとも半分が国内メーカーから調達したものだと証明する必要がある。Reutersが、認証プロセスについて詳しい関係筋から得た情報によると、この基準に満たない申請は全般的に却下されるという。さらに報道によれば、政府当局は、長期的には中国製の製造装置のみを使用する計画を立てているため、この50%という数字は最終的な目標ではなく、ベースラインと見なすべきだとの見解を示したという。
成熟ノードは厳格、先端は例外?
ただし重要な注意点として、新工場のWFE全体の少なくとも50%を国内調達するという義務付けは、正式な規則ではないため、国内製装置が入手できない場合は、申請を審査する規制当局がケースバイケースで調整するということがある。報道によると、この要請は、成熟プロセス技術をターゲットとする生産ラインに対して最も厳格に適用されるが、その一方で、最先端ノード向けの生産能力については免除されるという。というのも、国内製装置では、28nm以降のような最先端の製造ノードの要件をいまだ満たすことができないためだ。
TechInsightsのバイスチェアマン兼シニアフェローであるG. Dan Hutcheson氏はEE Timesの取材に対し「国内製装置を50%にするという要件への準拠は、その基準の定め方によって左右される。というのも、複数のバリエーションとして、人民元や台数、チャンバー数の他、同等クラスの装置などの基準が存在するためだ。私の知る限りでは、中国はこの基準について、非常に柔軟かつ流動的に判断している。工場のチャンバー数に関して50%の目標を達成するのは、非常に容易だろう。しかし、特定の種類の装置ごとに細分化するとなると、難しさは増す。また人民元ベースとなれば、中国製装置は、欧米の競合メーカーよりもコストや利幅がはるかに低く、販売価格も大幅に安価なため、さらに難しくなるだろう」と述べている。
中国の当局および半導体メーカーは、「国産装置50%要件」が存在し、当局がそれを厳格に実施しているということに関しては、まだ正式に認めていない。中国は、半導体の自給自足計画については一貫性のある対応を取っているため、国内の半導体製造装置分野を刺激するために特定の規則を課しながらも、最先端ロジックメーカーには何らかの例外を適用する可能性がある。中国のWFE業界は、世界クラスの蒸着/エッチング装置を製造することはできるが、ASMLのリソグラフィ装置の高度さには依然として太刀打ちできない。中国政府が国産装置の調達を要請するのは、国内の半導体製造装置メーカーを刺激することの他にも理由があるのかもしれない。
規制が高める保守リスク、露呈した装置運用の限界
SMICは2026年2月初めに、「当社が、特定の輸出規制が課される以前に先を見越して海外サプライヤーから入手していた装置は、『サポート設備』を調達できないために、一部使用できなかった。そのため、これらは本会計年度の期間中、遊休装置のままになる可能性がある」と述べていた。
SMICの共同CEOであるZhao Haijun氏は、2026年2月10日に行った2025年第4四半期の業績発表において「外部要因の影響により、一部の主要装置を先行して調達したが、サポート設備はまだ購入できない可能性がある。このタイミングのずれにより、これらの調達済み装置が2026年に生産ラインを構成できない可能性があるという、膠着状態に陥っている」と述べていた。
SMICは、米国政府と同盟国によって課された輸出規制について直接非難してはいない。ただ、同社が欧米の制裁措置による影響を受けたのは、もちろん今回が初めてではない。例えば、同社は2025年に、既存装置の保守や新システムの検証などが原因となって生じた、生産の混乱や歩留まりロスなどを経験している。
SMICは、2つの困難に直面した。1つ目は、定期的な年間保守の期間中に生じた事故により、ファブオペレーションが混乱し、プロセスの精度が低下したために、歩留まりロスが発生したこと。そして2つ目は、新たに設置した装置の認定作業の最中に、性能上の問題によって歩留まりの変動が生じることが発覚したという点だ。同社はいずれの問題にも即座に対応できなかったため、売上高に影響が及んだ。
年間保守は通常、ルーティン業務だが、米国の輸出規制によって米国のWFEベンダーが中国国内の最先端装置向けに保守サービスを提供できなくなった。その結果、SMICのエンジニアはベンダーの全面的なサポートなしで作業に対応せざるを得ず、事故発生のリスクが大幅に増大している。新たに提供されたシステムも、特にメーカーから直接入手した装置ではない場合に、同様のリスクに直面している。
通常、装置はASMLのようなメーカーで完全に組み立てられ、テストされた後に分解され、顧客の現場で再設置される。SMICの社内チームは一定の保守や設置手順はこなせるものの、適切なベンダーサポートが欠けることで事故のリスクが高まる。
海外サプライヤーから装置を入手し、保守することに伴うリスクが増大していることを踏まえると、ファウンドリーのグローバルリスクを下げる1つの方法は、中国ベンダーの装置、少なくとも中国内に製造拠点を持つベンダーの装置を使うよう促すことである。
止まらぬWFE支出、単一最大の「買い手」であり続ける中国
中国は2020年にWFE支出で主導的な地位に浮上した。米国政府が2021年、中国向けの先端チップ製造装置に輸出許可を義務付ける新たな輸出規則を発表した後、中国の半導体ベンダーはSPEの調達を一斉に加速させ、多くの装置が疑わしい経路で彼らの手に渡った。
Hutcheson氏は「もちろん、(制限対象装置の出荷が)今日どのように行われているかを正確に知る者は、関与している人々を除けばいない。なぜならそれは犯罪行為だからだ。とはいえ、冷戦時代から続く典型的な再輸出や迂回輸送の手口である可能性が高い。初期には、何が該当し何が該当しないのかについて混乱が大きかった。例えば、装置が外国で製造され外国から輸出されたなら、仮に企業の本拠地が米国であってもOKだという考え方があった」と述べた。
一般的に大規模な装置の購入が続いた後には「消化局面」が訪れ、企業は購入を最小化する。しかしEE Timesが確認したUBSのレポートによると、この状況が6年目に入った現在も、中国半導体メーカーは、半導体の自給自足計画に押される形で新たな装置への投資を続けているという。ただ、国内製システムの比率も高まりつつあるという。
UBSは、中国の半導体産業が2025年、新規のWFEに約427億5000万米ドルを投じたとみている。対象には、主要ロジックメーカーのSMICとHua Hon Semiconductor、主要メモリメーカーのCXMTとYMTC、そして主にレガシーノードに注力する小規模チップメーカーが含まれ、サプライヤーは中国系と多国籍系の双方にまたがる。この数字は、従来の「300億米ドル台半ば」という想定を大きく上回る。
UBSはさらに、中国のWFE支出が2026年には470億5000万米ドルに増加した後、2027年に500億米ドル、2028年に503億5000万米ドルへと拡大を続けると予測している。今後数年における台湾、韓国、米国のWFE支出がどの程度になるかにもよるが、中国は輸出規制が強化される中でも、今後数年にわたり半導体生産装置の単一最大の「買い手」であり続ける可能性が高い。
UBSは、増設される能力が先端ロジック(同社は28nm/22nm以下と定義)、メモリ、そして300mmのレガシー生産にまたがるとみている。これは、成熟ノードのインフラ増強が続くことに加え、28nm未満ノードでのキャッチアップの取り組みも続くことを意味する。ただし、中国のチップメーカーが14nmロジックやそれより先端のプロセス技術に必要な装置をどのように確保するのかは、不透明なままだ。
UBSの顧客向けレポートは、2026年以降、中国のWFE支出が力強く成長すると予想する。理由は下記3点だ。
・中国メモリ企業におけるメモリの強い需要と数年にわたる能力拡張サイクル
・国内ファウンドリー/垂直統合型メーカー(IDM)の高い稼働率
・先端ロジック/メモリ生産の先端領域でキャッチアップを進める中国の動き
レポートでは「さらに長期的には、生産における自給自足追求が続くことで上振れも見込む」と述べている。
国内装置メーカーの台頭とシェア変化
レポートで強調されている主要因の1つは、海外製装置から国産装置への置き換えが加速していることだ。WFE支出の増加分が、中国の装置メーカーへと流れ込み、米国、日本、オランダのサプライヤーではなく国内勢に向かう割合が高まっている。海外ベンダーは中国での売上高が減少する一方、地場プレイヤーは大幅に速いペースで拡大している。支出の絶対額は安定して見えても、市場シェアの構成は国内ベンダーに有利な方向へ変化している。
USBは中国のWFEベンダーとしてACM Research、Advanced Micro-Fabrication Equipment(AMEC)、Naura Technology Group(以下、Naura)を追跡調査している。ACM Researchは洗浄、電解めっき、ウエハー研磨、プラズマ強化化学気相成長(CVD)の装置を製造し、AMECとNauraはエッチングおよびCVDシステムを専門とする。
UBSは、ACM Researchの2025年売上高を9億8600万米ドルと推定し、2026年に11億8500万米ドル、2027年に17億300万米ドルへ伸びると見込んでいる。AMECは2025年に17億8500万米ドル、2026年に26億2000万米ドル、2027年に36億5300万米ドルの売上高に達すると予測。Nauraは、2025年の売上高が57億600万米ドル、2026年が76億6400万米ドル、2027年が102億7600万米ドルと予測している。
今後数年にわたる中国製WFEの総売上高を予測するのは依然として難しい。しかし、ACM Research、AMEC、Nauraが製造する装置への支出比率は、中国のWFE総支出に対して2025年の約20%から、2026年に24%、2027年に31%へ高まると予測されている。なおUBSの予測モデルが、「国産装置50%要件」を既にこれらの予測に織り込んでいるかどうかは不明である。
露光以外の装置で進む置き換え、部材国産化も加速
Reutersが2025年末に報じたところによると、中国は国内半導体メーカーに対し、新工場を建設時に、前工程製造装置(WFE)全体の少なくとも50%を国内メーカーから調達することを実質的に義務付けているという。
非公式とされる「国産装置50%要件」は、地場のSPEメーカーを確かに後押しし得るだろう。しかし議論の中心は、先端ノード製造に向けたWFE自給自足において、中国が現実的にどれほど速く、どこまで前進できるのか、という一点に集約される。
ACM Research、AMEC、Nauraの急速な売上高成長は、装置需要が高いことだけでなく、これらの企業が世界水準の洗浄、成膜、エッチング、めっき装置を製造していることにも起因する。
Jon Peddie Researchの社長であるJon Peddie氏はEE Timesに対し「(これらの装置は)露光とは別のベクトルだ。求められているのは清浄度であり、プロセスがどれほどの汚染原子を許容できるかという話だ」と語った。
Hutcheson氏は「成膜、エッチング、洗浄、アニールといった装置分野では、中国サプライヤーは既に十分に競争力のあるシステムを持っている」と述べた。
この結果、露光以外の装置では置き換えが既に進んでいる。ただし重要な留意点がある。中国で製造される装置の相当部分は、依然として西側サプライヤーから調達する部品に依存している点だ。これらの部品の多くは輸出規制の対象になっているか、近い将来に同様の規制に直面すると見込まれている。従って中国企業は、こうした部品を遅かれ早かれ代替しなければならない。
輸出入規制は、別の変化も加速させた。部品レベルの国産化だ。ここ数年で中国の装置メーカーは、ポンプ、マスフローコントローラー、その他のサブシステムについて、非米国製の代替品を適格化してきた。完全に海外由来を排除するのは複雑であるものの、米国部品への依存は多くのケースで1桁台前半にまで低下したと、複数のアナリストが米国EE Timesに語った。
露光装置は成熟ノード止まりか
一方で、中国最大の露光装置メーカーであるShanghai Micro Electronics Equipment(SMEE)が製造できるステッパーは90nm、110nmなど、より成熟したノード向けのレベルにとどまっている。2023年末には、28nm対応の液浸ArF 深紫外線(DUV)露光装置「SSA/800-10W」の開発進展に関する主張も出たが、同社は装置性能を開示していない。また、デモモードで28nmのパターンを解像することと、量産で毎時200枚のウエハーを安定的に処理することは本質的に別物だ。さらにSMEEは、この装置の量産が始まったとは一度も言及していない。
このほか、SMICがShanghai Yuliangsheng Technologyの28nm対応装置をテストしていたとの報道もあったが、このスキャナーが量産にどれほど近いのかは不明だった。この装置は、2008年のASML「Twinscan NXT:1950i」に似た能力を備えていると思われる。こうした状況から、露光装置と先端検査装置は中国の半導体産業にとって引き続きボトルネックとなっている。
一部の中国工場が、ASMLの「Twinscan NXT:1980i」のステージをアップグレードし、重ね合わせ精度、スループット、実効解像度を改善しているという点は驚くことではない。部品は中古市場から調達している。現時点では、彼らが既に運用しているものより良い何かを得る方法は、これが唯一の方法なのかもしれない。
Peddie氏は「手持ちの技術や部品を使うしかない」と述べた。
こうした取り組みの追加的な利点として、工場(あるいは国内サプライヤー)のエンジニアが、これらの部品をリバースエンジニアリングし、既存装置向けのスペアパーツを製造しようと試みることができる点が挙げられる。これによってASMLや他の西側サプライヤーへの依存を減らし、場合によっては解消できる。
Hutcheson氏は「中国の加工技術を考えると、既存装置の部品を複製してスペアを再生産するのは比較的容易だ。必要なのは、部品を複製するための既存装置だけだ。難しいのは、特殊コーティング、設計された材料システム、そしてソフトウェアの習熟だ」と述べた。
先端露光装置は数十年単位の壁、近道はなし
SMICは7nmクラスのプロセス技術によって、ASMLの液浸DUV装置でマルチパターニングを強行することで先端ノードが実現できると示した。しかしスループットと経済性が制約要因のままだ。加えて、国内の露光装置の現状を踏まえると、中国の先端ノードが近い将来に国産装置へ依存する可能性は低い。
Peddie氏は「最先端の露光装置の話をするなら、ASMLが新しい世代の機種を生み出すスピードに目を向けてほしい。彼らは"秘伝のソース”を握っている。今日の露光装置の複雑さは『黒魔術と常温核融合の中間くらい』にあるといってもいい。中国がかなり速く追い上げられることを示してきたのは確かだが、航空母艦、第7世代戦闘機、月面打ち上げ、AIを例に見れば、どれほど資源を注ぎ込んでも、すぐには実現できないことが分かる」と語った。
28nmから16nmや7nmへ進むことは、どの装置メーカーにとっても単純な段階移行ではない。移行に伴って精度とプロセス制御に関する新しい要求が導入され、複雑さとコストが根本的に増す。ASMLの28nmクラスの液浸DUV装置(Twinscan XT:1930iやXT:1950iなど)は2010年頃には既に成熟していた。しかし、2020年頃まで「Twinscan NXT:2000i」のようなDUV装置で5nmクラスの能力を達成するには、はるかに高度な技術が必要だった。そこには自己整合4重パターニング、高度な光近接効果補正、新しいマスク、さらには新しいレジストまで含まれていた。
これらの能力はいずれも開発し得るが、近道はなく、段階的に積み上げるプロセスになる。さらにNXT:2000iのようなシステムは、より先進的な「NXT:2050i」や「NXT:2100i」と同様、これらの装置向けに精密に調整された部品と原材料の緊密に統合されたエコシステムに依存している。
「実際、先端の液浸DUV露光装置で中国の半導体産業が西側に追い付くまでには何十年もかかり得る。低開口数(NA)極端紫外線(EUV)装置ではさらに時間がかかるだろう」と、Hutcheson氏は述べた。
Hutcheson氏はまた、「私が1978~79年にこの業界に入ったころ、中国の露光装置産業は西側に対してわずか1世代遅れているだけで、海外製装置を強く求めていた。約50年後の今、彼らは複数世代遅れている。質問に同等比較で直接答えるなら、KrF露光装置が追い付くのにあと3~5年、ArFではさらに数年、ArF液浸は10~15年かかるだろう。低NA EUVは20~30年、あるいは追い付けないかもしれない。日本でさえEUVを成し遂げられなかった。日本には世界有数のレンズメーカーがあるにもかかわらずだ」と語った。
これほど大きな差は、中国が追い付けるのか、そして追い付いたとして量とコストの面で競争力を維持できるのか、という疑問を当然に生む。
Hutcheson氏は「中国には垂直統合されたサプライチェーンがある。市場を予測して外部サプライチェーンと連携し、四半期ごとの利益増加という要件を満たす必要がない。人々は忘れがちだが、中国は中国共産党がそう望むときには今なお共産主義経済だ。本当の問題は、許容できる歩留まりを出せる装置を実現できるかどうかだ。西側装置と定量的/定性的に同等であることが、中国が露光装置を提供できる能力の真の制約になってきた。だからこそ、多くの装置が買われたものの、工場で遊休化しているとおわれている」と述べた。
最終的に方向性は明確だ。装置における国内置き換えは加速していて、政府の後押しも堅固であり、戦略的意図は揺らいでいない。ただし運用は柔軟になったとも報じられている。未解決なのは方向ではなくタイミングだ。特に露光におけるタイミングであり、先端領域での価格設定も懸念材料として残っている。
Hutcheson氏は「米国の制約を踏まえると、中国は独自の半導体製造装置の垂直統合を構築する必要がある。しかし、それを自国の半導体産業を犠牲にしてまで進める余裕はない」と述べた。
