AIに仕事を奪わせたMicrosoft、エンジニアと管理職がリストラ対象
2025年5月13日、マイクロソフトは全社で約6,000人の従業員削減策を発表した。これはマイクロソフトの全従業員22万8,000人の3%弱に相当する。2023年に1万人の削減をおこなって以来、最大規模となる見込み。
今回は、AIデータセンターに800億ドル(約12兆6000億円)の投資を進める中のリストラであり、中でも、エンジニアや管理職層などの人材をカットするという発表に驚いた。AIを推進するビッグテックであるMicrosoftがなぜ? AI開発におけるソフトウェアエンジニアや管理職を解雇するのか?
この人員削減では、製品開発を担うソフトウェアエンジニアが主な対象となり、ワシントン州(マイクロソフト本社所在地)の削減対象従業員約2,000人のうち、ソフトウェアエンジニアリング職が40%強を占め、職種別で最多となった。
また、プロダクトマネジメント職(17%)や技術系プロジェクト管理職(30%)も重点対象となり、これら2職種だけでワシントン州で約600人が削減対象となっている。
マイクロソフトはクラウドコンピューティングサービス「Azure(アジュール)」で予想を上回る成長を達成する一方、AIインフラの拡張コストが収益性を圧迫している。クラウド事業のマージンは1─3月期には69%と、前年同期の72%から縮小した。
今回の削減は、人工知能(AI)サービスやクラウドコンピューティングサービス「Azure」を支えるデータセンターへの巨額投資費用がかさむ中で、コスト抑制の圧力がかかっていた状況で行われたという。
今回の人員調整は、リソースを最適化し、急成長するAIプラットフォームへの継続的な投資資金を確保するためのステップでもある。AI中心の戦略を推進するためのAI投資でもあるが、AI投資をするためにAI人材をカットする点に疑問がどうしても残る。
■コードの30%はAIが書いているという2025年の現状が答えだ
Microsoftは、OpenAIの最大投資をする企業であり、世界を牽引するOpenAIの技術については、どこよりも早くアクセスできテストできる環境にある。
サティア・ナデラCEOは、同社の一部プロジェクトでは最大30%のコードがAIによって生成されていることを明らかにしている。
Googleのサンダー・ピチャイCEOは25%以上がAI(2024年)、リクルートもコードの30%はAIが書いていると証言している。
単純な作業の仕事は、AIに奪われる…と言われ続けてきたが、実際には、単純作業ほど、物理社会でヒト型汎用ロボットが普及し、法律や社会も順応していかなければならず、まだ年月にゆとりがある。
しかしAIの進化、特にコーディングなどの機能は、半導体の製造と同様の進化が見られ、もはや人間が手作業でするレベルではなくなっている。コードもプログラマーが手打ちする時代ではなくなってきているからだ。
筆者などでもノンコードのプログラミングが日夜自分で楽しめる環境がそろってきている。
さらに、営業職や事務職よりも、管理職やプロダクト技術・管理などの、中間管理職のリストラが今回の特徴だ。しかも、Linkedinなどの子会社にも適応されている。
AIが仕事を奪うのは下流の仕事ではなく、中流の管理職やプラグラマーだったということを象徴しているようだ。そのうち、下流、上流と侵食しはじめるのは時間の問題だ。企業が、利益の追求を目的とすると、AIによる業務効率化はどこまでも進むだろう。
マイクロソフトは今回のレイオフの目的は管理職層のフラット化だと説明しているが、これがどの程度進んでいるかは明らかでない。ワシントン州では削減人員の約17%が管理職であり、米雇用機会均等委員会(EEOC)に提出された報告書によると、これは2023年末時点の同社全体の管理職比率とほぼ同水準だ。
なによりも、マイクロソフトの全従業員22万8,000人の3%弱のリストラだが、ワシントン州のシアトル本社の17%は同社全体の比率ということは、再現性が極めて高いだろう。このリストラの采配で効果がでるのであれば、さらにリストラは進むと考えられる。
単純に比率が同じでフェルミ推定すると、22万8,000人の17パーセント単純に計算すると、3万8,760人の管理職のリストラの可能性も考えられる。
2023年の1万人解雇も、一時は退職金などのコストが発生するが、長い目で見ると収益に対するインパクトが高くなっている。人的資本が固定費の中で一番高いからだ。
もはや、AIサーバーなどのインフラ固定費を維持しつつ、営業利益を高めるためには、プログラマーの本質が、『コードを書く人から、コード指示を考える人』へと移行し、管理業務はほぼAIという『人工知能時代の現実』が浮き彫りになってくるのではないだろうか?
そして、今回のリストラは、AIの進化とともに進むので、プログラマーがコードを書く機会は減ることはあれど、増えることはないだろう。
AIが書くコードが30%ということは、数年で、50%から70%と発達し、もう人間がコードを書くという作業は今後数年でなくなってしまうのかもしれない。
プログラムは書くのではなく、プログラムは指示を考えるという時代がやってきた。