「はい、完全に裸にならなければなりません」 日本の温泉を実際に訪れた外国人が感じたこととは

「はい、完全に裸にならなければなりません」 日本の温泉を実際に訪れた外国人が感じたこととは

それは北日本の寒い2月のある日、筆者が服を脱ぐと、温泉の更衣室の窓の外には雪が高く積もっていた。

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緊張しながら、隣の部屋から漂う湯気の中を歩き、浴室へと向かう。ここは一人で湯船につかる場所ではないため、裸の人たちに囲まれた。誰も気にしていないようだった。

英国で育った身としては、見知らぬ人と一緒に裸で入浴するなんて、経験したことも、想像したこともなかった。だが日本では、それは日常生活の一部だ。

裸になることに慣れる

筆者は新幹線で、東京から北海道まで旅をした。窓の外には雪山や小さな農村が次々と流れていった。

一人旅で予算を抑えていた筆者は、60代の温厚なミチコさんが経営するカフェの上にある部屋を予約した。ある晩、ミチコさんの手料理を食べながらおしゃべりしていると、「温泉に行きませんか」と尋ねられた。

私は不安と興奮が入り混じった衝動に襲われた。温泉については、聞いたことがあり、アニメで目にして、旅行ガイドでも読んでいた。ただ、初めての温泉で緊張したただ一つの理由は、裸になることだった。

温泉は、地熱で温められたミネラルなどが豊富な湯が張られた浴場で、神話に深く根差している。古くから日本文化の一部であり、8世紀にさかのぼる日本最古の文献の一つである「古事記」にも温泉に関する記述がある。

かつては清めの儀式や社会の上層階級の神聖な場所であった温泉は、江戸時代に、ローマの浴場のように、半宗教的な医療の目的地から社交の中心地へと変化した。

今日、日本には数え切れないほどの温泉が点在している。地方都市から大規模な専用のリゾート施設まで、環境省によるとその数は3000カ所を超える。温泉事業者は厳しい法律を順守しなければならない。温泉の温度は通常、34度から42度の間で、25度を下回ってはならない。

♨マークで示されている温泉施設のほとんどには、内湯と露天風呂があり、男女別に分かれている。入浴者はミネラル豊富な温泉に、一人で入ったり、友人や家族と集まってくつろいだりできる。温泉は筋肉の緊張を和らげ、血行を促進し、肌の健康をサポートすることで知られる。

最初の一歩をどう踏み出せばいいのか分からないと、海外からの旅行者は、筆者と同じように少し不安を感じてしまうかもしれない。

思い切って挑戦

「最初は少し恥ずかしかった。友達の前で服を脱ぐだけでなく、全く知らない人たちの前で脱ぐので」と、銭湯の専門家ステファニー・コロインさんは述べた。フランス出身のコロインさんは、裸のことを考えているのは自分だけだとすぐに気がついた。

コロインさんは「他の人たちはみな体を洗ったり、おしゃべりしたり、お風呂に入ったりしていたので、リラックスできた」と振り返った。

それから数年後、大学の友人と銭湯と呼ばれる公衆浴場を訪れた時に、コロインさんは恋に落ちた。

「今まで知らなかった世界が広がっていた」とコロインさん。「銭湯は、体への不安を本当に忘れられる唯一の場所かもしれない」

旅行者は温泉と銭湯を混同することがよくあるが、無理もない。どちらも裸になって温かいお湯につかる点は共通している。温泉とは異なり、銭湯は天然の熱源ではない。主に都市部にあり、かつては浴室のない地元の人々に入浴の場を提供していた。

コロインさんが初めて訪れた当時、銭湯に関する外国語の情報はほとんどなかった。しかし、協会での活動を通して、海外からの観光客や居住者に銭湯を開放する取り組みをしてきた。

温泉でも銭湯でも、初めて訪れる人へのコロインさんからのアドバイスは、その体験を楽しむことだ。

「最初は戸惑うのも当然。私もそうだった! 誰もあなたを見ていたり、批判したりしない。誰もが自分の時間に集中している」(コロインさん)

初心者は、地元の温泉で目立ったり注目を集めたりすると思うかもしれないが、コロインさんによれば、現実はその逆だ。

「どんな体にも欠点はあるものだが、ここは私が知る限り、誰もそれを気にしない唯一の場所だ」(コロインさん)

コロインさんから初めての入浴で緊張している人への助言は、ただの入浴ではなく、文化体験として捉えること。数分もすれば、人前で裸になるという不快感はすぐに忘れ去られる。

「外見ばかりに気を取られる現代社会ではまれな、自由と受容の感覚を味わえるかもしれない」とコロインさんは言い添えた。

浴場のマナー

裸になることに自意識過剰になってしまうのは当然だが、温泉や銭湯のルールもまた、外国人旅行者を不安にさせることがある。

ミチコさんと初めて温泉に行ったとき、タオルと洗面用具を詰めたバッグを用意して準備を整え、雪の積もった道を車で走り抜け、函館の郊外にある地元の温泉へと向かった。温泉は、暗闇の中で光り輝き、屋根から湯気がもくもくと立ち上っていた。

入り口は地元の家族連れでにぎわい、畳の上に寝転がってテレビでコメディーを見ている男性や、自動販売機の飲み物を飲みながら友達を待っている男性がいた。すべてが日本語で書かれていた。ありがたいことに親切なホストに恵まれたが、初めて訪れる際は事前に少し調べておくと不安が和らぐだろう。

よく知られているルールは簡単だ。タトゥー禁止。

タトゥーを入れた温泉客は、袖や包帯でタトゥーを隠すしか選択肢がないことが多い。

温泉ではタトゥー禁止のルールが一般的かもしれないが、タトゥーのある入浴者の未来は変わりつつある。星野リゾートは多様な文化を尊重するという方針を掲げて方針変更を行い、タトゥーのある人の入浴を許容するようになった。同様の対応を取る温泉も出てきている。

コロインさんによれば、多くの銭湯ではタトゥーのある人でも問題なく入浴できるという。

タトゥー以外の銭湯や温泉を利用する際の一般的なエチケットはマナーに関するものだ。

他の入浴者に気を配ることや水しぶきを上げないこと、大声で話さないことなど、一般的なルールを理解することは重要だ。だが、足をひたす前に、一連の作業がある。

温泉文化の入門書

不安な場合や英語の標識がない場合は、流れを観察してそれに従おう。順を追ったガイドを共有してくれたコロインさんは「とても直感的に理解できる」と語った。

1.入り口で靴を脱いでロッカーに預ける

2.料金は番台で支払う(サウナは別料金)

3.脱衣所に入り、服をすべて脱いでしまう

4.小さなタオルを浴室に持参する

5.シャワー室に座りながら体をよく洗う

6.入浴する前にせっけんを洗い流す

7.タオルを浴槽には絶対に入れない

8.長い髪は束ねる

9.サウナを利用した場合、再び湯船に入る前にもう一度体を洗い流す

10.脱衣所に戻る前に体をふく。手ぶらで来ても大丈夫。ほとんどの銭湯ではシャンプーやせっけんなどのアメニティーを提供しているほか、タオルもレンタルできる

「一番大切なのは、遠慮せずに話しかけること」とコロインさんは促す。「簡単な日本語やジェスチャーでも人々は親切だ」

夜の入浴

まさにこれが筆者が発見したものだ。

ミチコさんが入り口で入浴料を支払うのを手伝ってくれた。500円くらいだった。靴をロッカーに入れて、スリッパに履き替える。それから「女性用」と書かれた赤いのれんをくぐって脱衣所に入った。

服を脱ぎ、小さなタオルを緊張しながら体に巻き付けた。浴室に入ると、女性たちが鏡の前にある低いプラスチック製の椅子に腰かけて、シャワーを浴び、髪を洗い、耳掃除をしていた。同じように髪と体を洗いながら、きちんと洗えているか隣の人たちに視線を向けた。もちろん、誰かに見られているかも気になった。

それから温泉に向かった。凍えるような夜空、雪が舞う中、女性や小さな子どもたちのグループに交じって温泉につかり、人生や悩み、希望について語り合った。

あの穏やかな雰囲気は忘れられない。日本を旅行するなら温泉は欠かせない。

本当に心配する必要はまったくなかった。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏