いよいよ本当に「iPadがMacBookの代わり」になる日がくるのか?
アップルは6月上旬に開催した世界開発者会議「WWDC 25」で、「Liquid Glass(リキッドガラス)」と名づけた新しいOSのデザインを発表した。次期OSはそのデザインとユーザー体験がより近づき、結び付きが強くなる。特に、一部のiPadユーザーが待望してきた「iPadがMacBookの代わりになる」ことの可能性を、今秋に正式公開を迎えるiPadOS 26とmacOS Tahoe 26の比較から考察してみたい。
■Liquid Glassは斬新さと「馴染みやすさ」を追求したデザイン
新しいLiquid Glassデザインを、アップルは「かつてないほどに広範なデザインとユーザー体験のアップデート」であると表現している。つまり、Appleデバイスの主要なOS全体に共通するデザイン変更を、一息に実施する重要な機会になるという示唆だ。
平面であるデバイスのディスプレイ表示に「ガラスのような視覚効果」を付けて、奥行き方向への立体感を持たせるデザインを採用した。コンテンツやOSの壁紙が表示されている画面の上に、透過表示の操作アイコンやメニュー画面をレイヤー状に重ねて表示する。これが、画面の中に深く没入するような感覚をユーザーにもたらすのだ。
アップルによると、Liquid Glassは「美しく、表現力豊かでありながら、即座に馴染めるデザイン」を目指したという。実は、アプリアイコンなどのデザインは従来のフラットデザインから大きく変化したものではない。これはユーザーがLiquid Glassデザインを「再び学び直す」必要がないことを意味している。またiPadとMacのように、異なるデバイス同士で使い勝手を馴染みやすくする効果をもたらすだろう。
macOSに関しては今回、よりiPadOSやiOSのデザインとユーザー体験に近づいた印象を筆者は受けた。例えばiOSとiPadOSから先行導入された、アプリアイコンのカスタマイズ機能が初めてmacOSに導入される。ライトとダークのほか、Liquid Glassデザインを象徴するクリアモードに、好みのカラーに統一できる「色合い調整」もある。プラットフォーム間で一貫したパーソナライゼーション体験が提供される。
すべてのプラットフォームを横断する「iPhoneの体験」
アップルは2020年に初めて、独自設計によるカスタムSoCの「Appleシリコン」をローンチして以来、macOSでiOS向けアプリが利用できる体験を押し進めてきた。macOS Tahoe 26ではSpotlightの検索機能が大きく進化する。Spotlightの中の新機能である「アプリケーションビュー」は従来のLaunchpadを置き換えるものだが、このアプリケーションビューにはユーザーのMacと同じユーザーアカウントにひも付くiPhoneにインストールしたアプリも表示され、それを選択すると「iPhoneミラーリング」のアプリを介して即座に開ける。アップルがMacと他のデバイスがシームレスに連携する体験を、さらに強化することを目指した証左のひとつだ。
■すべてのプラットフォームを横断する「iPhoneの体験」
アップルはさまざまなユーザーに親しまれている「iPhoneの体験」を、ほかのプラットフォームに移植することにも力を入れている。iOS 26から新しく追加する「通話スクリーニング」は、「ライブ留守番電話」を発展させた機能だ。連絡先に登録がない電話番号から着信があり、発信者が留守番電話にメッセージを吹き込み始めて、名前と用件を伝えたことをiPhoneが判定すると着信音やバイブレーションによりユーザーを呼び出す。留守電メッセージの内容はテキストにも起こされるので、ユーザーはそれを見て応答するか、後ほど折り返すかを選択できる。
iPhoneが近くにあり、同じAppleアカウントとWi-Fiネットワークにサインインしていれば、ユーザーはiPadやMacで通話スクリーニングを確認して、そのまま通話に応答もできる。watchOS 26を導入したApple Watchには、通話スクリーニングの文字起こしを画面上で確認できる機能が加わる。iPhoneを中心とするAppleデバイスとOSのエコシステム全体で、よりシームレスで快適なユーザー体験を実現した重要な一歩だ。
強化されるウィンドウシステムがiPadによる生産性を高める
■強化されるウィンドウシステムがiPadによる生産性を高める
筆者も自分のiPadをMacBookのように使いたいユーザーのひとりだ。iPadOS 26ではユーザーがiPadの画面に複数アプリのウインドウを同時に立ち上げて、自由にサイズ変更や場所移動を可能にするマルチタスクにも適した直感的なウインドウシステムを導入する。写真アプリで選択したファイルを、メールアプリのウインドウにドラッグ&ドロップで移動して貼り付けることもできる。筆者もWWDCの取材でこの機能を目の当たりにして、いよいよiPadをMacBookのように使えそうな手応えを強く感じた。基調講演のステージでこの機能が発表された時には、観客席から大きな歓声が沸いた。
さらにiPadOS 26には、Macユーザーが使い慣れてきたウインドウコントロールが加わる。アプリウインドウの左上に表示される赤・黄・緑のボタンが並ぶあのUIだ。ウインドウをシームレスに閉じたり、最小化と最大化、あるいはボタンを長押ししてタイル表示が選べる。
iPadの画面タッチ、あるいはApple Pencilやポインタ操作で直感的にアプリウインドウを閉じることができると、ある意味でMacを超える快適さが味わえる。多くのMacユーザーはアプリウインドウを「コマンド+Wキー」で閉じたり、「コマンド+Hキー」で「隠す」キーボードショートカット入力も多用していると思う。iPadOS 26のアプリウインドウもそれぞれの操作に対応しているようだ。アップルによると一部のキーボードショートカットについては、macOSと「まったく同じ操作」ではないものもあるという。その背景には、iPadには独自のタッチ操作があるため、MacにあるすべてのキーボードショートカットをiPadに移植するのではなく、タッチ操作とのバランスを考慮した理由がある。
次世代のiPadOSとmacOSはまだデベロッパベータ版がリリースされたばかりだ。7月に予定するパブリックベータ版に対する一般ユーザーのフィードバックを受けて、アップルは両OSの特性を最大限に活かせる改善策を積極的に採る考えだ。
iPadの入門機もモバイルPCのように使える魅力
■iPadの入門機もモバイルPCのように使える魅力
筆者は今回のWWDCの取材を通して、アップルが新しいOSのデザインと機能を通じて、各デバイスの独立した強みを維持しながら一貫したシームレスなユーザー体験を積極的に模索する意気込みを肌で感じた。特にiPadOSとmacOSにおいては、その姿勢を強く打ち出している。無論、アップルは商売上では「iPadOS 26とiPadがあれば、もうMacBookはいらない」とは言えないだろう。だが、実際には高性能なモバイルPCの代わりとして、iPadシリーズの中で最も安価な「A16チップ搭載のiPad」の活用を検討するユーザーは増えるだろう。この組み合わせは「ひざ打ち」キータイピングができないので、モバイルワークスタイルが主流の方はMagic Keyboardが使えるiPadを選んだ方が良い……とか、筆者の見解に基づくアドバイスを送ることもできるが、それはまた別の機会に譲ろうと思う。
日本国内で実施されているさまざまな調査の結果を見る限り、近年のタブレット市場ではアップルのiPadシリーズが圧倒的な優勢を保っている。新しいiPadOS 26は、iPadのポジションをより盤石なものにするだろう。一方で、Liquid GlassデザインをiPhone、iPadと共有するMacが、日本国内のスマホ市場で6割を超えるシェアを獲得しているとされるiPhoneのユーザーに好まれる傾向もさらに顕在化するかもしれない。
アップルは2023年のWWDCで空間コンピューティングデバイスの「Apple Vision Pro」を発表し、続く2024年のWWDCは独自の生成モデルによるパーソナルインテリジェンスシステム「Apple Intelligence」で沸いた。今年のWWDC 25の発表は穏やかに見えるかもしれないが、アップルによる「OS改革」は、7月に予定するベータ版のリリース、そして秋以降の正式リリースを経て、アップルによるエコシステムの内外に大きなインパクトをもたらすことになりそうだ。
【Mac不要の時代へ突入】ついに!iPadが世界を変える!!iPadOS 26を徹底解説するぞぉぉぉぉぉ!!!【WWDC 2025】