個人が買える「レベル4」の自動運転車、AIスタートアップTensorから登場
ロボタクシーがますます多くの都市で展開される中、AI企業Tensorは米国時間8月13日、個人所有を前提に設計した自動運転車を発表した。
この「Tensor Robocar」は、プロモーション動画で確認できるように、流線形の近未来的な造形とシルバーの仕上げにより、Waymoの「Jaguar I Pace」とTeslaの「Model Y」を合わせたように見える。同社は発表の中で、この車両に「100以上のセンサーをシームレスに統合」しており、さらにカメラ37台、LiDAR5基、レーダー11基、マイク22基、超音波センサー10基を搭載していると述べた。
Tensorによれば、この車両はレベル4の自動運転車で、特定のエリアや天候条件のもとで完全な自動走行ができる。なお、Waymoのロボタクシーもレベル4だ。
「Tensor Robocarは、量産型の消費者向け自動運転車としては初のモデルで、大規模な個人所有を見据えてゼロから設計された」と同社は発表の中で述べた。「今日の自動運転車の多くは主にロボタクシーとして作られており、手厚くメンテナンスされ、拠点に依存しているが、Tensorはその常識から大きく外れる。事業者ではなく所有者のために設計された、真に自立した個人向けのRobocarだ」
Tensorは、Robocarを米国、欧州、アラブ首長国連邦の「一部のグローバル市場」で展開し、2026年後半に納車を始めるという。ただし価格は明らかにしていない。
同社は、この新型車が「世界で最も厳しい自動車基準に適合するよう設計している」と強調する。そこには、ブレーキ、タイヤ、エアバッグといった部品や車両が必要な安全要件を満たすことを目的とした米運輸省道路交通安全局の連邦自動車安全基準(FMVSS)も含まれる。同社はかつてAutoXとして知られ、2020年にカリフォルニア州車両管理局(DMV)の自動運転試験認可を得ている。
Robocarは、エージェンティックな車両として設計されており、車内でも近くからでも音声で指示できるとTensorは説明する。プロモーション動画では、女性がスマートフォンを使い、地図上で乗車場所を指定しながら「迎えに来て」「今すぐ来て」と伝え、車に向かって歩きながら「エアコンをつけて」と指示する様子を紹介している。降車後には「トランクを開けて」「駐車スペースを見つけて」といった指示もしている。
興味深いのは、利用者が望めば自分で運転もできる点だ。動画では、女性が運転席に乗り込み、ボタンを押すとダッシュボードのタッチスクリーンがスライドしてハンドルが現れる様子が示されている。
Tensorは、位置情報や嗜好、履歴といった個人情報を「車両内で処理・保存し、セキュリティを確保する」としている。データには、エンドツーエンドで暗号化されたスマートフォンアプリか車載インターフェースからアクセスできるという。多数のカメラやマイクに不安を覚える場合に備え、カメラの物理的なカバーやマイクをオフにするスイッチも用意するとしている。
自動運転技術を活用しつつ個人の自動車も欲しい人には、Tensor Robocarのような車両は魅力的に映るだろう。Elon Musk氏もTeslaのロボタクシーについて同様の構想を示しており、個人で所有しながら配車サービスの一部として運用できるとしている。
ただし自動運転技術の開発は難しく、Tensor Robocarのような車両を2026年に出荷するのは高い目標かもしれない。仮にその時点で納車可能になっても、実績のある自動運転企業でさえ直面する数々の規制上のハードルに加え、こうした高度なシステムに付きものの高いコストや技術的課題に向き合うことになりそうだ。
「2026年というTensorの納車目標は野心的だが、不可能ではない。広範な一般提供に先立ち、まずは特定地域で限定的に展開すると私はみている」と、コンサルティング会社Avrio Instituteの社長であるShawn DuBravac氏は述べた。「レベル4の自動運転を個人の所有者に委ねるのは、ロボタクシーの車両群を運用するよりもはるかにハードルが高い。各家庭の駐車スペース、日々の用事、そして道路上の予測不能な人間のドライバーすべてに対応する必要があるからだ」
DuBravac氏は続けて「技術が整っても、消費者の信頼を得ることが最も難しく、時間がかかることが多い。ビジネスモデルを受け入れてもらうまでが、当初は大きな課題になり得る」とも述べた。
自動運転車には大小さまざまな企業が参入している。Googleの親会社Alphabet傘下のWaymoは間違いなく先頭を走っており、米国のいくつかの都市でロボタクシーを展開し、今後も拡大する見通しだ(その一部はUberとの提携による)。May MobilityやNuroもUberと組み、より多くの人がサービスを利用できるようにしている。Lyftも同様に配車サービスで複数の提携を結んでいる。Amazon傘下のZooxは年内の商用開始に向けて準備を進めている。