「不衛生だと思う」「なんとなく気持ち悪い…」自宅以外のトイレ、シャワー機能の利用ためらう女性 40%以上…感染リスクはあるの?
一般世帯での普及率は80%以上、今や日本人の生活で当たり前の存在となっている「温水洗浄便座」。しかし、ある調査では不特定多数が使用する場所では「不衛生だと思う」などの理由で「使わない」という人が多くいることが分かりました。実際に細菌感染リスクなどはあるのか、トイレの専門家に聞きました。
家庭に限らず、商業施設やホテル、駅舎、旅客機まで…今や日本人の生活に密着した衛生機器となっている「温水洗浄便座」。
内閣府の消費動向調査によると、2016年以降、一般世帯での普及率は80%を超えています。
温水洗浄便座には「おしり洗浄」や「ビデ洗浄」といった、局部の周辺に付着した汚れを洗い流す機能が備わっています。
実際に自宅のトイレで使用している人はどのくらいるのでしょうか。
日用品流通の情報基盤を運営する株式会社プラネットの調査では、「よく使用している」という人は66.1%で、「ときどき使用している」という人は14.4%という結果に。
男女別に見てみると、回答に差があることが分かりました。
■女性より男性 若年層より高齢層が使用
自宅のトイレで温水洗浄機能を「よく使用している」と答えた男性は75.8%で、特に40〜70代の利用が多くなっています。
一方で、女性は男性よりも約25%低い51.5%で、20代、30代の利用は特に低くなっています。
多くの家庭に普及している温水洗浄便座ですが、洗浄機能は女性より男性、そして若年層より高齢層が好んで使用しているようです。
しかし、普段から自宅で使用していても、不特定多数が使用する公共の施設で使うのは迷ったという人もいるのではないでしょうか。
■自宅以外の温水洗浄機能は不衛生?
こちらは、自宅以外での温水洗浄機能の利用についてのアンケート結果です。
これによると、自宅以外で「利用する」と答えた人は全体で46.8%。自宅で利用する人よりも3割以上少なくなり、特に女性や若年層の利用の少なさが目立ちます。
利用しない理由を聞いてみると…
特に多かったのが「不特定多数が使用しているから」「不衛生だと思うから」「なんとなく気持ち悪い」といった回答でした。
自宅以外で温水洗浄機能を使用する際に不衛生で使用したくないと答えた人も多くいますが、実際に細菌感染などのリスクはあるのでしょうか。
■雑菌がいてもすぐに減少し元の水質に
トイレに関する製造メーカーを会員とする団体、日本レストルーム工業会によりますと、温水洗浄便座には使用前と使用後にノズルを洗浄する機能があり、使用する時には清潔な状態になっているといいます。
また、同会は第三者機関に委託し温水洗浄便座から出る水の質を調査。
その結果、ノズルから出る水は「水道水並み」の水質であり、雑菌がいたとしてもすぐに減少して元の水質になることが分かりました。
また、雑菌がノズルから水路の内部へさかのぼることも確認されなかったということです。
■温水洗浄機能で菌が1万分の1以下に…?
そんな温水洗浄便座のシャワー機能、ノロウイルスの感染拡大をおさえるのに有効だというのです。
ノロウイルスへの感染は通常、「汚染された食品を加熱不十分で食べること」や、「ノロウイルスに感染した人が調理した料理を食べること」などによって感染します。
そこで、二次感染を防ぐためには、便を手に付けないということが大切になります。
同会は第三者機関に委託し、おしり模型を用いて「便を4枚重ねのトイレットペーパーで拭きとった場合にどのくらい菌が手に付くか」という実験を実施。(※実験ではセラチア菌を使用)
その結果、温水洗浄便座を30秒間使った場合は、使わない場合に比べて手に付く菌の数が「1万分の1以下」になることがわかりました。
トイレットペーパーは無数の穴があり、大きさは菌の100倍ほど。そのため、トイレットペーパーを重ねても、菌が通過してしまうのです。
こうした理由からも、排便後の温水洗浄便座の使用がすすめられています。
■「温水洗浄便座症候群」に注意
また、使用上の注意点について聞いてみると、局部の長時間の洗浄や洗いすぎには気をつけてほしいといいます。
長時間、洗浄してしまうと「温水洗浄便座症候群」と呼ばれる肛門のかゆみなどを引き起こす症状が出る場合もあるため、洗浄時間は10秒〜20秒を目安にするといいそうです。
さらに同会は、常在菌を洗い流し体内の菌バランスが崩れる可能性があるため、局部内は洗わないよう呼びかけています。