回転ずし、焼肉チェーンでも静かに客離れが進む…値上げが相次ぐ外食店に行ける層・行けない層の“残酷な格差”

回転ずし、焼肉チェーンでも静かに客離れが進む…値上げが相次ぐ外食店に行ける層・行けない層の“残酷な格差”

週末の回転ずし、焼肉。子供たちとの外食は、自分の昼飯を削ってでも守りたい「最後の砦」——そんな家庭は少なくないだろう。だが、その砦にも影響が出始めた。

 上場外食企業の既存店データを見ると、売上高はまだ堅調に見える。しかし、客数は前年割れが目立つ。値上げで単価が上がっているから売上高は維持できているが、客は静かに離れている。しかも、その傾向は所得階層によって分かれ始めている。

 折しも、食品の消費税減税が実現する可能性が高くなってきた。外食業界では不安の声が上がっている。小売店などで売られる弁当や総菜などの中食だけが消費税ゼロになると、外食店から客が流れるのでは、という危機感があるからだろう。外食産業の業界団体である日本フードサービス協会は、外食についても同様になるよう政府に要望すると報道されていた。

 ただ、この協会はチェーン店主体の団体であるから、こうした要望になるのだと思うが、一般に飲食店の7〜8割が個人事業者なのであり、そのうちの多くが、消費税免税事業者や簡易課税事業者である。こうした益税メリットの恩恵も前提になっていた事業者にとっては、消費税ゼロは粗利益の一部が奪われることを意味しており、メリットばかりではない。

■外食の客足には影響が出始めている

 こうした複雑な事情もある外食業界は、すでに消費環境の変化の影響を受けつつあった。庶民の財布がかなり苦しくなってきたことで、外食の客足には影響が出始めているからである。

 実質賃金(名目賃金から物価上昇分を除いた賃金)は11カ月連続でマイナスとなり、実態的には3年連続で目減りが続いている状況にあり、消費者の財布はかなり苦しくなっている。

 統計ではマイナス幅は縮小しつつあり、2026年度はプラスに転じるという見方もあるようだが、これはあくまでも平均値の話であって、賃上げが進む大企業勤務者が牽引するからである。多くの中小企業勤務者や年金生活者では、物価上昇に賃上げが追い付いてはいないため、当面、実質賃金は改善というよりは二極化が進む、と捉えるべきであろう。

所得の少ない層においてはエンゲル係数が上昇する傾向は続いている。節約志向はこれまでにも増して高まっており、食品支出の中でも選択的支出である外食を抑えて、家計を守ろうとする兆候は統計でも確認できる。

 次の図表は、家計調査(総務省統計局)の2025年9月〜11月の所得階層別の支出データから、食品支出と外食支出を抜き出して、前年と比較した増減率である。

 食品全体ではおおむね物価上昇率(青い点線、約7%)と同じくらい増えていて所得階層による違いはあまりないが、外食に関しては所得の少ない層ほど節約していて、高い層では逆に増やしているという傾向が見て取れると思う。

 つまりこれを見る限り、庶民向けの外食チェーンほど客足が鈍化している、ということが想像されると思う。

■外食チェーンは客数が減り始めている

 実際どうなのか、外食チェーンの既存店動向をみてみると、そんな兆候は数字にも出始めている。次の表は上場している外食企業の既存店月次売上高の増減率を直近6か月(2025年7月〜12月)抽出したものだ。前年比マイナスの月に黄色い網掛けをしてある。

 ここを見る限りでは黄色いコマの数はそう多くもないだろう。これは原材料価格高騰、人件費高騰を踏まえて、相応に価格転嫁しているため、単価が上昇しており、売上は基本的には増収基調となるからだ。ただ、価格が上がれば離反客が出るため、値上げすれば客数は落ちる。

 一方の客数版の表を見ると、表全体が黄色だらけなのに驚くのではないか。

 そんな中でも好調に客数を増やしている企業に朱色で網掛けしてある。モスフードサービス、幸楽苑、丸千代山岡家、大戸屋、ジョイフル、サイゼリヤ、エターナルホスピタリティ(鳥貴族)は、こんなご時勢でも平均で+5%以上客数を増やしている。

 これらの銘柄は、基本、価格改定を極力抑えていて、相対的にコスパが高いと評価されているようだ。こうした好調企業との対比でコスパ不足とされる企業が客数を減らしている、ということなのだが、個別企業の巧拙とは別に、業態として客数が減っているという兆候もあるようだ。

■「丼ものチェーン」の顧客離れが進む事情

 業態的にみていくと黄色が集まっているのは、まずは丼ものチェーン(牛丼、天丼、かつ丼)である。すき家に関しては、個別事情があって、2025年3月に異物混入事件が発覚したことで客数は大幅に落ち込んで、以降、年後半でも前年割れが続いていた。

 その他の丼ものチェーンについては、何度か実施された値上げの影響が出ているようだ。具の値上がりもそうだが、丼ものにとって「令和のコメ騒動」は大いに影響があった。安さへの期待も大きい業態であり、価格上昇に対して節約モードに入った顧客層が少しずつ離脱している、という懸念がありそうだ。

 ちなみに、松屋フーズに関しては、とんかつ松のやの併設型店舗を松屋に導入していたこともあり、客数増を維持していたのだが、節約志向の離脱層の増加が松のや効果を薄めているかもしれない。

 次に目につくのは、これまで好調に推移していたラーメン業態である。ラーメンは単価千円の壁を越えたと言われていたが、ここにきて節約モードの層の一部離脱とみられる動きもみえる。

 そうした動きの中、郊外型で比較的財布にやさしい価格帯の幸楽苑、ギフトHD、丸千代山岡家は逆に客数を増やしている。価格帯として平均的に千円を超えるメニューが主力のチェーン、どちらかと言えば値段高めの設定の都市型のチェーンが9月ごろからマイナスに転じているように見える。

 今後、さらに価格改定が進んでいくと、単価が千円からかなり離れた場合、客数減の影響は広がっていくのかもしれない。千円を受け入れられなくなる層が増えているという解釈もできるだろうか。

 その感覚でいうと、和風ファミレス、うどん和食店のような比較的高単価になってしまった感のあるチェーン(和食さと、サガミチェーン、杵屋など)も直近で客数を落としている。うどん一杯千円以上といわれると、ちょっと抵抗があるという感覚は個人的にも同感である。

■回転ずし、焼肉チェーンにも打撃

 居酒屋など飲み屋業態は、依然として厳しい環境にあるようだ。ほとんどの外食需要がコロナ前を上回って回復している中、飲み屋需要はコロナ前比8割ほどに縮小してしまって戻らない。値上がりもあるので、客数でいうと7割弱まで落ち込んでいるのだが、すでに店舗数も7割弱まで減少してしまっているので、すぐに元に戻る可能性もない。

 これこそ、コロナを境にした行動変容であり、昔のようになることはなく、この水準をベースとするしかないということだ。そうした環境の下、さらに消費の二極化が進んでいるので、庶民向けの居酒屋業態にとっては厳しい環境が続く、と考えるしかあるまい。

 そして、今回の二極化の影響が端的に表れていると思われるのが、回転ずし、焼肉チェーンの客数減少かもしれない。回転ずしでは、最大手スシローは好調に推移しているのだが、その他の企業は黄色が多くなっており、特に価格改定が浸透しなかったと言われるカッパ寿司の客数は1割以上減少となった。

 焼肉各社も黄色のコマが増えており、あみやき亭、安楽亭などは客数減少が続いているのだが、年前半まで好調だった人気チェーン焼肉きんぐでもマイナスの月が増えている。ファミリー層に比較的人気の業態であった回転ずしと焼肉の全体的な減速は、消費の二極化、ファミリー層という大衆層の一部離脱を懸念させる。

 この業態はコロナ期でも比較的ダメージが少なく、コロナ後も2024年あたりまでは、順調に客足を伸ばしてきていたのだが、2025年から順次ブレーキがかかってきたようなイメージがある。ファミリー層が家族でリーズナブルに外食にいく場所に、消費二極化による影響が及び始めているのだろう。

 親の昼飯は削られても、週末の子供たちとの回転ずし、焼肉はなるべく頑張って残してやりたい、というのが人情である。そこをも削らねばならない人が少しずつ増えている、ということなら、これは外食業界にとって気になる現象といえるだろう。

■庶民は支出を実態的には減らさざるをえない現実

 これを書いているとき、2025年の家計調査が発表され、昨年のエンゲル係数は28.6%となり、1981年以来44年ぶりの高水準となった、というニュースが入ってきた。その中で、高水準となったのは外食支出の増加もエンゲル係数を押し上げた、という文言が目についた。多分、これだけをみると、外食は増えていて好調! という趣旨で理解される向きが多いのだろう。

 しかし、同じ現象をみても、本稿を読んだ後では印象が違うと思う。値段が上がっているから全体として金額は増えており、それも所得の多い層が牽引しているのであって、庶民は支出を実態的には減らさざるをえなくなってきている、といった現実は一部の人にしか理解されていない。

 そして、当面、この状況が改善する目途は見えてはいない。減税や給付といった弥縫策ではなく、根本的にこの現実を打開する手立ては、中小零細企業における賃上げの実現しかないからである。

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