≪退職代行は大迷惑!≫人事部の本音に納得の理由 中途採用時には「今後は利用したか調べることにする」の声が多数

≪退職代行は大迷惑!≫人事部の本音に納得の理由 中途採用時には「今後は利用したか調べることにする」の声が多数

「大迷惑です。とにかく大迷惑の一言です」と吐き捨てるのは、退職代行から従業員の退職届を受け取った大手金融機関の人事担当者です。今回は、退職代行についての人事部門の受け止めや対応を見てみましょう。

■退職代行は本当に流行しているの? 

 今回、大手企業の人事部門関係者にアンケート調査を依頼し、48社から回答がありました。48社中、41社で「退職代行を利用した退職者がいる」ということでした。

 「昨年、新入社員が入社後3カ月で退職代行を利用して辞めて、『人事部はいったい何をやっているんだ!』と社内で大問題になりました。今のところその1件だけですが、今後は増えるんでしょうね。我々人事部は、戦々恐々としています」(メディア)

 「大卒の総合職では、そういう非常識な辞め方をする社員はいません。ただ、高卒のオペレーターやパート社員では、ごくまれに退職代行を利用するケースもあります」(精密機械)

 ここで、世間で退職代行が大きな話題を呼んでいることに、「実態とかなり異なるのでは?」と疑問を投げかける回答者が複数いました。

 「過去に1人だけ退職代行を利用して辞めた従業員がいます。数千人の従業員がいてたった1人ですよ。あたかも退職代行が大流行しているかのような最近のメディアの報道には、違和感を覚えます」(エネルギー)

 「従業員が1万人近い当社で、利用はまだゼロ。ところが知り合いの医師は、従業員100名足らずの病院ですが、『去年・今年と2回も退職代行を食らっちゃったよ』と言っていました。すべての企業というわけではなく、特定の企業や業種でよく利用されているのではないでしょうか」(商社)

なお、東京商工リサーチが2024年6月に発表したアンケート調査では、全5149社中、約1割の会社で利用があったという結果でした。

 では、退職代行を通して従業員から退職の意思表示をされたら、人事部はどう受け止めるのでしょうか。まず、冒頭のコメントのように、多くの回答者が「大迷惑」とこぼしていました。

「本人は退職してスッキリでしょうが、こちらはその後も、給与・ボーナスの精算、貸与物の返却、社内手続きなどがあり、本人とやり取りをする必要があります。ところが、退職した従業員とは連絡が取れず、退職代行業者も知らん顔。事後処理が滞り、大迷惑でした」(金融機関)

 「営業所にいた若手社員が退職代行を使って辞めて、音信不通になりました。在職時の顧客や後任の営業担当者から連絡を取りたいと人事部に依頼され、我々としては対応のしようがなく、半年にわたってすったもんだしました」(住宅販売)

 なお、退職代行という行為は合法ですし、会社と利用者の間に入って綿密にコミュニケーションを取ってくれる業者もあるようです。「とくに問題ありませんでした」(物流)、「入社数カ月で辞めるなら、普通の退職と変わりありません」(食品)という意見も少数ありました。

■会社側にも反省するべき点がある

 退職代行を利用して辞めた元従業員に対し、人事担当者はどういう印象を持っているでしょうか。一部に「本人にはいろいろと事情があるのでしょう。悪い印象はありません」(素材)という感想もありましたが、厳しい言葉が多く聞かれました。

 「お客様や関係者の迷惑を省みず突然行方をくらますって、社会人としていかがなものでしょうか。たとえ新人であっても、意思表示くらいは自分でちゃんとするべきで、擁護の余地がないと思います」(電機)

 「退職代行を使うのは、『私は礼儀も常識もなく、最低限のコミュニケーションもできません』と宣言しているようなもの。呆れると同時に、その後の人生がどうなるのか、ちょっと心配してしまいます」(外食)

 ただ、ヒアリングでお話しした人事担当者は、怒り心頭という感じではなく、淡々とした表情でした。さらに、退職代行の利用を生む会社側の問題点を率直に反省していました。

 「若手が上司に相談せずいきなり辞めるというのは、明らかに職場のコミュニケーションに問題があります。各職場には、辞めた従業員を非難するのではなく、パワハラなど職場運営に問題がないかを点検するようお願いしています」(小売り)

 「経営陣や(退職者がいた)職場から『どうしてあんなヤツを採ったんだ』と叱責されたら、返す言葉がありません。近年、人手不足を受けて採用基準を緩めており、新人のレベルの低下が顕著です。採用のあり方を見直す警鐘だと受け止めています」(サービス)

退職代行を利用した退職者が会社に戻ってくることは、まずありません。退職代行の利用という結果を嘆くよりも、その原因となっている自社の問題点に目を向けるほうが得策でしょう。

■退職代行を利用したら転職で不利になる

 ところで、人事担当者は、中途採用をする際、応募者の前職の退職の経緯を気にします。多くの回答者が「もし退職代行を利用していたとわかったら、絶対に採用しません」(輸送機・小売り・金融機関など)と断言していました。

 「中途採用で、退職代行を利用した経験があるという応募者が過去にいましたか?」と尋ねたところ、48社中「いた」という回答はゼロでした。さすがに利用した経験があったとしても、正直に打ち明ける応募者はいないと思われます。

 では、人事担当者は、応募者が前職を短期間で退職したという場合、その経緯や退職代行の利用などを調べるのでしょうか。この点については、回答者で対応が分かれました。

 「昔は新卒でも中途でも、内定を出す前に興信所を使うなど身辺調査をしていました。しかし、最近は他社に取られないうちに大急ぎで内定を出す必要があり、調べなくなっています。応募者から『前の会社とは円満に退職しました』と言われたら、信じるしかありません」(機械)

 「普通は面倒なので調べませんが、『おや?』と引っかかるところがある応募者については、調べるようにしています。人事担当者同士って会社・業界の垣根を越えてつながっているので、割と簡単に調べられます。前職の人事担当者に直接確認することもありますよ」(商社)

■「今後はちゃんと調べることにする」

 ということで、人事担当者が応募者の退職の経緯や退職代行の利用の有無を調べるかどうかは、会社によってまちまちで、実態は不確かです。

 ただ、退職代行ビジネスが立ち上がったのは最近のことで、第二新卒などの転職市場で利用経験者が増えるのはこれから。「今後はちゃんと調べる必要がありそうです」(素材・エネルギーなど)という声が多数ありました。

 退職を検討している従業員は、転職の際に退職代行の利用がばれて不利益を被るリスクを考慮すると、やむをえない事情がない限り、できるだけ利用しないほうが無難でしょう。

 最後に、複数の回答者から筆者に「是非とも記事に書いてほしい」と言われたことがあります。それは、退職代行ビジネスを肯定的に捉えるメディアや社会の風潮、また行政の無作為への憤りです。

■本人にとってもプラスにならない

 「ブラック企業が存在する以上は必要なサービスだ、などと退職代行を肯定するメディアがあるようですが、納得できません。関係者は迷惑を被るし、退職する本人にとっても決してプラスにならないと思います」(小売り)

 「退職代行って、いわゆる情弱ビジネスですよね。さすがに業者の活動を規制できないでしょうが、厚生労働省は、若い人たちに『安易に利用すると、その後の人生に大きな不利益があります』と注意喚起くらいはするべきだと思います」(建設)

 退職代行の利用が今後も増えることは確実。この状況で企業がどう対応するべきなのか、当面は手さぐりの状態が続きそうです。

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