夫婦でも寝室は別々で悩みが解決?「睡眠離婚」の驚くべき効果 専門医おすすめの夫婦のタイプと注意点

夫婦でも寝室は別々で悩みが解決?「睡眠離婚」の驚くべき効果 専門医おすすめの夫婦のタイプと注意点

夫婦やカップルが夜間だけ別々の寝室で眠る「睡眠離婚」。不眠やストレスを解消し、関係を良好に保つための前向きな解決策として注目されている。その効果や留意点は――。

「眠りの問題は人それぞれ。多くの夫婦やカップルが人知れず、『睡眠』に関する悩みを抱えています」

 こう話すのは阪野クリニック(岐阜市)院長の阪野勝久さん。2万人以上の睡眠の悩みと向き合ってきた睡眠専門医だ。

 阪野さんが外来で接してきた、「パートナーの睡眠」に関する患者の悩みは多岐にわたる。

 パートナーの「いびき・無呼吸」や「寝返り・歯ぎしり・寝言」に関する切実な悩みを訴える人もいれば、「エアコン・照明・音・スマホ使用」などパートナーとの睡眠環境の不一致に悩む人もいる。

「いびきや激しい寝返りで夜中に何度も目が覚める『中途覚醒』が起こると、深い眠りが妨げられてしまいます。いびきは音の問題だけでなく、いびきをかいている本人が睡眠時無呼吸症候群の可能性もあり、カップル双方の健康問題の課題と捉えたほうがよい場合もあります」(阪野さん)

 就寝・起床時刻のズレや生活リズムのギャップも深刻だ。

「一方が夜型、もう一方が朝型だったり、交代勤務や夜勤で睡眠時間がバラバラだったり。育児や介護による影響に起因するケースもあります」(同)

 実際には、さまざまな要因が複合的に重なることも多いという。

 いずれにしろ、不眠や睡眠不足はQOL(生活の質)の低下に直結し、大きなストレスになる。原因がパートナーにある場合、怖いのは対応を誤れば、関係の破綻につながりかねないことだ。阪野さんは「睡眠」をあなどってはならない、と訴える。

「『夫婦関係が悪いから眠れない』のではなく、『眠れないことが夫婦関係を悪化させている』という現実と向き合い、早めに医学的な快眠アドバイスを受けて手当てをしないと、夫婦関係そのものの亀裂を生む悪循環につながってしまいます」

 こうしたカップル固有の睡眠の悩みを打ち明けられた際、阪野さんが勧める医学的ケアの一つが「睡眠離婚」だ。これは、夫婦が夜間だけ別々の寝室で眠る生活スタイルで、実際の「離婚」とは異なる。不眠・ストレスを解消し、夫婦関係を良好に保つための前向きな解決策として注目されている。

 米国の非営利団体が2023年に実施した米国成人を対象にした調査によると、過去1年で睡眠離婚を続けているカップルのうち、52.9%はこの取り決めが睡眠の質を向上させたと回答。また、別々に寝るようになってから「平均で毎晩37分多く眠ることができた」と報告している。

睡眠離婚を続けた人の約半数が睡眠の質を向上させ、睡眠時間も増えたという結果について、阪野さんは「臨床的にも納得できる数字」だと話す。

「医学的には中途覚醒が減ることや、深いノンレム睡眠が確保されやすいこと、翌日の眠気が改善されることが要因に挙げられます。ただし、全員が改善するわけではなく、環境要因型の睡眠障害に効果的である点に留意が必要です」

 パートナーのいびきや寝返りに悩まされなくなり、翌日の集中力やパフォーマンスが向上し、日中のストレスが軽減される。こうした睡眠の質向上は、睡眠不足によるイライラが減り、「今日もうまく眠れるかな」という不安が少なくなることで、カップルの関係性の改善にもつながるという。

「患者さんからよく聞くのは、『朝起きた時の気分が全然違う』『夫婦げんかが減った』という声です」(同)

 ベッドを共有した場合と独り寝では、睡眠の質にどんな違いが生じているのか。研究結果と個人の実感でずれが生じることもある、と阪野さんは言う。

「ベッドを共にした場合、客観的指標(脳波検査)では深いノンレム睡眠が減るケースが多い一方、本人の主観的評価では、安心感・満足感が増し、『よく眠れた』と感じやすい傾向もあります。つまり、不安傾向・孤独感が強い人は同床が有利で、音・動きに敏感な人は別室が有利である可能性があります。カップルにとっての最適解を探すのが、オーダーメイドの睡眠医療です」

 では、どんなカップルが睡眠離婚に適しているのか。

 阪野さんが「医学的に向いている」と見ているのは、▽睡眠の質が落ちやすい40~60代▽「仲は悪くないが、とにかく眠れない」と自覚している夫婦▽いびき・無呼吸・むずむず脚症候群など睡眠障害が明確なケース――など。年齢や職業よりも、「睡眠を健康問題として捉えられているか」が重要な判断ポイントだという。

 阪野さんが実際に睡眠離婚を勧めるのは、「睡眠不足により高血圧・抑うつ・仕事の支障が出ている」「寝室トラブルが日中の活動や信頼関係に影響している」といったケースのほか、CPAP(睡眠時無呼吸症候群の治療に使う装置)のマスク装着ができないなど、パートナーの存在が睡眠治療を妨げる要因になっている、と判断される場合だ。 

逆に、カップルの関係性やメンタルヘルスの状況を診て、睡眠離婚を勧めないケースもあるという。

「すでに夫婦関係が破綻寸前で問題の本質が睡眠ではない場合や、カップルの片方が『相手から拒絶された』と心理的ダメージを受けている場合もお勧めしません。睡眠離婚は睡眠環境を見直すための生活上の工夫の一つであり、感情の調整を行う必要があるからです。両者が納得して受け入れることが大前提です」(同)

 睡眠離婚によって本当の離婚を回避できた、と思われるカップルには共通の変化が生じるという。

「別室睡眠でパートナーの睡眠時間と機嫌が改善する。日中の衝突が減り、会話量が回復する。『夜は一人、昼は夫婦』という役割分担の再定義がうまくできている。こうした変化が生じたカップルはその後も関係を良好に保っています」(同)

 睡眠離婚の際には留意点もある。心配なのは「夫婦の親密さが減ってしまう」ことだ。

「パートナーから『距離を置かれている』と感じてしまう人もいると思います。特に新婚の場合は誤解を招きやすく、寂しさを感じる人もいます。ただ、これらは心理的な影響も少なくなく、事前の話し合いと工夫で解決できることが多いのも事実です」(同)

 重要なのは、医師の説明を共有し、「健康のため」であることを事前にしっかり確認し合うこと。そのためにも、パートナーと一緒に来院することを阪野さんは勧める。両者の視点から状況を整理できるため、より良い解決策が見つかりやすいメリットもあるからだ。

「一番大切なのは、事前の十分な話し合いです。睡眠離婚は『寝場所の問題』ではなく、『夫婦の信頼関係を保つための選択』だということをお互いに理解するのが重要です。『離れて寝ること=心の距離』にならないための工夫が大切です」

 そのうえで阪野さんは、関係性維持の具体策として「定期的に時間をつくって気持ちを伝え合う」「日常のスキンシップを意識的に大切にする」「就寝前の時間を一緒に過ごす」「週末は一緒に寝るなど、メリハリをつける」といったポイントを挙げる。

 阪野さんはこう強調する。

「要はコミュニケーションを今まで以上に意識することが大切です。睡眠離婚という言葉だけ聞くと、後ろめたい気持ちになるかもしれませんが、実際には夫婦関係を良好に保つための建設的な判断なんです。無理に同じベッドで眠り続けてお互いにストレスを溜めるよりも、それぞれが快適に休める環境を整えるほうが、結果的に二人の関係がより円満になることが多いんですよ」

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏