台湾沖の海底ケーブル損傷をめぐる台湾・中国の認知戦――重要インフラを守る安全保障の要点
台湾南部・台南沖で2025年2月、海底通信ケーブルがトーゴ船籍の貨物船「宏泰58」により損傷しました。
台湾当局は船を拿捕し、中国人船長を起訴し、6月に懲役3年判決が出ました。これに対し中国・山東省威海市の公安当局は12月24日、「宏泰58は冷凍品の密輸船で、背後に台湾住民の男2人がいた」と発表し、2人に懸賞金をかけて情報提供を求めました。
中国側は台湾の「グレーゾーン宣伝」を批判し、台湾側は証拠提示を求め、中国の政治的焦点そらしだと反論しています。
ココがポイント
台湾沖の海底ケーブル切断事件、中国公安当局「貨物船は密輸船」…中国関与の疑い打ち消す狙いか
出典:読売新聞オンライン 2025/12/24(水)
海底ケーブルを2月に損壊した船、台湾の密輸業者が支配=中国当局
出典:ロイター 2025/12/24(水)
中国人関与の海底ケーブル切断 中国「密輸集団の台湾人が操った」と主張 台湾側は批判
出典:中央社フォーカス台湾 2025/12/24(水)
エキスパートの補足・見解
本件の核心は、ケーブル損傷という物理事案が、軍事衝突の前段で用いられやすい「責任の曖昧さ」と結びつき、両岸の認知戦に直結している点です。
中国側は密輸事件として枠組みを作り、台湾側の「関与疑惑」を打ち消そうとしていますが、台湾側は懸賞金や越境的な名指しを政治圧力と見ています。
海底ケーブルは金融決済、通信、クラウド運用を支える国家基盤で、切断は短期の障害にとどまらず、修復の遅延や再発の不安が社会の信頼を揺らします。
抑止は軍事だけで完結せず、原因究明の透明性、船舶行動の監視、保護水域の運用、迂回経路と修復体制の整備という「再発しにくい環境」づくりで強まります。
いかりによる損傷は事故でも起き得るため、故意か過失かの判断に時間がかかります。その間、SNSでは確証のない見方が広がり、世論が早い段階で一方の責任に傾きやすくなります。
事件直後は、確認できた事実(発生時刻、船の位置、復旧の見通し)を早く公表するほど、SNSで根拠のない憶測が広がりにくくなります。
日本も海底ケーブルへの依存が大きいため、修理に使う船や予備部品の確保、復旧手順の共有など、平時からの備えを台湾など関係先と進めておくことが重要です。
