タッチやQRコードに続くJCB発「第3の決済手段」、地方で静かに拡大中。導入2年目の現在地
「こんな面白いキャッシュレス決済があるのか。便利だ」
JCBの担当者によると広島県の人気観光地「宮島」で買い物をした訪日観光客(インバウンド客)がこんな感想を述べたという。彼らが利用したのは、JCBが導入を進める「NFCタグ決済」と呼ばれるものだ。
NFCタグ決済は、「NFCタグ」が埋め込まれたPOPに、スマートフォンをかざして専用サイトにアクセスし、各種スマホ決済で支払う形式。
NFCタグ自体はICチップが埋め込まれたシールで、通信の仕組みは「マイナンバーカード」やJCBを含む国際ブランドが推進する「タッチ決済」が採用する規格と同じだ。
「かざして支払う」という体験と、多様なキャッシュレス決済が使える利便性を兼ね備えた仕組みになっている。
JCBでは、2020年から実証をスタートし、導入拡大を続けてきた。2025年11月時点で、タグの設置件数は約1万カ所。年間訪日客数が過去最多を更新するペースで増加する中、キャッシュレス決済方法の選択肢を提示しようとしている。
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専用端末いらず、シール状タグだけで対応
NFCタグ決済の特徴は、高価な専用端末を使わずカード決済の環境を構築できるという点だ。
店舗側はシール状のタグを店舗に設置するだけ。利用者がスマホをかざすと専用サイトに遷移し、Webブラウザー上で決済が完了する。専用サイトでは「Apple Pay」や「Google Pay」といったOS標準のものや、「d払い」「au PAY」「メルペイ」などのスマホ決済も利用できる(利用可能な決済ブランドは加盟店による)。
「スマホをかざす」という動作はスマホや物理カードのタッチ決済と近いが、支払い側は「PayPay」などのコード決済のように「読み取り」のためにアプリを起動する必要はない。
すでにキャッシュレス業界では、単にカード決済などを導入したければ、iPhoneやAndroidスマホ単体や1万円未満の小型端末で決済できる環境にはなっている。
しかし、店舗によっては機材を置くためのスペースや電源、インターネット環境の確保が困難な場合もある。また、故障時などは一定期間のダウンタイムや追加コストが発生してしまう。
NFCタグ決済であれば、ネット環境はユーザー側のスマホに依存する形になるが、電源も広い設置場所も不要。NFCタグ自体は一般向けのものでも20枚1200円などで購入できる代物のため、POP自体のコストも低く、破けたり汚れたりしても簡単に交換できる。
大規模施設でNFCタグ決済初導入(2024年3月)となった京セラドームの場合、ビールの売り子が導入前は重い決済端末とともに販売する必要があったが、NFCタグ決済導入後はタグを首からぶら下げるだけでよくなり、売り子の負担軽減につながったという。
NFCタグ決済は、現時点で導入や維持のコストをJCB側が負担し、決済手数料のみ加盟店が支払う仕組みになっている。JCBとしては、上記のような理由で「まだキャッシュレス決済を導入していない層」にNFCタグ決済を普及させていきたい考えだ。
コード決済の王者PayPayにも課題あり
日本ではコロナ禍を機にキャッシュレス決済推進に拍車がかかった。スマホ決済では「PayPay」が大きく存在感を示している。
PayPayによると、2025年12月時点でユーザー数は7200万人以上。ソフトバンクグループ(SBG)の2024年度通期決算で発表された決算資料によると、GMV(連結決済取扱高)は15兆4000億円(前年度比23%増)。さまざまな還元キャンペーンや、親会社ソフトバンクの営業戦略、コード決済ならではの「設置ハードルの低さ」が功を奏した形だ。
ただ、そんなPayPayも「訪日外国人需要」という面で見ると、足りない部分がある。
