アップルiPhone 17は「AIとスマホのあり方」を決める試金石

アップルiPhone 17は「AIとスマホのあり方」を決める試金石

ほどなく、アップルはiPhone 17シリーズと共に、iPhone 17 Proを発表する予定だ(日本時間では9月10日午前2時からを予定)。ティム・クックCEOがステージに登壇し、新しいハードウェアを紹介するとともに、アップルのスマートフォンに対するビジョンを示すはずだ。そのビジョンには、モバイルにおける人工知能(AI)の活用が間違いなく含まれるだろう。

そしてそれこそが、新しいiPhoneシリーズだけでなく、2025年以降のアップルのAIに対するアプローチ全体におけるアキレス腱なのである。市場の他の企業は、AIをアップルの戦略とは異なるものとして定義してきた。アップルの持つ絶大な影響力をもってしても、AIに対する人々の認識を自社に有利な形に再設定するための時間はなくなりつつある。

■iPhone 17 Pro対AndroidのAI「Gemini」

2023年のPixel 8シリーズの発表時、グーグルはこの新しいアプローチを初の「AIスマートフォン」と命名した。これにより、数多くのAI機能が一般に提供された。その一部はPixel上で動作し、より重要な機能はクラウド上で実行された。とはいえ、消費者は期待通り、あるいはそれを上回るシームレスなAI体験を手にできた。

他のAndroidメーカーもこれに追随し、各社はグーグルから提供されたAI機能の多くを利用した。たとえばサムスンのGalaxy(One UI 7)シリーズでは、「Now Bar」(ナウバー)のような独自の機能を追加した。

そして先月、グーグルはPixel 10およびPixel 10 Proの発売により、モバイルAIの未来に対するビジョンを明確に示した。ハードウェアのアップグレードは「技術の進歩に追いつく」程度のものであったが、ソフトウェアの変更は同社のエージェント型AIアプローチを明確に打ち出すものであり、「マジックサジェスト(Magic Cue)」がその最も顕著な象徴だった。

■iPhone 17 Proと「Apple Intelligence」

一般消費者向けAIに関するアップルの状況は、決して楽観視できるものではない。Pixel 8シリーズの発売から、アップルがAIの新世界へのアプローチを発表するまでには8カ月を要した。その発表は、2024年5月のWorldwide Developer Conference(WWDC、世界開発者会議)で行われた。

Apple Intelligence(アップル・インテリジェンス)革命は、iPhone 16と共に到来すると期待されていた。WWDCでデモされた機能のうち、いくつかは実際に搭載された。しかし、パーソナライズされたSiriのような主要なサービスの一部は、依然として実質的に搭載されていない。このWWDCでのデモから具体的な進展が見られないことについて、アップルコミュニティから批判の声が上がり、著名なコメンテーターであるジョン・グルーバーは、このデモを「ベイパーウェア」(発表されても実際には提供されない製品)とまで呼んだ。

「その現状はベイパーウェアと呼ばれるようなものです。その機能はアップルが存在すると語り、翌年出荷されると主張し、WWDC基調講演の象徴的な『Hey Siri、母のフライトはいつ着陸する?』という部分(約1時間22分頃)で、極めて効果的に描かれました。しかし2024年6月当時、アップルは準備済みの台本と準備済みのデバイスを用いて、製品マーケティング担当者がデモを行ったにもかかわらず、これらの機能が実際に動作するところを示すことを、望みもせす行うこともできなかったのです」。

不自然な後付けの頭字語であるApple Intelligenceは、競合に遅れをとっている。生成AIの基本的な要素は備えているものの、2024年のWWDCで約束された、深い統合、パーソナライズされたサービス、そして「ただスムーズに機能する」AIは、いまだ実現されていない。

データの安全性至上主義が統合を難しくする

■iPhone 17 Proのデータを安全に保つ

アップルにはユーザープライバシーを重視するという長年の方針があり、それがAndroidのモバイルAIにおける優れた能力を再現することを困難にしている。Apple Intelligenceには根本的なトレードオフが存在する。可能な限り多くのデータをiPhone内に保持することで、クラウドベースのAIが利用できるような強力な処理能力や膨大なデータセットは利用できず、ローカルで達成できることの範囲が制限される。競合他社は、より多くのAI処理をサーバーサイドに任せることができ、それによって正確性、速度、能力を向上させている。

アップルも、「Private Cloud Compute(PCC、プライベート・クラウド・コンピュート)」システムを用いて、クラウドベースのサーバーでAI処理を行っている。これにより、AIリクエストを匿名でクラウドに送信できる。その際、ステートレス処理(処理後にサーバーからデータを削除)、データ最小化(文脈に応じた必要最低限のデータのみをクラウドに送信)、検証可能なプライバシーといった、いくつかの保護措置が講じられている。

しかしPCCは、Androidエコシステムが利用する完全なクラウドベースのシステムと比較して限界がある。プライバシーを重視して設計されているため、高度で持続的なパーソナライゼーションを提供できず、また、ユーザーのニーズに即応するためにクラウド上でユーザーデータを継続的に分析することもできない。

すべての処理はiPhoneの内部で行われなければならない。そして、どんなに楽観的に見積もっても、iPhone 17 Proおよび17 Pro Maxを駆動するであろう次期A19 Proチップでは、サーバーパワーにはかなわない。

■iPhone 17 Proが直面する課題

ユーザーデータを安全に保つというアップルの哲学は、グーグルやAndroidと同じ土俵で競争することをほぼ不可能にしている。このやり方は機能しない。過去2年間がそれを物語っている。

ここが、来年にかけてのアップルの主要な課題である。iPhone 17、iPhone 17 Air、iPhone 17 Pro、iPhone 17 Pro Maxの発売は、ティム・クックCEOと彼のチームがスマートフォンのAIをめぐる議論に大きな影響を与えられる、現実的かつ最後の機会となる。人工知能とは、実は「パーソナルインテリジェンス」、つまり利用者個人に属するものなのだという考えを浸透させる必要がある。それは、クラウドと共有されず、消費者のデータがその場で利用されることもなく、大規模なAIのトレーニングに使われることもない、という考えである。

ティム・クックCEOは、これからの議論の流れを、アップルが有利な領域、すなわちオンデバイス処理、制御されたクラウドアクセス、プライバシーをクラウドに晒すのではなく個人情報を優先、といった方向へ変える必要がある。

その議論の流れを変えることができれば、AIの進むべき道を変えることができる。iPhone 17 Proとそのシリーズ機は、アップルにとってそれを成し遂げる最後の機会になるかもしれない。

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