「胆石」は日本人の10人に1人――症状がないまま進行する病気の見分け方と対策

「胆石」は日本人の10人に1人――症状がないまま進行する病気の見分け方と対策

脂っこい食事の後にお腹の右上が痛む――そんな経験がある人の中には、気付かないうちに胆石ができているケースがある。

症状がまったく出ないまま過ごしている人も多く、放置すると重症化して命に関わることさえあるという。

違和感を覚えた時点で専門的な相談が必要とされる胆石症の基本から、検査、治療、予防法まで、亀田第一病院(新潟市江南区)の渡邉 東(わたなべ あずま)先生に伺った。

◇胆石症って、どんな病気?

胆石症は、胆嚢(たんのう)や胆管といった消化液の通り道に「石」ができてしまう病気です。この石は「胆石」と呼ばれますが、できる場所によって症状や治療法が少しずつ異なります。

実は、日本人の1割くらいの方に胆石があるといわれています。その多くは特に症状がなく、日常生活に支障をきたさないまま過ごしている方も少なくありません。

しかし、脂っこいものを食べた後にお腹の右上が痛む、熱が出る、肌や白目が黄色くなる(黄疸)といった変化を感じる方もいるでしょう。その場合は胆石が影響している可能性があります。

◇胆石ができる原因は?

胆石にはいくつかのタイプがあり、たとえば「コレステロール結石」というタイプは、肥満や脂っこい食事、妊娠、糖尿病、肝臓の病気などがきっかけになることがあります。一方で、「ビリルビン結石」という石も確認されています。ビリルビンは古くなった赤血球が分解される際に生じる色素で、血液の病気や胆管の細菌感染などが関係するとされているものです。さらに、コレステロール結石とビリルビン結石の両方の特徴を併せもつ「混合型結石」も存在します。

コレステロール結石が作られる主な要因として、まず挙げられるのは脂肪の多い食事です。他にも、食事の回数を減らしたり急に体重を落としたりすると、胆嚢の動きが鈍くなって胆汁が滞りやすくなり、コレステロールの濃度が上がって結石ができやすくなります。

また、ビリルビン結石ができる主な原因には血液疾患や肝硬変、胆管への細菌感染が挙げられます。

◇症状が出るとき、出ないとき

胆石症は、全ての方に症状が出るわけではありません。実際、胆嚢に石があっても、6~8割ほどの方は何も感じずに日常生活を送っているのが現状です。

ただし、石が胆嚢の出口に詰まってしまうと、右の肋骨(ろっこつ)の下あたりに強い痛みを伴うことがあります。中には、揚げ物など脂の多い食事の後に痛みを訴える方も少なくありません。

一方、胆管という場所に石ができて詰まる「胆管結石」は、より注意が必要です。発熱や黄疸が現れたり、場合によっては血圧が急激に下がって救急搬送を要したりするケースも見受けられます。目に見える変化として、目の白目部分が黄色くなったり、尿の色が濃くなったりするケースもあるので、家族や周囲の方が気付くこともあります。

◇検査ではどんなことをする?

胆石症の診断には、「お腹のエコー検査(超音波検査)」を用いるのが一般的です。胆嚢はエコーで比較的見えやすい臓器であるため、検診などで偶然胆石が見つかるケースも少なくありません。

ただし、石の位置や体の状態によっては、CTやMRIなどの精密検査が必要になる場合もあります。特に膵臓や肝臓の奥の部分に胆石がある場合はエコーでは映りにくいため、他の画像検査で補うことが必要です。

また、手術を検討する段階では、胆嚢の位置や形を詳しく確認するためにMRI検査を行ったり、胃の病気がないかどうかを調べたりする目的で胃カメラを使用することもあります。必要に応じて、血液検査で炎症の有無をチェックすることもあります。

◇治療の方法は手術だけではない

治療は、石がある場所と症状の有無によって変わってきます。たとえば胆嚢の中に石がある場合、症状がまったくなければ、しばらく様子を見るという判断になることが多いはずです。よく「墓場まで持っていっても問題ない」と言われるのは、このケースです。

しかし、痛みを繰り返したり生活に支障が出ていたりする場合には、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術という方法で胆嚢を摘出するのが一般的です。この手術はお腹に小さな穴を数か所開け、カメラや器具を使って行うので、体への負担が比較的少なく、入院期間も短めで済みます。

胆管に石がある場合は、内視鏡を使って石を取り除く治療を行います。これは「ERCP」といい、口から入れた内視鏡を使って胆管にある石を取り出す方法です。たとえ無症状でも胆管結石は放っておくと危険なことが多いので、見つかったら早めに治療するのが一般的です。

肝臓の中にできる石は、特に悪さをしない限りは経過観察とすることが多いです。ただ、胆管を圧迫して炎症を起こすような場合は、外科的な手術が必要になることもあります。

薬で胆石を溶かす治療もないわけではありませんが、あくまで限られた条件の方に使うものです。長期間飲んでもなかなか効果が出ないことが多く、現実的には手術や内視鏡での対応がメインになっています。

◇胆石症を防ぐには日常生活がカギに

予防に関しては、日々の生活習慣がとても大事です。まずは、脂っこい食事を控えること。極端な食事制限や急激なダイエットも避けたほうがよいでしょう。水分はしっかり取って、便秘にならないようにするのもポイントです。

食事では、野菜や果物、魚をバランスよく取り入れることが重要です。食物繊維はコレステロールの吸収を抑えてくれるので、胆石症の予防にもつながります。さらには、オリーブオイルや魚の油など、体にやさしい油をうまく取り入れるのもよいでしょう。「油を全て避ければ問題ない」というわけではなく、上手につき合っていくことが大切です。

また、運動も取り入れましょう。激しい運動でなくても、ウォーキングや軽いストレッチでも十分です。日々の血流や胆汁の流れがスムーズになることで、胆石ができにくい体をつくっていけると思います。

◇受診の目安

「ちょっと気になるな」「最近お腹が変かも」と感じたら、遠慮なく受診することをおすすめします。「こんなことで医療機関に行っていいのかな?」と迷われる方もいらっしゃると思いますが、どんな病気でも肝心なのは早期発見と早期治療です。発熱や「目が黄色い気がする」といった症状から、思いがけず胆石が見つかることもあります。心配なことがあれば、まずは早めにかかりつけの先生へご相談ください。

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