石破総理「消費税の減税しない」方針固める 野党からは「物価高に無策だ」と批判 夏の参院選で公約に減税掲げる公明党と歩調合うか
物価高対策などとして、与野党から声があがる消費税の減税について、石破総理は実施しない意向を固めたことが分かりました。野党は「物価高対策に無策だ」などと批判しています。
立憲民主党 野田佳彦 代表
「減税もやらない、一律給付も消えましたよね。じゃあ、物価高対策は無策かということですね。無策でいいのかということは、問われるんじゃないでしょうか」
立憲民主党の野田代表がこう追及するのは、政府の物価高対策です。
複数の政府・与党関係者への取材で、石破総理が「消費税の減税」をおこなわない方針を固めたことが分かりました。
きのう夜、都内の日本料理店でおこなわれた自民党の森山幹事長との会談でも、消費税の減税をおこなわない方針について確認したものとみられます。
消費税の減税が見送られる見通しとなったことに街の人は…
「結構ショック、減税はして欲しい」
「日々の食費が抑えたいけど、抑えられないので、何とかして欲しいです」
「(消費税を減税しないことに)僕は賛成。消費税って、お金持ちの人ほど有利、減税幅が大きくなるので。あまり良い案とは、僕は思わないですね」
「米(の値段)がすごく上がっているのも、ちゃんと行き渡らないからですよね。だから、そういうものをちゃんと根本的に改善したら、かなり変わるのかなっていう感じはしますけど」
なぜ、石破総理は消費税の減税をおこなわない意向を固めたのでしょうか。
石破総理は周囲に対し…
石破総理
「消費税の減税には、プラスとマイナスの面がある。やるべき政策なのか」
財源やシステム改修などの課題を上げるほか、物価高の影響が大きい低所得者への支援を厚くするべきとの考えを示す石破総理ですが、いまだに与党内からも消費税の減税を求める声は上がり続けています。
夏の参院選の公約に減税を掲げている公明党の斉藤代表は、きょう…
公明党 斉藤鉄夫 代表
「経済対策が必要だと、その骨格は減税であり、その考え方は全く変わっておりません」
自民党内からも参議院を中心に減税を求める声が出ていて、党の税制調査会で意見の集約を図るなど、石破総理は今後、与党内の調整を進める方針です。
立民 食料品の消費税0%案 原則1年 参院選公約に 党内に不満も
物価高対策をめぐって立憲民主党は、食料品の消費税の税率を原則1年間に限って0%に引き下げる案を夏の参議院選挙の公約に盛り込むことを決めました。
ただ、財源など具体的な制度設計はこれからで、党内からは「減税を訴えるほかの野党と区別がつかず中途半端だ」といった不満も出ています。
立憲民主党は、食料品の消費税の税率を原則1年間に限って0%に引き下げ、その後、給付や所得税の控除を行う「給付付き税額控除」に移行するなどとした案を、夏の参議院選挙の公約に盛り込むことを決めました。
江田元代表代行は「物価高に苦しむ国民を少しでも守るための野田代表らしい決断で、多としたい」と評価しました。
これまで党内からは、枝野最高顧問が「『減税ポピュリズム』に走りたいなら別の党を作ってほしい」と述べるなど、減税に慎重な意見も出ていました。
野田氏は記者会見で「今を生きる世代が困窮を極め、食べるものに困っている現実にも目を向けなければいけないという中での判断だ。決してポピュリズムではない。税率を戻すことは責任を持ってやっていきたい」と強調しました。
ただ、財源など具体的な制度設計はこれからで、重徳政務調査会長を中心に検討を急ぎ、来月前半には示したい考えです。
党内からは、日本維新の会や国民民主党などほかの野党も減税を訴えていることから「財源や短期的な対策もパッケージとして示さなければほかの野党と区別がつかず中途半端だ」といった不満も出ています。
一方、自民党の森山幹事長は「政治家なので選挙を迎えるといろいろな思いがあることは理解できるが、長期的に見て本当に国や納税者のためになるのかを、真剣に考えなければならない」と述べました。
自民党の参議院側は、消費税の税率引き下げを求めていますが、かわりの財源を示さなければ政権与党としての信頼を失うとして、否定的な声も根強く、今後本格化する参議院選挙の公約の検討でも減税の取り扱いが焦点の1つとなる見通しです。
「消費税の軽減税率を0%に」 69人の自民議員が賛同し提言(2025年5月8日)
自民党の積極財政派の議員らが、消費税の軽減税率を恒久的に0%に引き下げるよう求める提言をまとめ、森山幹事長に申し入れました。
自民党 中村裕之衆院議員
「トランプ関税がありお米の値段も高い状況が続いてきたということで、今回、消費税の軽減税率を8%から0%に引き下げると」
食料品などが対象になっている軽減税率を0%に引き下げた場合、税収の不足分は5兆円で、国債の発行で対応する考えです。
また消費税の標準税率のあり方についても検討するよう求めました。
提言には69人の議員が賛同したということです。
今後、石破総理大臣にも申し入れる予定です。
自民党は今後、党の税制調査会で消費税に関する議論を始めることにしています。
ただ、森山幹事長はじめ党幹部は減税には慎重な考えです。
【激論】与野党が「消費税減税」大合唱…石破首相のホンネは?ジャーナリスト/アナリスト/杉村太蔵元議員ら徹底討論【サン!シャインニュース】
夏に行われる参院選を前に、与野党から聞こえてくる「消費税減税」の声。
今回は、徹底討論第2弾。
「消費税減税は、ありかなしか?」
消費税の歴史と創設の背景
1989年(平成元年)4月1日、日本ではじめて消費税が税率3%で導入されました。今やあたり前のように存在している消費税ですが、30年前の導入当時、世間は大変な騒ぎとなっていたことをご存知でしょうか。
1.日本における消費税の発祥
1989年(平成元年)4月1日、日本ではじめて消費税が導入されました。
導入されてから約30年、平成の歴史とともに歩み続けた消費税は、今の10代・20代の若い方々にとっては物心ついた頃から存在していた税金であり、無い時代が想像できないくらい身近なものとなっています。今やあたり前のように存在している消費税ですが、30年前の導入当時、世間は大変な騒ぎとなっていたことをご存知でしょうか。
消費税は、一般市民にとても身近な「消費」という行動に課せられる新たな税であり、毎日の暮らしを直撃するであろうその税金に対する拒否反応は凄まじく、各地で反対運動なども起こりました。テレビや新聞のニュースでも毎日のように消費税のことが取り上げられるなど、消費税に対する当時の国民の関心は相当なものでした。
その後、国民の反発を受けながらも、1997年に5%、2014年に8%と段階的に引き上げられ、2019年10月には10%(飲食料品や新聞は軽減税率適用で8%のまま)まで引き上げられました。
では、このような大反発を受けながらも国が消費税の導入を推進した背景にはどのような理由があるのでしょうか。
2.税制全体の公平性の確保
時代は戦後に遡ります。当時の日本の税制は、昭和25年のシャウプ勧告に基づいた所得税中心の税体系となっていました。しかし、戦後の復興期から高度成長期にかけて、日本の経済・社会は著しく変化し、税制についても様々なゆがみが目立ちはじめました。とりわけ給与所得に税負担が偏ってきたことにより、主な納税者である現役世代の重税感・不公平感が高まっていました。
また、わたしたちの国のように豊かで安全な暮らしを誰もが享受している社会においては、それを支えるための基本的な税負担は、「国民ができる限り幅広く公平に分かち合うことが望ましい」との考えも広まりはじめました。
3.個別間接税の問題点の解決
消費税は税を納める人と税を負担する人が異なる「間接税」と呼ばれる税です。
間接税とは
税を納める人と税を負担する人が同じである税金を「直接税」といいます。(法人税や所得税など)一方、税を納める人と税を負担する人が異なる税金を「間接税」といいます。(消費税や酒税など)
消費税導入前の間接税は、特定の物品やサービスに課税する個別間接税制度が中心で、物品税という贅沢品に対して税金をかける税制がありました。
物品税とは
物品ごとに必需品か贅沢品かを特定し、贅沢品にだけ課税する仕組みです。
しかし、所得水準の上昇や国民の価値観の多様化が進むにつれ、贅沢品として課税すべき物品やサービスを客観的基準で判断することが事実上困難となりました。また、お金を使う対象が物品(いわゆるモノ)からサービス(いわゆるコト)へと比重が変化する中で、物品とサービスとの間の負担の不均衡(物品ばかりが課税されている)という問題が生じていました。
4.高齢化社会への対応・消費税の導入
以上のようなことから、
① 税制全体としての負担の公平を高めるうえで間接税が果たすべき役割を十分に発揮させること
② 個別間接税制度が直面している問題を根本的に解決すること
これらを主な目的として、「消費全体に広く薄く負担を求める消費税の創設が必要である」と考えられたのです。
間接税の代表格である消費税
先に述べたように消費税は、消費者が商品などを買う際に負担した税金を、消費税を受け取ったお店などの事業者が消費者の代わりに納める税金です。
ではなぜ消費税は間接税の方式なのでしょうか。それは、もし直接税の方式にしてしまうと、消費者は購入したすべての商品やサービスなどを記録しておいて、それに消費税率を掛けた金額を毎年納めるようにしなければなりません。
国民に課せられる事務負担や脱税行為抑止の観点などから考えても消費税が間接税であることは理にかなっていると言えます。
消費税の創設が叫ばれたもうひとつの大きな理由として、高齢化社会への対応という問題がありました。
日本は、世界の主要国においても例をみない早さで人口の高齢化が進んでおり、年金、医療、福祉のための財源確保が喫緊の課題となっていました。従来のような現役世代(給与所得等)に頼った税制では、今後、働き手の税負担も限界に達するほか、納税者の重税感や不公平感が高まり、事業意欲や勤労意欲をも阻害することにもなりかねないことが懸念されました。
こうした社会問題に対する懸念も追い風となり、1988年(昭和63年)12月30日に消費税法が施行され、1989年(平成元年)4月1日から適用されることになったのです(消費税導入に伴い物品税は廃止)。