自動車が“知能化”する未来 日本メーカーは勝ち残れるか…「SDV」開発最前線

自動車が“知能化”する未来 日本メーカーは勝ち残れるか…「SDV」開発最前線

決して遠くない将来、AIを搭載しソフトウエアによって制御される自動車(=SDV)の時代が来るとされる。世界で開発が進む“知能化した車”。その波に乗り遅れることは出来ない日本企業の現在地を取材した。

■20XX年“SDV”のある世界とは・・・

こんな未来を想像してほしい。

20XX年――。きょうは大事な商談がある日。だが最後の詰めの作業が残っているため、通勤中に片付けなければならない。電気自動車(=EV)の愛車に乗り込んだ私は行き先を告げる。

「会社まで最短ルートでお願い」「わかりました。最短ルートで行きます」

愛車のソフトウエアに搭載されたAIエージェントがいつものように気持ちよく回答してくれる。車は完全自動運転のため、私はハンドルを握らず、早速パソコンを開き資料作成に取り掛かる。

「桜も満開だな」

車外をふと眺めると、AIが再び話しかけてくる。

「通学中の児童たちが30メートル先の横断歩道を渡りそうです」

通学の時間帯、確かに少し先に児童たちの集団が見える。車は横断歩道の前でゆっくりと停車した。車のフロント部分の電光掲示板には「手をあげて渡りましょう」とカメの絵文字入りの表示が。児童が手を振ってくれて私も振り返す。

車は再びゆっくりと始動。車内で取引先とのリモート打ち合わせをこなし、資料作りも終了。その間、巧みに渋滞を避けた愛車は始業の15分前に会社に到着した。会社にいる間は愛車にたっぷり“充電”してあげよう。ランチタイムの時間でフル充電になるから――。

これはあくまで、AIを搭載しソフトウエアによって制御される自動車“SDV(=Software Defined Vehicle)”の未来予想図だが、国内ではこうした“知能化した車”の実現を将来的に目指そうと開発に乗り出している企業がある。

■世界のトヨタは“SDV”で「交通事故ゼロ」目指す

2025年10月。記者はトヨタ自動車独自のソフトウエア「アリーン」を搭載したSDVに乗車し、高速道路での合流を体験した。

♪AIエージェント『合流するね』♪ドライバー「いいよ」

合流ポイントにさしかかる手前でAIが音声で注意喚起し、車はスムーズに合流した。まるでベテランドライバーが運転している車に乗っているような感覚だった。

さらに、市街地などで突然車道に飛び出してくるボールを事前に予測し注意喚起する技術なども開発が進められている。

トヨタが“知能化”で目指すのは「交通事故ゼロ社会の実現」だ。その柱として、車が常に通信で状況を把握できる「インフラ」の整備と、目の前に起きたことだけでなく未来の状況を察知する「行動予測」を挙げる。

デジタル開発センター長の皿田明弘氏は「もし2秒、3秒、5秒の予測が出来ると世界は変わる」と話す。予測することで、歩行者や自転車などに死角になった自動車の存在を知らせて行動を変えさせ事故を回避できるかもしれない。皿田氏は、自動車のレベルアップとともに、インフラや、ヒトを含む「三位一体の取り組み」が重要とし、SDVで「交通事故ゼロ社会に本気で取り組む」と意気込む。

■IT企業も“SDV”に本格参入

2025年10月末から開催されたジャパン・モビリティショーで開発中のSDVを公開したのは、ITサービス企業「SCSK」だ。

近未来的なフォルムと鮮やかなブルーのボディーカラー。車内はスタイリッシュで広々とした空間。注目は運転席と助手席にまたがる横長のパネルだ。SDVとしての特性を活かし、停車時にはパネルを画面にしてゲームを楽しめるという。

IT企業がなぜSDVを開発するのか?モビリティ事業グループのSDM事業開発センター長・三谷明弘氏は「車内空間作り、つまりソフトウエア中心の付加価値というところがポイント」と話す。従来の「走る」「曲がる」「停まる」という自動車の機能を超え、車内でのエンターテインメントを充実させたり、スマートフォンのように利用者が望むアプリを車にインストールさせ進化させたり、ソフトウエアの部分にこそ車の未来があるというわけだ。開発する車のターゲットは「Z世代」。IT企業であるSCSKはそこに商機を見いだす。

だが、1社だけでSDVが作れるわけではない。三谷氏は、自社の強みとするソフトウエア開発を、自動車メーカーに活用してほしいと期待する。「ソフトウエアとか日進月歩する技術の世界においてはプレーヤーが次々と変わっていくので、より最先端の企業、人、国と組むエコシステム作りが必要だ」「自動車メーカーには『ここにソフトウエアの仲間がいますよ』ということを伝えたい。ソフトウエア、AIの力で盛り上げていきたい」

■“SDV”は“デジタル・ネーティブ”に刺さる?

日本ではまだ開発段階のSDV。一方で中国では「売れている新車の4割近くがSDVで、すごい勢いでSDV化が進んでいる」と話すのは、自動車アナリストの中西孝樹氏だ。中国でSDV化が進む理由をこう分析する。

「日本の自動車購買層は50歳代から70歳代が中心なのに対して、中国では20歳代、30歳代が中心。中国のデジタル・ネーティブにはスマホ的な車であるSDVが受け入れられやすいのではないか」

中西氏は若い世代へのリーチを含め、日本の自動車メーカーには、これまでとは異なる意識、取り組みが求められると話す。

「やはり、ソフトウエアの柔らかさは必要だ。ハードウエアファーストからソフトウエアファーストにならないといけない」

中国勢に大きく差をつけられている中で勝ち筋はあるのか?カギは「トヨタの動向」だという。

「トヨタは2025年12月に発売した『RAV4』にソフトウエアの「アリーン」を搭載し、世界180カ国で100万台売る目標を掲げている。ここから顧客のデータを取得していってSDV開発に反映していくことで中国勢に追いつき、追い抜くことが出来るかもしれない」

まだ部分的ではあるが「ソフトウエア開発競争」になりつつある自動車業界。日本勢はSDVで覇権を取ることが出来るのか。日本企業の底力が試されている。

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