メルセデス・ベンツ、人気車種に価格を抑えた「日本独自」の企画が登場。気になる特徴は？
モータージャーナリストの小川フミオさんが、世界の名車を解説します。かつての名車だけでなく、今注目のEV・電気自動車や発売間近の車の試乗体験も。クルマ好きの皆さんすべてにおススメの連載です。
人気の車種 日本独自の企画が登場
メルセデス・ベンツの人気車種「GLC 220 d 4マチック」シリーズに、2025年3月「Core（コア）」というラインが加わった。特徴は「戦略的価格」と日本法人。従来のモデルより60万円近く安い。
私は「GLC 220 d 4マチック・コア」というモデルをドライブした。マイルドハイブリッド化された2リッター4気筒ディーゼルエンジン搭載車で、印象はパワフル。ステアリングホイールを切ったときの操縦性も高く、運転しての印象がよい。
「コア」の名は「価格はやや抑えつつ重要な機能をすべて盛り込んだコアモデルゆえ」とはメルセデス・ベンツ日本の担当者による説明。日本独自の企画だそう。
ベースは、2023年発売のGLC 220 d 4マチックで、機能的なSUV（今回のモデル）と、スタイリッシュなクーペの2車型が設定されている。変更点としては、車体色を3色に限定、室内色をブラックに限定（ただし「AMGライン」をえらぶと2色）、ダッシュボードとドアのトリム材を変更、オーディオの簡略化、さらにオプション数の簡略化、があげられる。
「コア」になるパワートレインに変更はない。145kWの最高出力と440Nmの最大トルクを発生する1992cc4気筒ディーゼルエンジン、9段オートマチック変速機、前後輪で45対55のトルク配分をもつ全輪駆動システムは、標準モデルとおなじ。
GLCは、メルセデス・ベンツのラインアップにおいてSUVを意味する「GL」シリーズに連なるモデル。「GLA」「GLB」「GLC」（SUVとクーペ）、「GLE」（同）、それに「GLS」があり、さらに高性能のAMGモデルが設定されている。
4415mmの全長と2730mmのホイールベースのGLAも機能性の高いパッケージをもっているけれど、全長4720mmでホイールベース2890mmのGLCのメリットのひとつは、室内空間。リアシートも使うユーザーにとって、利便性が高い。走りの質も同様。ドライブしての楽しさはあきらかに上なのだ。
明確な開発コンセプト感じる バランスのよさ
GLC 220 d 4マチック・コアに乗って、いいなあ、と思ったのは、まず車体の剛性感。びしっとしている印象だ。加えて、マイルドハイブリッド化されたディーゼルエンジンと、9段オートマチックの組み合わせとその調整がとてもよい。つねにパワフルで、どこからでも加速してくれる。
乗ってつくづく思うのは、欧州のメーカーのエンジン開発力はまったく鈍っていないということ。ガソリンエンジンだと1リッターから1.5リッターぐらいで、むかしの2リッターを超えるぐらいのドライブ感が得られるように、この1992ccディーゼルエンジンも感心させられた。
アクセルペダルをほとんど踏まなくても、ぐいぐいと加速していくし、回転を上げていったときのフィーリングもかなりよい。音も同様で、私ははじめていい音のディーゼルエンジンと出会ったと感心。
高速では快適だし、ワインディングロードを走るのもたのしい。GLC 220 d 4マチックをどんなクルマにしたいか、開発者がしっかりとコンセプトを持っていたから、バランスのよいクルマに仕上がったんだろうと感じられる。セダンに通じる、よい操縦感覚だ。
走行中はしずかで、タイヤが路面とこすれてたてるタイヤノイズや、床下からのロードノイズもほぼ意識されない。ウィンドーまわりの風切り音が耳ざわりと思ったこともなかった。
標準のGLC 220 d 4マチックが876万円。今回のGLC 220 d 4マチック・コアは819万円。たしかに価格差は小さくないが、800万円台のクルマを買えるひとが、コアのほうに心が動くか。私はまったく分からないのだけれど、メルセデス・ベンツ日本の担当者は「いまはクルマの価格が上がっているので、これは（ユーザーに）ひびくはずです」と言っている。
クルマの出来はよいので、あとは自分の好みに合わせて、選択肢が増えたと思えばいいのかもしれない。
【スペックス】
Mercedes-Benz GLC 220 d 4MATIC Core
全長×全幅×全高：4720×1890×1640mm
ホイールベース：2890mm
1992cc4気筒ディーゼル＋マイルドハイブリッド 全輪駆動
最高出力：エンジン145kW＋モーター17kW
最大トルク：エンジン440Nm＋モーター205Nm
乗車定員：5名
燃費：18.1km@l（WLTC）
価格：819万円
問い合わせ：メルセデス・ベンツ日本
