AIにピザを注文させたら6分で完了--「ChatGPTエージェント」が拓く未来の日常
AIに任せると、オンラインでのピザ注文は格段に面白くなる。
OpenAIが、複雑なタスクを最初から最後まで処理できるAI機能「ChatGPTエージェント」を発表したとき、筆者はその能力を完全には理解していなかった。OpenAIは、これが個人的なアシスタントになれると説明しているが、アシスタントを雇ったことのない人間にはピンとこない。もし自分にアシスタントがいたら……と想像してみたところ、ピザの注文を頼むかもしれないと思った。そこで、実際にやってみることにした。
米CNETのニューヨークオフィスの近くに、われわれの行きつけになっている「Cello's Pizzeria」という比較的新しい店がある。ここは少し高級なスライスピザの店で、パリッとしたクラストの上に自然な酸味のソースを乗せ、オーブンから出すと同時に削りたてのパルミジャーノ・レッジャーノを振りかけてくれる。
ChatGPTエージェントが筆者のマルゲリータピザを注文するのにかかった時間は6分だった。筆者のリクエストを処理し、仮想デスクトップを開いてCello'sのウェブサイトにアクセスし、目当てのピザを見つけてカートに入れ、決済に進むまでの一部始終を見守った。セキュリティー上の理由から、住所とクレジットカード情報は筆者自身が入力する必要があった。どこかのデータセンターで処理されているウェブページ上で、ChatGPTエージェントが仮想カーソルを動かすのを見た。人間向けに作られたインターフェースを理解して操作する様子は、AIが面白い詩やツタンカーメン王に関するエッセイを生成するだけだった時代から、いかに進化したかを物語っている。
インターネットは間もなくAIエージェントであふれかえるだろう。これらのAIボットは、単にウェブサイトを巡回してデータを吸い上げる以上のことができる。AIエージェントは複雑なクエリーを理解し、複数のステップからなるタスクを遂行できるのだ。そしてAIエージェントは「ChatGPT」や「Gemini」のような大規模言語モデル(LLM)を基盤にしているため、ユーザーは平易な言葉を使ってタスクを実行させることができる。サンディエゴ・コンベンションセンターの近くでホテルを探す必要があれば、ChatGPTエージェントは最大20分かけてExpediaなどの旅行サイトをくまなく調べ、まさに探しているものを見つけ出してくれる。
OpenAIの最高経営責任者(CEO)であるSam Altman氏は、AIエージェントが2025年中に労働力に加わる可能性があると考えている。
同時に、悪意のある人々がAIエージェントを使い、企業や個人を標的にして脆弱性や機密情報を見つけようとする可能性もある。
AIエージェントは人間と同じ意味で知能があるわけではなく、プロンプトインジェクションなどの戦術によって操作される可能性がある。これは、AIに特定のテキストを読み込ませることで、本来意図しない動作をさせるというものだ。もし自分のAIエージェントに銀行口座の管理を任せていた場合、侵害されたエージェントはログイン情報を悪意のある第三者に渡してしまうかもしれない。これはまだ極めて初期の憶測にすぎず、また企業は脆弱性が発見され次第、修正に取り組んでいる。しかし、AIは人間の言語を介して対話するため、「バイブハッキング」攻撃を受けるおそれは常にある。
ChatGPTエージェントが注文を終えてから約30分後、配達員から電話があった。当然ながら、この注文を筆者の新しい自動化された「パーソナルアシスタント」が行ったことは知る由もない。AIがオンラインのシステムとやり取りし、人間に何かをさせることができるようになったことを、われわれは懸念すべきなのだろうか。
筆者には分からない。少なくとも、ピザはとてもおいしかった。