電車で前に座った人が“アンドロイド”だった、なんて日がすぐに来るかも
自分ならどんな選択をするだろう?
シグネチャーパビリオンは、万博の中心となった8人のプロデューサーが主導するパビリオン。全体で「いのちの輝きプロジェクト」と呼ばれ、万博のコンセプトでもある「いのち輝く未来社会のデザイン」をより強く表現したものでもあります。
日本のロボット工学の権威である石黒浩教授が手掛けたのが、こちらの「いのちの未来」というシグネチャーパビリオンです。
建築のモチーフは、水、あるいは渚。
外壁は常に水が流れていました。石黒教授の「人間は無生物から生まれ、生物になった。そして技術の力で新たな無生物へと進化しようとしている」という言葉を起点にデザインされたそうな。めっちゃ良い言葉じゃないっすか…。
多くの企業が協賛しており、ロボットやアンドロイドが当たり前になった未来はどのようなものかを、ユニークに表現しています。「未来社会の技術予想」という、ある意味で地に足のついたテーマ。
パビリオンはツアー形式になっていて、イヤホンで音声を聞きながら巡回するかたちでした。時系列に沿ってざっと紹介しましょう。
いのちの歩みから見る、ヒトのかたち
導入では、日本人がはいかにしてモノにいのちを宿してきたかを紹介。仏像や文楽人形など、時代時代のヒトガタを見ました。
現代はアンドロイドという表現にたどり着きました。では、アンドロイドは僕らの未来にどう関わってくる?
ガタンゴトン…ここは未来の電車。高速鉄道の車窓からは空を飛ぶ車や高層ビルが見えます。おや、奥の席に座っているのは…
お出かけ中のアンドロイド! 未来ではアンドロイドが人の社会に溶け込んでおり、人間と同じように暮らしている。そうした未来を表現しているわけです。
ここからは、50年後の未来を生きるとある女の子とおばあさんの半生を、映画を見るように追っていきます。場面ごとに人生のシーンを切り取った部屋がいくつかあり、各部屋を周りながらガッツリ鑑賞しました。
寿命を迎えても、「アンドロイドとして生きる」道が用意された未来。でも、あえてその選択をしない人もいます。“生きる”とはどういうことか、誰のために生きるのか──。
そんな感じのストーリーなんですけど、いやー、泣いちゃいました(思い出してもウルっと来る)。自分ならどうするだろうとか、未来ではそうした悩みも出てくるかもなぁとか、色々考えてしまいましたね。詳しいネタバレは控えておきます!
石黒教授が手掛けたことで話題となった、マツコロイドの姿も。音声も流れていたんですが、良くできてたなぁ。
実際に動いているアンドロイド(しかも実存している人)を見る機会って、なかなか無い気がします。多くの人がカメラを向けていました。
最後のゾーンは、50年後から一気に飛んで1000年後を表現! 人とアンドロイドの境界はなくなり、あらゆる制約が解き放たれた幻想的な世界を描きます。
1000年後のアート、表現、わからなさすぎる…。1025年の人がスマホやネットを見るとこんな気持ちになるかもしれませんね。なんかすごい。
「未来って地続きだもんなぁ」と、感慨深い気持ちに
最後のゾーンにはヤられてしまいましたが、パビリオンを出た時の心境はポジティブなものでした。未来という時間軸を自分ごととして捉えられたというか。
石黒教授のこの言葉も胸に刺さりましたね。未来は待ってても来ない、自らデザインできる。その頃にはいのちという概念への捉え方も変わっているかもしれません。変わっていくのなら、考えていかねば。
いのちや未来といった壮大なテーマではありますが、演出も物語も大変面白く、ぜひここは訪れて欲しいパビリオンでした。「自分のいのちをどうするか」を、未来では当たり前に考えるようになるかも?