「AIで稼ぐために博士号を取っても無駄」。グーグルAIチーム創始者が断言する「いま身につけるべき」意外なスキル
ャド・タリフィ氏はグーグル初の生成AIチームを立ち上げ、現在は自身のAIスタートアップのCEOを務めている。AI人材獲得競争において、メタのような企業は優秀な人材を引き付けるために巨額の契約金をちらつかせている。しかしタリフィ氏は、AIブームに乗じて一攫千金を狙うためだけに学校に戻り、博士号を取得すべきではないと語る。
AI(人工知能)人材獲得競争が激化するなか、メタ(Meta)などのビッグテックは、人材を惹きつけるために数億ドル(約300億〜約1320億円)規模の法外なボーナスをちらつかせている。
しかし、グーグル(Google)初の生成AIチームを立ち上げたジャド・タリフィ(Jad Tarifi)氏は、Business Insiderに対し、AIブームに便乗して金儲けをするためだけに博士号を取得することはお勧めしないと述べた。
いまから博士号に挑戦しても手遅れ
「博士号を取り終える頃には、AIそのものがなくなっているだろう。AIをロボット工学に応用するようなことでさえ、その頃には解決されているはずだ。だから、まだ初期段階にある生物学向けAIのようなニッチな分野に進むか、あるいは全く手を出さないかのどちらかだ」とタリフィ氏は語った。
42歳のタリフィ氏は、2012年にフロリダ大学でAIの博士号を取得した。同年グーグルに入社し、この検索エンジン大手で約10年間勤務した。2021年、タリフィ氏は自身のAIスタートアップ「Integral AI」を創業した。
タリフィ氏は、博士課程での研究はかつての自分のような『変わり者』だけが引き受けるべき苦行だと語った。なぜなら、それは「人生の5年間を犠牲にし、多くの苦痛を伴うもの」だからだと。
「その分野に取り憑かれているのでなければ、誰も博士課程に進むべきではないと思う」とタリフィ氏は述べた。
大学院ではなく社会の中で学ぶべき
世界がこれほど急速に進歩しているいま、学校の外ではるかに多くのことを成し遂げられる、と彼は付け加えた。
「もし迷っているなら、基本『ノー』を原則とすべきで、いまいる実社会の中で生きることに集中すべきだ」とタリフィ氏は強調した。「そのほうがずっと速く前進できるし、多くのことを学べる。変化への適応力も高まるだろう」。
タリフィ氏はまた、法律や医学のように修了に長い時間がかかる学位も同じように危機に直面していると指摘する。
彼は「現在の医療制度では、医学部で学ぶ内容はあまりにも時代遅れで、暗記に基づいている」と述べ、人々は高度な学位を得るために「人生の8年間を無駄にする」ことになりかねないと付け加えた。
AI時代に成功するための必須スキル
タリフィ氏は、AI時代に成功したいのであれば、社会的スキルと共感力を身につけるべきだと指摘した。なぜなら、理工系は学ぶことができる分野であるのに対し、AIを使いこなすには「感情的な調和」と「優れた審美眼」が必要になるからだ。
「最も重要なのは、自身の内面に向き合うことだ。瞑想し、友人と交流し、自分自身の感情を理解することだ」とタリフィ氏は言う。
AIに関しては、業界で働くためにあらゆる詳細を習得する必要はないとタリフィ氏は指摘する。
タリフィ氏は「私はAIの博士号を持っているが、最新のマイクロプロセッサがどう動作するかは知らない」と述べ、こう続けた。「例えば、あなたは車を運転できるが、車に関するすべてを知っているわけではないだろう。でも、何か問題が起きた時にどうすればいいかを知っていれば、それで十分だ」。
AIによって破壊的な変容が進むこの世界を生き抜くためには、自分の情熱を追求することが重要になってくると指摘するのは、タリフィ氏だけではない。
スタートアップ・インキュベーター「Yコンビネーター(Y Combinator)」の創設者、ポール・グレアム(Paul Graham)氏は8月5日のX投稿で、AIは「雑用が得意」のため、低レベルのプログラミングの仕事は「すでに消えつつある」と指摘している。
「したがって、AIから身を守るための最も一般的なアドバイスは、雑用のレベルをはるかに超えた水準で何かを非常にうまく行うことだと思う」とグレアム氏は投稿した。
さらに「それに心底興味を持っていなければ、何かを極めることは難しい」と付け加えた。