AIは人間の代替ではない――IT企業が実践する“共存戦略”とは

AIは人間の代替ではない――IT企業が実践する“共存戦略”とは

大手金融機関Goldman Sachsは2023年4月、人工知能(AI)技術の普及による業務の自動化を通じて、3億人の雇用に影響が生じるとの試算を発表した。AI技術が社会のさまざまな場面で広がる中、企業が取るべき戦略と、人間の従業員に求められる役割とは。

AI時代に変化する従業員像とは?

 ITベンダーZenitechのCEO、サム・キングストン氏は、画像やテキストを自動生成するAI技術「生成AI」が普及するにつれて、ソフトウェアエンジニアに求められる役割も変化すると述べる。

 「生成AIツールがコーディングの大半を処理するようになったことで、批判的思考力や創造性、コミュニケーションスキル、ユーザーニーズの理解といった、コーディング以外のスキルの重要性はさらに高まる」とキングストン氏は語る。

 キングストン氏は、「われわれは、AI技術をエンジニアの代わりではなく、『人間の可能性を引き出すきっかけ』と見ている」と話す。エンジニアも非エンジニアも、AI技術を駆使して迅速にシステムを構築したり、学習したりできるようになったということだ。「AI技術を使いこなせるように従業員をトレーニングすることで、従業員がより創造的な役割を担えるようになり、開発ライフサイクル全体が加速する」と同氏は説明する。

 ITベンダーHCL Technologiesは、この考えを実践している企業の一つだ。同社は約10万人のエンジニアに対して、日々の業務でAIツールを使用できるようにするための研修を実施した。この研修は、対象者を「AIツールの開発者」と「AIツールの利用者」の2グループに分けている。「開発者には、チップの設計、生成AIのモデリング、データサイエンス、エンジニアリングと多岐にわたる内容を用意している。利用者には、AI技術の基礎知識やAI技術を使った業務効率化に焦点を当てている」。同社の最高技術責任者(CTO)、ビジェイ・ガンター氏はそう話す。

AI技術をどう活用している?

 HCL Technologiesは、採用プロセス、IT部門のヘルプデスク、入札書類の作成を効率化するためにAIツールを使用している。ヘルプデスクではAIツールが従業員からの問い合わせ内容を判断し、必要に応じて適切な担当者に作業を割り振ることで問題を解決する。

 HCL Technologiesの年間採用数は約3万人で、採用に伴って約100万通の履歴書を確認する必要がある。この作業を効率化するために、同社は履歴書をスキャンし、職務内容との関連性に基づいてスコアを付けるAIツールを構築した。その結果、より多くの履歴書と候補者を、面接や検証プロセスを通じて処理できるようになったという。面接では、AIツールが面接官に適切な質問を提示する。「AIツールが適切な質問を提示するため、応募者の職務に対する高度な知識を持つ従業員でなくても、一次面接の応対ができるようになった」(ガンター氏)

 HCL Technologiesは、提案依頼書(RFP)や情報提供依頼書(RFI)の処理にもAIツールを活用しているという。ガンター氏によると、RFPやRFIを通じて顧客から寄せられる質問の大半は似通っている。そこで同社は、過去のデータからAIモデルが質問と回答を生成するシステムを構築した。

この結果、質問に応答する時間の短縮と、回答の品質の向上に成功した。特定の担当者を配置する必要もなくなったとガンター氏は説明する。

 ただし、全ての業務をAI技術に任せるわけではない。「顧客が求めている情報には特有の文脈やニュアンスが存在する。人間が創造力を発揮させるのは、そのような場面で問題を読み取る場面だ」

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