「横浜の丸ビル」日産本社ビル売却 効果は一時しのぎ?高額賃料が圧迫懸念も
日産自動車が2009年から創業地の横浜市内に構える「グローバル本社」を売却したのは、手元資金を調達し、経営再建を急ぐためだ。ただ、相場で年50億円超とみられる賃料の支払いが、かえって財務を圧迫する懸念もある。
「横浜の丸ビル(東京都千代田区)と呼べるランドマーク」。12日にグローバル本社を取得したミンスグループ日本支社の山田智之代表(51)は、神奈川新聞社のインタビューにそう例えた。
横浜・みなとみらい21(MM21)地区のオフィスビルは09年から1・5倍の40棟余りに増え、平均賃料は2割ほど上昇している。
グローバル本社は地下2階、地上22階建て。大企業が入居する近隣ビルの賃料相場は、日産の1フロア(約3千平方メートル)に換算すると2千万円超だ。日産が支払う賃料は年50億円超とみられる。
日産は26年度末までにフリーキャッシュフロー(純現金収支)の黒字化が必達だ。本社の売却によって設備の修繕費や減価償却費の負担が軽減するが、株主の一人は「高額な賃料がむしろキャッシュフローを圧迫するのではないか」といぶかる。
7月に社債発行で約8600億円を調達したが、信用格付けは投機的水準まで低下し、利払い負担も増している。
経済ジャーナリストの井上久男氏は「手元資金を調達する一時しのぎにはなるが、財務改善の大きな効果は期待できない」と指摘。東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは「本社売却は『聖域なき改革』の象徴。再建の決意を社内外に打ち出す狙いだろう」とみる。
日産の26年3月期の連結営業損益は世界的な販売不振に米国の関税政策が重なり、2750億円の赤字(前期は697億円の黒字)に転落する見通しだ。本社の売却益739億円を特別利益として計上する。
