16日配信「iOS 26」の新機能をおさらい UIが変わって電話やメールが使いやすく/Apple Intelligenceも進化
「iPhone 17 Pro」と「iPhone 17 Pro Max」を手に取った人が最初に気付くのは“軽さ”かもしれない。アルミニウム製のユニボディー構造を採用する新型シャシーは、手にした瞬間にバランスの良さもあって軽さを感じる。
もちろん、スペックが向上した内蔵カメラの画質や望遠カメラの性能が目的という人もいるかもしれない。しかし、この製品の真価は、外観からは分からない部分にある。
ユニボディーに内蔵されたベイパーチャンバーを中心とした冷却システムは、単なる熱対策以上の意味を持つ。これは、Appleがスマートフォンの概念そのものを再定義しようとする意志の表れといえる。
商品企画という観点に立つと、スマートフォンは利益の確保が重要な要素となる。そうなると、コストと設計の複雑さを大幅に引き上げうる冷却システムの刷新(ベイパーチャンバーの採用)が不利なのは間違いない。ベイパーチャンバー自体は、Samsung Electronics(サムスン電子)の「Galaxy S25シリーズ」やASUSTeK Computer(ASUS)の「ROG Phone 9シリーズ」など最新のハイエンドスマホでは定番の装備ではある。恐らくiPhone 17 Proシリーズの出荷数はこれらのシリーズを上回るだろうが、複雑な設計は生産技術や管理面でも難しさがあり、量産コストも上振れさせうる。
利益の確保が重要な製品において、なぜAppleはコストや設計面で“不利”な冷却システムの刷新に踏み切ったのか。理由は明快で、新たに搭載する「A19 Proチップ」が秘める圧倒的な処理能力を十分に発揮させ、Appleが描く「デバイス内AI処理」の未来につなげるためだ。
スマホ用SoCとしては演算能力が非常に高い「A19 Proチップ」
iPhone 17 Proシリーズが採用するA19 Proチップのスペックを“数値”で見ると、その異常さが際立つ。
AppleがアナウンスしているA19 ProチップのCPUコア/GPUコアの数と性能向上ぶりを掛け合わせると、CPUのマルチコア性能はMac向けの「M2チップ」に匹敵し、シングルコア性能では明確に上回ると思われる。M2チップは現在でも十分に高速なSoCだと考えると、もはや「スマートフォン用SoC」の範ちゅうを超える性能に達していると言ってもよいだろう。
さらに今回、AppleはA19 ProチップのGPUコアに「Neural Accelerator(ニューラルアクセラレータ)」を組み込んだ。推論演算を高速化する回路だ。
Appleは従来からiPhone向けSoCに機械学習処理に特化した「Neural Engine」を搭載しており、最近はCPUコアにも機械学習処理を加速させる回路を追加している。ここにGPUコアも“参戦”させることで、CPU/GPU/Neural Engineが協調してAI処理を行う「3レイヤー構造」が構築された。これにより、「スマートフォン内でMacBook Proレベルのできるようになった」とAppleは説明している。
一般的に、スマホ向けの新型SoCは設計から生産(量産体制の確立)までに3年はかかる。つまり、Appleは明確に3年以上前から「デバイス内でのAI処理能力」を最優先に置いた設計を選択していたのだ。
このことは、クラウドサービスへの依存度を下げ、プライバシーを保護しながら、同時にレスポンス性を向上させるという、一見矛盾する要求を同時に満たそうとする試みでもある。
オンデバイス処理に重きを置くことで開かれる「新たな可能性」
Appleがデバイス内でのAI処理にこだわる理由は「プライバシー保護」だけではない。
確かに、Appleは「Private Compute Cloud」の開発を通して、クラウド(オンライン)でも高水準のプライバシー保護を伴うAI処理の実現を目指している。それでも、AppleはAI処理の“主軸”はあくまでもオンデバイス処理だと考えている節がある。
その価値は「iOS 26」搭載のiPhoneと「H2チップ」搭載のAirPodsシリーズで実現される「ライブ翻訳」機能に如実に現れている。この機能は、目の前にいる話者の言語をリアルタイムで音声翻訳するものだが、これはクラウド経由では絶対に実現できない体験だ。ネットワークのレイテンシー(遅延)や安定性、そして処理(応答)の待ち時間を考慮すると、クラウド処理で“ライブ”翻訳は相当に難しい。
この機能は「iPhone 15 Pro」以降で利用可能だが、世代を重ねるごとに明確な性能向上を見せている。これは、SoCのAI処理能力向上が、直接的なユーザー体験の改善につながることを示す好例といえる。
しかし、そもそもの話でいえば、リアルタイム翻訳のようなオンデバイスAI処理は「SoCの性能を100%発揮できる環境」があって初めて成り立つ。熱処理の問題で性能が低下するようでは、肝心な時に役に立たない。薄いボディーの中で高性能なSoCを持続的に動作させるためには、優れた冷却システムが不可欠だ。
iPhone 17 Proシリーズでは、ベイパーチャンバーという個別の技術導入に限らず、今までチタニウム(チタン)を使っていたボディーフレームを、最大20倍の熱拡散が期待できるアルミニウムに“回帰”した。このことも含めて、AI処理におけるシステム負荷が高まるだろう未来の課題に対するAppleの回答といえる。
冷却技術の革新が実現する、体験の質的変化
ベイパーチャンバーは、液体の“相変化”を利用して効率的に熱を拡散する技術だ。よく似た技術に「ヒートパイプ」があるが、ヒートパイプが点から点へと熱を移動させるのに対し、ベイパーチャンバーは点から面へと熱を拡散させるという違いがある。
一般的なスマホは放熱処理に金属やグラフェン(炭素シート)を用いた「ヒートスプレッダー」を使っているが、ベイパーチャンバーは熱伝導効率と速度が格段に高く、特に継続的な高負荷処理における放熱に威力を発揮する。
iPhone 17 Proシリーズではアルミニウム製ユニボディーとベイパーチャンバーを組み合わせることで、ボディー全体が巨大なヒートシンクとして機能し、高負荷で処理が回り続けても性能が落ちにくくなっている。
複雑なAI処理を伴う写真編集、4K動画のリアルタイムエフェクト処理、長時間の生成AI利用といった、従来であれば発熱により性能が低下していた用途で、継続的に最高性能を維持できるようになるだろう。また、充電しながら処理を行う際に、発熱による「充電不能」「性能低下」などに悩まされる機会も少なくなると思われる。
iPhone 17 Pro Maxの「最長39時間」という驚異的なバッテリー駆動時間も、この冷却システムの恩恵によるところが大きいと予想される。効率的な熱管理でSoCが最適な温度範囲で動作し続けることで、性能低下が発生せずより短時間で処理を完了することにより、電力効率が大幅に向上するからだ。
iPhone 11 Proの再来:戦略的転換点としてのiPhone 17 Proシリーズ
今回のプラットフォーム刷新は「iPhone 11 Proシリーズ」で起こった変革を想起させる。
2019年、AppleはiPhone 11 Proシリーズの発表に併せて「コンピュテーショナルフォトグラフィー」というコンセプトを打ち出し、AI処理能力を大幅に強化したSoC「A13 Bionicチップ」を投入した。これにより、従来のスマホカメラにおける光学的な制約を演算で補完する新しいカメラ体験が生まれ、その後数年に渡りiPhoneカメラの進化をけん引し続けた。
iPhone 17 ProシリーズにおけるAI処理能力の大幅強化と冷却システム刷新も、この時と同じ戦略的意図を感じさせる。3年以上前から計画されていたであろうこの技術投入は、単発の製品改良ではなく、今後数年間のAI機能進化を支える基盤整備として位置付けられるべきだろう。
半導体設計のサイクルを考慮すると、この判断は遅くとも2022年初頭には下されていたはずだ。当時はまだ生成AIブームが始まっておらず、「ChatGPT」も世に出ていなかったものの、背景技術という観点では生成AIが話題になってきていた。
Appleはその段階で、オンデバイスAIにiPhoneの未来を託す大胆な投資を決断していたことになる。
Appleが目指すのは「“あなただけ”を理解するAI」の実現
Appleが描く最終的な未来は、さらに壮大だ。
彼らは「パーソナルコンテキストAI」の開発に取り組んでいて、これが完成すればiPhoneのAIは文字通り「“あなただけ”を理解するAI」になる。
メール内容から今日の予定、過去の写真から人間関係、健康データから体調傾向、位置情報から行動パターン……といった具合に、全てを統合的に理解し、まるで長年の秘書のように先回りしたサポートを提供できるようになるだろう。
「明日の大阪出張の準備はいかがですか? 前回と同じホテルを予約しておきましたが、田中さんとの会議資料はこちらで準備できています。天気予報では雨なので、傘の準備もお忘れなく」といった具合に、GoogleやMicrosoftの特定サービスにとどまることなく、自分のデジタルライフ全体を把握したアドバイスも実現できるはずだ。
これは「言うはやすし行うは難し」の典型例で、技術的には極めて高度な処理が要求される。複数のアプリ、サービス、データソースを横断的に解析し、リアルタイムで意味のある提案を生成するには、現在のスマホをはるかに超える演算能力が必要だ。
この機能の提供、そして熟成には時間がかかるだろう。しかし、iPhone 17 Proシリーズの冷却システム刷新は、まさにこの未来を実現するための技術的土台であり、「AI時代におけるスマートフォンの再定義」という長期戦略の一環なのだ。
パーソナルコンテキストAIは、その性質上オンデバイスAIでしか実現できない。スマホが単なる通信機器から「パーソナルAI処理装置」へと進化する端緒ともなりうる。
Appleが取るこの戦略の成否は、今後数年間を見守らなければ判断できない。しかし、現時点でいえるのは、Appleが再び業界の方向性を決定づける、大胆な“賭け”に打って出たということだ。
iPhone 11 Proがカメラの概念を変えたように、iPhone 17 Proはスマートフォン全体の在り方を変える起点となる可能性を秘めている。その真価が明らかになるのは、おそらく早くても2~3年後だろう。しかし、iPhone 17 Proを手に取ったユーザーは、その未来の一端を体験できるはずだ。
見た目が大きく変わる! iOS 26/iPadOS 26の配信一斉開始 iOS 18.7も
アップルは、iOSのメジャーアップデートとなる「iOS 26」の配信を開始している。
iOS 26の新機能については以下の記事も参照いただきたいが、「Liquid Glass」の新しいデザイン、迷惑電話への対応、ライブ翻訳や画像から検索をするビジュアルインテリジェンスなどのApple Intelligenceの進化などが含まれている。
●iOS 26はやっぱり「電話」アプリがよさそう! パブリックベータから見る純正アプリの進化
●増える迷惑電話 アップル「iOS 26」が救世主に
●ドライブが快適に! iOS 26で生まれ変わる新CarPlayを体験、上位のCarPlay Ultraもスゴかった
iPadOS 26、従来バージョンであるiOS 18のバグ修正やセキュリティアップデートが含まれるiOS 18.7の配信も開始されている。
●MacがもっとiPhoneみたいになる! macOS Tahoe 26パブリックベータレポ
iOS 26はやっぱり「電話」アプリがよさそう! パブリックベータから見る純正アプリの進化
アップルが、2025年秋に正式リリースを予定するiPhone向け次期OS「iOS 26」のパブリックベータが公開されました。話題のLiquid Glass(リキッドガラス)デザイン、電話アプリによる通話機能の強化など盛りだくさんな進化の内容をレポートします。
無料で試せるiOS 26パブリックベータ
iOS 26のほか、秋にアップルがリリースを予定する新OSはApple Beta Software Programのページから、Appleアカウントと手持ちのデバイスを登録すれば誰でも無料で試せます。
もはや、さまざまなウェブサイトや動画配信サービスには、アップルの最新OSのデベロッパベータの画面や動画解説が掲載されていますが、本当はパブリックベータも含むベータ版の画面を公開することは禁じられています。なぜならベータ版OSはあくまで開発途中段階のソフトウェアなので、正式版では機能や画面の仕様が変わることがあったり、ユーザーインターフェースの見た目が違う可能性もあるから、というのがひとつの理由です。本稿では取材に基づく特別な許可を得たうえで、iOS 26パブリックベータの画面を掲載しています。
これは即戦力! 3つの新機能
iOS 26といえばLiquid Glassを採用した新しいデザインが話題を呼んでいますが、いったんそれは横に置いて、筆者が便利に感じた新機能を紹介します。
1つは電話アプリの便利機能である「保留アシスト」です。長い時間待たされがちなコールセンターなどに電話をかけた時に、iPhoneがユーザーの代わりに待機してくれ、保留が終わると着信音やバイブレーションで通知してくれます。待機中は電話アプリのタスクをバックグラウンドに回して、音楽を聴いたりYouTubeを見ながら過ごせます。
実際に使ってみるとまだベータ版には改善の余地が残されていると感じました。日本企業のコールセンターの中には待機している発信者に気をつかって、保留中に「ただいま電話が大変混み合っています」的な音声ガイダンスを何度も挟むサービスもあります。保留アシストは通話相手から「呼び出し音」または「発声」が聞こえた時に通知をユーザーに届ける仕様なので、その都度「順番が来たぞ!」と呼び出されてしまうからです。世界には日本と同じコールセンターのサービスモデルが沢山あると思うので、正式版OSがリリースされるまでに何らかの改善策が打たれることを希望します。
電話アプリに追加されるもうひとつの便利機能に「通話スクリーニング」があります。筆者は仕事に関連する連絡先として、名刺等に携帯電話の番号をお伝えしています。頻繁に連絡をもらう方は、筆者も連絡先に登録を済ませています。でも時には発信者がわからない番号からの着信に応答してみたら、お仕事の依頼だったということもあります。そして中にはセールスの電話だったり、すぐに仕事を中断してまで応答する必要はない連絡だったりもします。
「通話スクリーニング」があればiPhoneが「名前と要件を録音してください」と相手に音声メッセージで伝えます。相手が名前と要件を伝えた発信については着信音、またはバイブレーションによりiPhoneがユーザーに取り次いでくれます。会議中、または電車で移動中など、ユーザーがワケありのため電話に出られなかった場合には音声と文字に起こしたテキストが残るので、内容を確認して折り返すこともできます。
電話アプリの設定から通話スクリーニングのオンとオフが選べます。公開されたばかりのパブリックベータでは通話スクリーニングをオンにしても動きませんでした。秋の正式公開までに機能が公開されたら改めて試したいと思います。
2つの機能は特に生成AI的なものを使わなくても、「電話」であるiPhoneのベーシックな使い心地を高める余地がまだ残されていたことをあらためて気付かせてくれます。筆者のような個人事業主にとっては、iPhoneが秘書みたいに活躍してくれるありがたい機能です。
3つめの機能が「ライブ翻訳」です。電話/FaceTimeのアプリも音声による同時翻訳に対応しますが、残念ながらiOS 26の導入当初は日本語をサポートしません。日本語対応はメッセージアプリからになります。そしてこの機能はApple IntelligenceとiOSの「翻訳」アプリを使います。
ライブ翻訳はメッセージ単位で、必要な時にだけ使えます。筆者は数少ない海外在住の友人と英語でやり取りしたり、たまに出張の際にタクシーの配車サービスのドライバーとiMessageで連絡を取り合うことがあります。少し込み入った内容を伝えたい時にライブ翻訳が使えれば頼もしいでしょう。
美しいLiquid Glassデザイン
慣れるまでに時間がかかりそう
「iPhoneとLiquid Glassデザイン」の相性について、筆者のファーストインプレッションを少し語りたいと思います。
平面であるデジタルディスプレイの空間の中に再現した、立体感あふれる“ガラスのオブジェ”のようなアプリアイコン、ナビゲーションコントロール、時刻表示のフォントはふつうにキレイだと思います。ホーム画面のページをスワイプ操作で切り替える時に、壁紙の模様とフォルダが交差して煌めくエフェクトは、ウィスキーのグラスに浮かぶ氷を眺めているようで飽きが来ません。
Liquid Glassデザインのルックスの美しさについて筆者は文句なしの立場なのですが、iOS純正アプリのナビゲーションのデザインがまあまあ変わっていることに戸惑いました。Safariはブックマークやタブのコントローラーが一瞥してわかる場所にありません。
Apple Musicはキーワード検索時の画面の動線が変わりました。こちらは「画面の下側」にナビゲーションをまとめたiOS 26の新しいデザインの方が使いやすいと感じますが、慣れるまでに少し時間がかかりました。
カメラアプリはナビゲーションのデザインがよりシンプルになりました。iPhoneを使い慣れていれば良い印象が持てる「改善」方向のアップデートだと思うのですが、シニア世代のiPhoneユーザーである筆者の母は、すぐになじめないかもしれません。これは、改めて説明する機会を設ける必要がありそうです。
Liquid Glassデザインとの相性はmacOS Tahoe 26の方がベターな印象を受けました。詳細については改めて新macOSのパブリックベータのレポートでお伝えします。
スクショ対応のビジュアルインテリジェンスや歌詞翻訳が楽しい
ほかにもiOS 26にはたくさんのアップデートがあります。パブリックベータを試しながら、筆者が気に入った機能をいくつか紹介します。
ビジュアルインテリジェンスがiPhoneのスクリーンショットの画像検索に対応しました。Android端末の一部が対応する「かこって検索」によく似た機能ですが、iOS 26では「とりあえずスクショ」して、あとからChatGPTに聞いたりGoogle画像検索を使い分けることができます。iOS 26もスクショした後に画像の特定箇所を「かこって検索」することで、検索結果の精度が高まりました。正確さはAndroidの「かこって検索」と互角ぐらいでしょうか。
Apple Musicの歌詞表示機能を発展させた「翻訳を表示」と「発音を表示」の機能が楽しく、外国語の学習にも最適です。著作権の関係で、アプリの使用中画面を紹介できないのが残念ですが、たとえば少女時代の楽曲「Gee」を再生して両方の機能をオンにすると、韓国語歌詞の意味が英語、韓国語の発音が日本語のカタカナでそれぞれ表示されます。
「写真」アプリに新設される、2D写真を3D写真に自動変換する「空間シーン」にもハマりました。visionOSが先行する形で搭載した機能がiOSにも広がってきた格好です。何年も前に旅行にでかけて撮影した古い写真や、デジタル一眼カメラで撮った写真も“空間化”できるので、いつまでも遊んでしまします。