バーチャルボーイ、2月にSwitch/Switch 2で復活 任天堂らしさが詰まった失敗ハードを再考
2月17日より「バーチャルボーイ Nintendo Classics」の配信が始まるのに先がけ、任天堂はその紹介映像を公開しました。
バーチャルボーイ(以下、VB)は1995年に発売された、立体映像によるゲーム体験を売りにしたゲーム機です。しかし、全世界での販売台数は約77万台に留まり、「大失敗ハード」として語られることも少なくありません。
なぜVBは誕生し、なぜ失敗に終わったのでしょうか。その背景には、任天堂が自社の大原則を「守った部分」と「守らなかった部分」が、結果を大きく左右していたことが見えてきます。
任天堂『バーチャルボーイ』は黒歴史?時代を先取りしたVRの夢と革新性を振り返る
出典:スマホライフPLUS 2025/10/4(土)
「バーチャルボーイ Nintendo Classics」では当時未発売だった『ZERO RACERS』『ドラゴンホッパー
出典:インサイド 2026/1/27(火)
もうひとつの大きな問題はやっぱり「遊んでる姿」ですよね。自分で、つくりましょうよ、とは言ったものの
出典:任天堂 2010/10/12(火)
エキスパートの補足・見解
まず「早すぎたVR」という表現は必ずしも適切ではないでしょう。MetaのVRヘッドセットは累計出荷台数が約3500万台と推定されますが、これはSwitchの約1/4に過ぎません。いまなお、VRの時代が到来したとは言い難い状況です。
先進的な印象を持たれがちなVBですが、その出発点は「枯れた技術」=コストの安さです。生みの親・横井軍平氏の中で、他社から持ち込まれた航空機用の赤黒LEDと、当時のVRブームが結びつき、映像の美しさ以外の部分で新たな体験を目指したとされます。
しかし、赤色LEDは眼精疲労や頭痛を招いてしまいました。皮肉にも「枯れた技術」が没入感を阻害してしまったのです。
また、ゴーグルを覗き込んで遊ぶ姿は周囲の関心を引くものではありません。没入体験は「画面を他人に見せない」ことでもあり、遊びの共有やハードの普及に繋がりにくくあります。
VB発売後、横井氏が深く関わったゲームボーイポケットと『ポケットモンスター』は未曾有の大ヒットを記録しています。そうした偉業の狭間で生まれたVBは、結果としては失敗に終わったものの、任天堂らしい遊び心と挑戦が詰まった「愛すべきおもちゃ」だったのかもしれません。
任天堂の最新「バーチャルボーイ」を先行体験、控え目に言って最高だった--2月17日発売
日本では2月17日に発売予定のスイッチ2用アクセサリー「バーチャルボーイ for Nintendo Switch 2/Nintendo Switch」を先行体験。「VR」と呼ぶにはあまりに異質だが、予想外に楽しい体験が待っていた──。
【画像】これが令和に復活したバーチャルボーイだ(全6枚)
テック系のレビュー担当として、ゲーマーとして、そしてVRにどっぷりと浸かってきた人間として、これまで多くの任天堂ハードに触れてきた。だが、なぜか「バーチャルボーイ」だけは手にしたことがなかった。ずっと心のどこかに引っかかりがあり、未体験であることを惜しく思っていた存在だ。
そのバーチャルボーイの“最新バージョン”を、ついに遊ぶ日が来た。任天堂のプレビューイベント会場で、テーブルの上に置かれた三脚。その先に据え付けられた大きな赤いプラスチック製のバイザーに、顔を突っ込む。率直な感想を言えば、任天堂のこの奇妙なレトロ路線は、意外な成功を収めている。
筆者は「ゲーム&ウオッチ」をリアルタイムで遊んでいた世代で、ショッピングモールに初代バーチャルボーイが並んでいた光景も記憶にある。赤と黒だけで描かれる3D映像のあのゲーム機は、頭に装着するわけでもなく、テレビにつなぐわけでもない。机の上に置いて遊ぶ卓上型で、感覚的には「光速船」に近い存在だった。
そのため、バーチャルボーイを「VR」と呼ぶのはやや無理がある。正確には、レトロゲームを3Dで楽しむための「没入型ビューワー」と考えたほうがしっくりくる。
任天堂は今回、バーチャルボーイを「Switch 2または初代Switchを組み込んで使うプラスチック製アクセサリー」として復活させた。対応するのは3D表示を前提に作られた一部のレトロタイトルのみで、遊ぶには「Nintendo Switch Online」を利用する。年末までに14本の配信を予定しており、ローンチ時点ではその半分ほどが遊べるという。
なお、利用には「Nintendo Switch Online + 追加パック」への加入が必須だ。料金は年額4900円。奇妙なレトロゲーム史を体験するためと考えると、決して安い出費ではない。
Switchを固定するこのビューワーの価格は9980円。正直なところ、かなり突飛なシロモノだ。まるでSF映画『トロン』に出てくる機器のようにも見える。想像以上に大きく、持ち運びには向かない。
使い方も、一般的なVRヘッドセットとは真逆だ。頭に装着するのではなく、付属の三脚でテーブルに設置し、こちらが前かがみになって覗き込むスタイルをとる。
ところが数分も使っていると、その居心地の良さに驚かされる。大きな接眼部は余裕があり、太めのメガネでも問題なく収まる。周囲を覆う遮光パーツのおかげで、外光の映り込みもしっかり抑えられているのだ。
感覚としては、かつて存在したアンティークのステレオスコープを覗いているようだ。3D写真や簡易的な映像をじっと見入ってしまう、あの没入感に近い。
画面として使われるのはSwitch本体のディスプレイだ。対応するのは通常のSwitch、Switch(有機ELモデル)、そしてSwitch 2。残念ながらSwitch Liteは非対応となっている。画面は左右に分割され、ヘッドセット内で立体表示として機能する。
発想自体は、かつて「Nintendo Labo: VR Kit」でSwitchをゴーグル化したときに近い。ただし、体験の完成度は明らかにこちらのほうが高い。今回はSwitch 2のディスプレイで試したが、解像度が向上していても、もともと低解像度前提のゲームなので3D表現が損なわれる印象はない。
イメージとしては「赤と黒だけの3Dゲームボーイ」。実際に覗いてみると、まさにそんな感覚だ。
本体を据え置きで使うことも、快適さにつながっている。プレイヤー自身が動かないため、遅延による酔いが起きにくいのだ。ゲーム側も激しい動きは少なく、ゴーグルに身を乗り出した姿勢で30分ほど遊んでも、思ったほど疲れなかった。
視認性を高めるための設定も用意されている。アプリ上でIPD(瞳孔間距離)を調整でき、将来的にはカラースキームを別の色に変更することも可能になるという。今回は赤黒表示のみだったが、これが不思議と心地いい。夜向きで、静かで、まるでゲーム専用の“洞窟”に入り込んだような安心感があった。
レトロゲームをまとめて味わう楽しさ
操作にはSwitch Proコントローラーを使用したが、Joy-Conでも問題なくプレイできる。いくつかのタイトルを続けて遊んでみたが、総じて出来は良く、どれも素直に楽しめた。
「テレロボクサー」はロボット同士が拳を交えるボクシングゲームで、感覚的には3D版の「パンチアウト!!」に近い。「ワリオランド アワゾンの秘宝」は知名度こそ高くないものの、ワリオらしい遊び心に、奥行きを活かした3D表現が組み合わさった隠れた良作だ。
「ギャラクティックピンボール」は、NES(ファミコン)やゲームボーイ時代のピンボールの手触りをベースに、3Dならではの傾き表現を加えた内容になっている。一方で「マリオズテニス」は、コース表示が固定されている点がやや残念だが、全体としては素朴でかわいらしい印象だ。
「レッドアラーム」はワイヤーフレーム描写のシューティングで、『スターフォックス』を思わせる作り。現在のレトロ系インディーゲームブームとも、不思議と相性がいい。
「インスマウスの館」は日本向けに移植されたタイトルで、筆者にとっては今回が初体験だった。ラヴクラフト的な世界観のモンスターが登場する、シンプルな3DダンジョンRPGだ。
また「3Dテトリス」も収録されており、ブロックをあらゆる方向に回転させながら、奥行きのある立体的なフィールドに落とし込んでいく。おなじみのテトリスに、明確な立体感が加えられている。
任天堂は、バーチャルボーイ向けタイトルを2026年中に段階的に14本提供するとしており、その中には当時リリースされなかった未発売作品が2本含まれる。今後さらに追加されるかは不明だが、そもそもオリジナルのバーチャルボーイ向けソフトはそこまで多くない。そう考えると、展開の幅には限りがあるとも言える。
これらのゲームは、より手頃なバーチャルボーイ用アクセサリーでも遊べる。価格は25ドルで、段ボール製のゴーグル型だ。今回は試遊できなかったが、装着感は上位モデルほど快適ではないだろう。その代わり、Switchをそのまま顔の前に構え、左右のコントローラーを持ってプレイできる手軽さがある。
実際にバーチャルボーイを体験してみて、最も意外だったのは、その楽しさだ。想像していた以上に完成度が高く、しかも今の時代の空気感にも合っている。
筆者自身、別の時間軸からやって来たかのようなレトロ系インディーゲームに惹かれてきた。「UFO 50」や、独特な存在感を放つ携帯ゲーム機「Panic Playdate」がその例だ。
今回のバーチャルボーイは、任天堂が1995年の倉庫から奇妙で魅力的なアイテムを掘り出してきたように感じられる。もう少し、この世界に浸っていたくなった。
