スタッドレスを買うなら「インチダウン」して安いのを……って大丈夫? 結論「インチダウンにはほぼメリットしかない」
スタッドレスタイヤはなぜインチダウンしたサイズを選ぶのか
夏も近づいてきたころなので、冬の間使っていたスタッドレスタイヤを物置やガレージの奥にしまったころだろう。そのスタッドレスタイヤだが、購入するときに夏タイヤよりも小さいサイズ、具体的にはインチダウンをすすめられた人も多いのではないだろうか。
タイヤは一般的にロープロファイルのほうが高価で、ホイールもサイズが大きくなるぶん、値段が高い。おまけにタイヤの交換工賃も、ホイールのインチに比例して、大径ホイールは高いし、小径ホイールだと安い。
つまり、コストだけ考えるのなら、インチダウンしたほうが断然お得というわけだ。
だけど、性能面はぶっちゃけどうなるのか?
通常、ワイドタイヤ&ワイドホイールほどグリップ力が高いイメージをもつ人が多いので、インチダウンすると、ドライ路面よりシビアな氷雪路でのグリップがマイナスになる……もしそうであれば、さすがにそれは選びたくないとは多くの人が思うところだろう。
では実際のところ、インチダウンしても性能には影響はないのだろうか?
大前提から確認しておくと、そもそもタイヤの接地面積はタイヤにかかる荷重と空気圧が同じなら、ハイプロファイルタイヤでも、ロープロファイルタイヤでも変わらない。
したがって、インチダウンしてタイヤの幅が狭くなっても、接地面積そのものは、タイヤ1本あたりおおよそハガキ1枚分のままで、それが縦長になるか、横長になるかの違いしかないのだ(接地面積はタイヤの形状よりも、空気圧で左右される)。
ロープロファイルタイヤは、接地幅は広いが接地長は短く、扁平率の高いタイヤは接地幅こそ狭いが接地長が長い。つまり、総合的に見ると接地面積にはほとんど影響はない。また、細いタイヤのほうが接地面圧が高い……という説も基本的に間違い。
よくいわれるエアボリュームも、インチアップ前とインチアップ後でも変わらない。変わるのは、サイドウォールの剛性(張力剛性)で、これはサイドウォールの形状が短く丸いほど低くなる。
インチダウンによるメリット&デメリット
つまり、一般的なイメージとは反対に、原理的には超扁平タイヤほど、サイドウォールの剛性が低く、乗り心地がよく、操作に対する反応は鈍い(実際は、超扁平タイヤほどサイドウォールに補強を入れまくっているので、コーナリングパワーは大きく、乗り心地が悪い)。
タイヤはたわんだほうがグリップ力を発揮しやすいので、ハイトがあるほうがグリップ的には有利。つまり、インチダウンをして純正同等サイズの外径にしたほうが、グリップ力を出しやすいということになる。
おまけにインチダウンをすると、タイヤとホイールの重量が軽くなり、いわゆるバネ下重量が軽減されるので、乗り心地と接地性がよくなり、燃費向上にもひと役買う。また、タイヤの幅が狭いほうが、轍の影響も受けづらくなるので、ハンドルもとられにくくなり走りやすいはず。
と、このように性能だけ見れば、インチダウンにはデメリットどころかメリットしかない。
ではデメリットはないのか?
結露いうと、ルックス的に物足りなくなること。あとは面内剛性が下がることが挙げられる。
一方で幅の太いタイヤは、タイヤのベルトが広いので、平面的なねじり力が加わってもゆがみにくく、スリップアングルが付いたとき、CP(コーナリングパワー)やCF(コーナリングフォース)が高くなる。
しかし、これはドライ路面でスポーツ走行でもしない限りほぼ影響しない。
というわけで、見た目さえ気にしなければ、先述のとおり、スタッドレスタイヤのインチダウンはメリットしかないという結論になるわけだ。
もっとも、インチダウンするにしても限度はあるので、メーカーの標準装着タイヤのうち、同じ車種のなかでもっとも小さいサイズまでにしておくのが肝心。もちろん直径は変えず、ロードインデックスも純正以上をキープするのは基本だ(グレードによってはブレーキローターサイズ的に履けない場合もある)。
インチダウンしてコストが浮いたぶんは、タイヤ銘柄にこだわって、信頼できるメーカーの信頼できる製品を選び、4年程度の使用でどんどん新しいタイヤに履き替えることを優先しよう。
スタッドレスタイヤって何?
スパイクタイヤからスタッドレスタイヤへ
スタッドレスタイヤとは、「スタッド=鋲(びょう)」が「レス=ない」タイヤということです。
以前は、タイヤに鋲のついたスパイクタイヤが主流でした。 しかし、道路への影響や、路面を削りながら走ることによる粉塵などから日本では使用されなくなりました。 現在では、鋲がないスタッドレスタイヤが主流となり、様々な技術によって日々進化し、より冬道を安全にする工夫がなされています。
ダンロップは、スタッドレスにも独自の技術を用い、ドライバーと同乗者の安全を守る為、より優れた走行性能、制動・グリップ性能を持つスタッドレスタイヤを開発しています。