「子供がSNS中毒」、アメリカで事業者提訴1961件…「たばこ産業の手法取り入れている」
子供のSNS利用が深刻な依存を引き起こし、心身をむしばんでいるとして、米国でSNS事業者を相手取る訴訟が相次いでいる。全米の訴訟件数は9月時点で計約2000件に上っており、原告団は「依存性を高める設計により、子供がSNS中毒に陥り、摂食障害や自殺につながっている」などとして、損害賠償や改善策を求めている。
米国では2021年9月、インスタグラムを運営するフェイスブック(現メタ)の内部告発で、SNSが「少女のメンタルヘルスを悪化させる影響を社内で把握していた」ことが明らかになり、メタや、ユーチューブを運営するグーグル、ティックトックなど、SNS事業者を相手取った訴訟が相次ぐようになった。
22年10月、数百件に上る同種の訴訟が「マルチディストリクト訴訟(MDL)」に併合された。その後も訴訟件数は拡大を続け、原告団弁護士によると、今年9月に1961件に達した。
原告側は、SNSが閲覧時間を最大化するよう設計されており、通知機能や次々と表示される投稿が脳内の快感物質の放出につながると主張する。青少年の依存行動を助長し、様々な精神的・身体的被害をもたらしており、SNSは「欠陥製品だ」と訴えている。
米保健福祉省によると、米国では現在、13~17歳の95%がSNSを利用する。原告弁護団のロナルド・ミラー弁護士は、「SNS事業者は、タバコ産業やスロットマシン産業の手法を取り入れ、子供の未発達な脳が衝動を抑えにくいことを知りながら、中毒性を高める仕組みを意図的に組み込んだ」と指摘している。
一方、SNS事業者側は、SNSで表示される動画や画像は、あくまでユーザーが投稿したコンテンツで、米憲法修正第1条(言論の自由)やSNS事業者の法的責任を限定する通信品位法230条によって免責されると主張し、訴訟の棄却を申し立ててきた。
しかし、カリフォルニア州高等裁判所は23年10月、SNSは「物理的な製品ではない」ものの、設計に欠陥や過失があれば法的責任を問えるとの判断を下した。同年11月には、MDLを担当するカリフォルニア北部連邦地裁が、メタやティックトックなどの棄却申し立てを却下し、MDLの審理を継続する姿勢を示している。
◆マルチディストリクト訴訟(MDL)=公害や薬害など広域に被害が生じる問題で、全米各地で起こされた同種の個別訴訟を併合して審理する仕組み。連邦機関「司法政策管理委員会(JPML)」が指定する連邦裁判所で、多数の訴訟の中から一部を選んで先行的に審理する「試金石審理」が行われる。
