市場が4年で5倍「クエン酸飲料」 「疲労感軽減」「血圧下げる」酸っぱい効果 近ごろ都に流行るもの
9月に入っても続く猛暑、目もくらむような疲れや息切れ…。対策として売り上げを伸ばしているのがクエン酸含有食品だ。昔から、梅干しやレモンの輪切りなどの酸味に疲労回復効果を体感することはあったが、「クエン酸」が意識されることはあまりなく、むしろ重曹などと並ぶ汚れ落とし剤の印象の方が強いかも? しかし、最近は健康面での研究が進み「疲労感軽減」や「血圧を下げる」とうたう機能性表示食品が目立ってきた。
■昭和のカクテル素材が起源
コンビニの栄養ドリンク棚で目立つ「クエン酸」の文字。クエン酸を商品名にうたう飲料の市場規模は令和3年度の9億8167万円から、今年度は46億8559万円と4年で約5倍に急成長している(インテージSRI=小売店調査)。市場を牽引しているのがポッカサッポロ「キレートレモン」だ。クエン酸2700(参考価格=飲料191円、ゼリー227円)などのシリーズを展開し、同調査商品カテゴリー76%のシェアを誇る。24年前に発売、5年前に機能性表示食品も加わった。
「作業能力が低下しエネルギーが不足した疲労状態に対して、クエン酸は生体内でエネルギーを産生するクエン酸回路の成分として、一時的な疲労感を軽減することが報告されている。機能性表示食品としての発売時期が(健康に気を付ける)新型コロナウイルス禍と重なったこと、毎年過去最高気温を更新するような気候変動による猛暑も追い風になったようです」とブランドマネジメント部の河崎尚之さん(32)。
同社にはクエン酸効果をうたうロングセラーがもうひとつ。昨年10月「高めの血圧を下げる」との表記をきっかけに、3カ月で前年同期比の売り上げを16%伸ばした「ポッカレモン100」だ。「特に40~60代、高血圧予備軍の方が新たに手に取ってくれている。薬に頼る前に、日々の食事や飲み物によって改善したい層に響いたようです」とブランドマネジメント部の加藤貴義さん(40)。
歴史は古く、旧・ポッカコーポレーション創業者の谷田利景氏が昭和32年に開発した「ニッカレモン」をルーツとする。「もはや戦後ではない」と経済白書に記された翌年。高度成長の幕が開き、街角のバーでカクテル素材として重宝された。「当時はレモンが非常に高価。手軽にレモンのおいしさを届けたいと商品化し、15年後に現在の名称と果汁100%になりました」。家庭にも普及。平成前期に主婦層との座談会で「使っていると体の調子がいい」との声を受け、健康効果の研究を進めてきた。
一昨年、被験者男女154人による飲用実験により、商品のクエン酸によって血管が拡張し血液の流動性が促され、高めの血圧を下げる作用が確認できた。実験開始時は収縮期血圧の平均値が134と高めだったが1日30ミリリットル12週間の飲用後、平均値が128を切るまでに改善。成果を日本臨床試験学会誌「薬理と治療」に発表し、機能性表示食品として消費者庁に届け出た。
1日の推奨量は実験と同じ大さじ2杯。クエン酸は過熱調理にも強く、商品HPには600以上のレシピが並ぶ。レモン果汁の作用で肉をしっとり柔らかくする裏技をはじめ、ちらしずし、レモンクリームパスタなどメニュー豊富だ。
ただし商品の起源となったカクテル提案は控えている。「機能性表示食品となり健康効果をうたっているのに、飲酒を奨励するのはよろしくないとの国の指導に沿っています」と加藤さん。120ミリリットル300円、450ミリリットル653円など4サイズに加え、有機レモンを原料にしたタイプがある。開栓後の保存の目安は冷蔵庫で2週間だ。
両担当者とも好調の背景に仕事や趣味、推し活などにアクティブな「女性の社会進出」を挙げ、実際の購入者も女性が約6割と多い。私も取材先にたどり着く前の炎暑の道でへたばり、コンビニを見つけて一気飲みした。クエン酸の酸っぱい刺激で瞬間リセット完了…いや早過ぎる。気のせいも効果のうちか!?