ChatGPT改良へ資源集中、アルトマン氏「非常事態」宣言と米報道
オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は「コードレッド(非常事態)」を宣言し、ChatGPTの改良を優先するため社内のリソースを集中的に振り向けるよう指示した。これにより、他の取り組みの進捗が遅れる見通しだという。テクノロジーニュースサイトのジ・インフォメーションが社内メモを基に報じた。
報道によると、アルトマン氏は1日、ChatGPT改良に総力戦で取り組むよう求め、自律型AIエージェントや広告など他のプロジェクトの進行を遅らせる方針を示した。優先して改良すべき点やその理由について詳細は明かされていないが、アルトマン氏は最近、AI開発レースにおけるグーグルの猛追がオープンAIに一時的な経済的逆風をもたらす恐れがあると社内で警告していたという。
今回の報道は、AI開発競争がいかに激しさを増しているかを浮き彫りにする。背景には、多額のAI投資が収益の押し上げにつながることをウォール街に示すため、各社がしのぎを削っていることがある。アルファベット傘下のグーグルは先月、最新のAIモデル「Gemini 3」を発表。推論やコーディングに加え、従来のAIチャットボットが苦手としてきた特定タスクにも対応できる能力を示し、高い評価を得た。オープンAIも10月、AI搭載のウェブブラウザーを初公開し、グーグルに真正面から挑んでいる。
オープンAIはアルトマン氏のメモに関するコメントを控えた。ChatGPT責任者のニック・ターリー氏は1日夜、X(旧ツイッター)への投稿で「ChatGPTの性能を向上させるとともに成長を続け、世界中へのアクセスを拡大する一方で、その体験をより直感的かつ私的なものにすること」が喫緊の目標だと強調した。
また米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、アルトマン氏がChatGPTの改良を最優先する取り組みの一環として、一時的なチーム間の異動を奨励していると報道。また担当責任者と毎日、電話会議を実施する計画を立てていると伝えた。
ジ・インフォメーションによれば、アルトマン氏は社内ツールチャットのスラックで、ChatGPTの体験を各ユーザーごとに一段と最適化できるよう、各種機能を改善したいと述べた。さらにAIモデルの動作改善や画像生成能力の強化を優先したいとも記したという。
ジ・インフォメーションはこれとは別に、オープンAIが「ガーリック」のコード名で新たなAIモデルを開発しており、コード生成や推論に関わるタスクで良好な性能を示していると伝えている。
グーグルは11月、Geminiアプリの利用者が6億5000万人に達したと明らかにした。一方、オープンAIは最近、ChatGPTの週間利用者数が8億人に達したと述べている。調査会社センサータワーによると、10月時点でGeminiアプリの月間ダウンロード数は7300万件で、ChatGPTの9300万件に届いていない。
オープンAIの競合であるアンソロピックも先月、コードやオフィス業務の自動化に優れた新型のAIモデルを発表。法人顧客の獲得を巡るオープンAIおよびグーグルとの競争を一段と激しくしている。
