サーバ/PCでシェア拡大のAMD 今後は「フィジカルAIで業界をリード」
AMDの日本法人である日本AMDは2025年12月3日、技術イベント「AMD Advancing AI 2025 Japan」とプレス向け説明会を開催。データセンター/クライアント/組み込みなどの領域での技術アップデートや事業戦略を説明した。
データセンター向け売り上げは5年で8倍に
AMDの日本事業は、2025年で50周年を迎える。日本AMD 社長のジョン・ロボトム氏は「50年間、日本の顧客にソリューションを提供してきたことが信用/信頼につながっている」と語った。
事業領域はクラウド/データセンター、高性能コンピューティング(HPC)、エッジデバイスなどさまざまだが、近年はAI PCを含むPC向けとデータセンター向けが特に成長し、シェアを伸ばしている。ロボトム氏は「AMDのテクノロジーは既にいろいろなところに搭載されているが、もう少し目立って顧客に気付いてもらえるようにしなくてはいけない」と述べた。
AMDは、サーバ向けCPU「EPYC」、データセンター向けGPU「Instinct」をはじめとして、NIC(Network Interface Card)「Pensando」やクライアント向けAIプロセッサ「Ryzen AI」「Radeon AI」、エッジAI向けSoC(System on Chip)「Versal」などのコンピューティング製品群を提供している。2024年8月にZT Systemsを買収したことで、サーバ設計も強化した。
EPYCは世界のハイパースケーラー10社全て、主要ソーシャルメディア10社全てで採用されたほか、「Fortune 100」に含まれる企業の6割以上で導入されているという。Instinctも大手AI企業10社中7社に採用されている。データセンター分野のAMDの売上高は2020年の20億米ドルから2025年には160億ドル超まで成長する見込みだという。
EPYCの次世代品「Venice(開発コードネーム)」も開発中だ。従来比でスレッド密度は1.3倍、パフォーマンスと効率は1.7倍に向上する。
ロボトム氏はデータセンター向け事業について「ハイパフォーマンスももちろん大事だが、消費電力を抑えることがAMDのミッションだ。まだまだポテンシャルがあると思っている」と述べた。
27年発売のクライアント向け次世代CPUはAI性能10倍に
クライアント/ゲーミング分野について、日本AMD 副社長 兼 アジアパシフィック クライアントビジネス ディレクターの関路子氏は「この2年間とても好調だ。5~6年前はAMDといえばGPUが話題になっていたように思うがクライアント/ゲーミング分野も大きく拡大している」と述べた。
クライアント分野では、Ryzen AI搭載のPCが1年で約2.5倍に増え、250種類を超えた。「Fortune 100」企業の約半数が既にRyzen AI搭載PCを採用しているという。関氏は「プライバシーやセキュリティへの懸念もあり、ローカルでAIを動かすという価値が浸透してきている」と分析した。
ゲーミング分野では、Microsoftの「Xbox」やソニーの「PlayStation」といった家庭用ゲーム機の複数世代での連続採用に加え、携帯型ゲーム機でも採用が進んでいる。
関氏は今後のAI PC市場について「小型AIモデルの性能/効率が飛躍的に進化している。1年半ほど前にはクラウドでしか動かせなかったモデルが今やローカル環境でも利用できるようになった。こうした背景でAI PC市場は間違いなく成長していくだろう」と述べた。
AMDは2027年に次世代CPU「Medusa(開発コードネーム)」の発売を予定している。2023年に発売した「Phoenix(開発コードネーム)」と比べるとAI性能は10倍以上に向上する見込みだ。
フィジカルAIにも注力 「全ステップをワンストップで」
組み込み向けの事業は、2022年のXilinx統合によって成長を加速させている。AMD APAC エンベデッド・セールス ジャパン カントリーディレクターの杉山功氏は「Xilinx統合でFPGAの技術や業界トップクラスの豊富なIP(Intellectual Property)、組み込み市場の顧客基盤を獲得した。ここにAMDのCPUやGPUのIP、パッケージング技術を統合し、単独の会社では作れなかったエンドツーエンドのソリューションを実現した」と振り返り、「AMD史上、最強の組み込み向けラインアップだ」と強調する。
加えて、セミカスタムシリコン事業にも本格的に参入。顧客の次世代ソリューションの開発を共同で行い、成長ドライバーとしている。杉山氏は「各セグメントに特化したナレッジと幅広いIP、先進的なパッケージング技術やそれらを組み合わせる技術力が理由で選ばれているのではないか」とした。
今後は、フィジカルAI分野にも力を入れる。現在もスマートカメラやファクトリーオートメーション(FA)にAMD製品が採用されているというが、今後スマートデバイスが大きく普及する中でさらなる成長を見込む。杉山氏は「フィジカルAIでは認識/判断/行動という3つのステップで安全性やリアルタイム性能が求められる。AMDは全てのステップをワンストップで、場合によってはワンチップで最適化できるソリューションを有している」と述べた。
