PCだけじゃなかった… スマホも「世界的メモリ不足」で値上がりへ 26年はスペックダウンも頻発か

PCだけじゃなかった… スマホも「世界的メモリ不足」で値上がりへ 26年はスペックダウンも頻発か

生成AIの急拡大が、コンピューター部品の価格を押し上げている。その影響は来年、スマートフォンの価格上昇という形で消費者に及ぶ可能性がある。

 暗号資産マイニングの流行が、長年にわたってグラフィックスカードなどの価格を高騰させてきたのは記憶に新しい。より多くの計算資源を求める生成AIの台頭によって、同じ構図が再び繰り返されるのは自然な流れとも言える。

 ただし、業界の想定を超えていたのが「メモリ」だった。ここ数カ月、PC向けの一般消費者用RAMは需給が逼迫し、その余波はコンピューティング分野にとどまらず、スマートフォン市場にも広がっている。

 スマホに搭載されるのは、PC用のメモリモジュールとは異なる、小型化された専用RAMだ。しかし、AIワークロードを処理するデータセンターからの巨大な需要に対応するため、メモリ生産の重心がそちらへ移行している。結果として、生成AIブームはRAM全体の価格を押し上げる要因となっている。

 しかも、この状況は一時的な需給のズレでは終わらない可能性がある。市場調査会社IDCが12月中旬に発表したレポートでは、世界のシリコンウェハー生産能力そのものが、恒常的に組み替えられる恐れがあると指摘されている。

 スマホメーカーはこれまで、関税などによるコスト増を自社で吸収し、価格への転嫁を抑えてきた。しかしアナリストは、2026年はそうはいかないとみる。コスト上昇は、最終的に販売価格へ反映される公算が大きい。

 IDCのシニア・リサーチ・ディレクター、ナビラ・ポパル氏は次のように語る。

 「今回のメモリ危機は、市場に強い衝撃を与えるだろう。特に、利益率が極めて低い低価格帯で展開するスマホメーカーにとっては深刻だ。こうしたベンダーには、コスト増を消費者に転嫁する以外の選択肢はほとんどない」

 では、実際にスマホはいくら値上がりするのか。最も影響が大きいのは、低価格帯モデルだ。ポパル氏は、このカテゴリーで少なくとも5〜10%の価格上昇が起きると予測する。背景には、低価格スマホではメモリが部品コストの15〜20%を占め、高価格帯モデル(約10〜15%)より比率が高いという事情がある。これはIDCの最新レポートに基づく分析だ。

 この状況を受け、スマホメーカーは利益率の高い上位モデルに軸足を移し、より高価格帯の端末を増やしていくとポパル氏は見る。メモリ不足の影響は大きく、IDCの2026年における平均スマホ価格の予測も、当初の「わずかな下落」から一転し、「2%上昇」へと修正された。

 価格上昇により、来年の出荷台数は減少する可能性がある。一方で、IDCが12月上旬に発表した別のレポートでは、単価の上昇が市場全体の価値を押し上げ、2026年のスマートフォン市場規模は過去最高となる5,789億ドルに達すると見込まれている。

メモリ高騰で、スマホはRAM増量の流れにブレーキか

 端末価格の引き上げに加え、メモリ不足はスマートフォンの設計思想そのものを変える可能性がある。各社がこれまで進めてきたRAM増量路線は見直され、容量を据え置く、あるいは減らす判断が出てきても不思議ではない。

 IDCでクライアントデバイス部門のバイスプレジデントを務めるフランシスコ・ヘロニモ氏によると、2025年第3四半期に出荷されたスマートフォンのうち、8GB以上のRAMを搭載したモデルは全体の51%を超えた。価格が400ドル以上の機種に限れば、その比率は約93%に達する。

 しかし同氏は、「2026年には、価格に敏感な市場で価格を維持するため、エントリークラスやミドルレンジのスマートフォンが4GB RAM構成に戻る可能性がある」と指摘する。

 8GBという水準は、単なる数字以上の意味を持つ。Galaxy AIやGoogle Pixelシリーズの写真機能など、端末内で処理する生成AI機能を動かすうえで、事実上の最低ラインと見なされているからだ。ChatGPTのように、クラウド側で処理する生成AIサービスはスマホでも利用できるものの、データセンターとの通信が必要な分、応答までの待ち時間が生じやすい。地下や圏外など、通信環境がない場所では使えないという制約も避けられない。

 メモリ不足は、最上位モデルに大量のRAMを積んでAI性能を引き上げる計画にも影を落としている可能性が高い。ヘロニモ氏は、24GB以上のRAMを搭載する構成は当面見送られるとの見方を示す。フラッグシップ機の上限は16GBにとどまり、「Pro」モデルであっても、利益率を確保し値上げを避けるため、12GBへ引き下げる動きが出る可能性があるという。

 影響の大きさは、メモリ不足がどれだけ長引くか次第だ。ただ、価格上昇による家計への負担は、スマートフォンの買い替えを先延ばしにする要因になりやすい。特に端末を一括購入する地域では、その傾向が強まるとみられる。一方、2〜3年の分割払いが一般的な市場では、月々の支払額への影響は比較的限定的にとどまりそうだ。

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