ホンダら、世界初の「量子状態を読み出す新技術」

本田技術研究所と量子コンピュータのアルゴリズム・ソフトウェアの研究開発を行なうQuemixは、世界初の「量子状態を読み出す新技術」を開発した。

ホンダは2050年に全企業活動を通じたカーボンニュートラル実現を目指すため、その一環としてエネルギー部材の研究に取り組んでいる。部材の研究には材料分析が必要になるが、従来のコンピュータでは膨大なリソースが必要になることから、高速な計算を可能にする量子コンピュータの使用が検討されている。しかし、量子コンピュータで量子状態を生み出す際、量子状態が壊れてしまうことで、読み出し回数が増加してしまい、時間がかかることが大きな課題となっていた。

今回、ホンダとQuemixは、量子状態そのものの読み出しを直接的に行なわず、量子コンピュータ内に量子状態として蓄えられたX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルデータから古典データを特徴づける強度や形状などの情報(特徴量)のみを「スキャン」する新しい量子状態読み出し技術の開発に成功。これにより、高速で効率的な量子状態読み出しが可能となり、量子コンピュータによるさまざまなシミュレーション領域への適用が期待できる。

両社は、量子コンピュータの実機を使用した、XAFS計算にも成功。量子コンピュータの実機を使用し、論理量子ビット上での材料開発に向けた実用計算に成功したのは世界初としている。

XAFS計算は、量子コンピュータと従来のコンピュータを組み合わせ、各々のコンピュータの長所を生かした計算を行なうことで、量子コンピュータの実機上で実現したもの。量子コンピュータの実機使用に向け、XAFS計算アルゴリズムの構築とともに、論理量子ビットとゲート演算回数を削減する手法を開発。量子アルゴリズムの開発だけでなく、将来の量子コンピュータ実機活用に向けた、ビット数削減・ゲート演算削減技術の蓄積も達成している。今後のハードウエアの開発と論理量子ビット数の増加が実現されることで、複雑な実用計算への適用が期待される。

ホンダは、これらの研究開発を進めることで電池部材の高性能化、長寿命化などに貢献する材料の研究・探索に関する技術構築に取り組む方針。