「もしもーし?」突然スマホが通信不能に…東京や大阪で多発する「偽基地局」詐欺、ターゲットは誰なのか

「もしもーし?」突然スマホが通信不能に…東京や大阪で多発する「偽基地局」詐欺、ターゲットは誰なのか

 「あれ?圏外になった」「もしもーし?」。最近、渋谷や池袋、大阪心斎橋などの繁華街で、突然スマホが使えなくなる不可解な現象が多発している。画面に「No Service」「CMCC」などと表示され、通信が途絶えてしまう……この謎の現象を引き起こしているのは、妨害電波を発信する「偽基地局」。クルマに機材を積んだニセモノの基地局は、何のために都会を走り回っているのか。もしかすると、あなたのスマホも巻き添えになっているかも?(ITライター 大和 哲)

● 偽基地局が都市部で発生、スマホが突然通信不能に

 東京都内の渋谷、池袋、また大阪の難波、心斎橋などで、スマートフォンが通話不能やデータ通信障害に陥る事象が頻発している。

 具体的には、5Gや4G/LTEで通信できていた端末が突然「圏外」や「No Service」と表示され、通話中であれば会話が中断され、データ通信も停止する。また、電波表示が「4G/LTE」や「5G」から「2G」や「GSM」に切り替わり、「CMCC(China Mobile)」や「China Telecom」などの海外キャリア名が表示されることもある。

 この現象は、場所を移動するか、一定時間経過すると解消されることが多いが、同じ場所で通信が不安定になるケースも報告されている。一人だけでなく、周囲にも同様の状況を抱える人が見られ、「もしもーし」と叫ぶ姿や、スマホのデータ受信ができず困っている人がいるという。

 また、場合によっては、中国語(簡体字)で「あなたの銀聯カードが使えなくなったのでURLにアクセスしてください」というようなSMSを受信することもある。

● 移動型「偽基地局」が妨害電波を発信

 この現象の原因として、「偽基地局」が発信する妨害電波の存在が疑われている。

 X(旧Twitter)のユーザー @denpa893氏によると、電波異常の現場で駐車中の大型インバータを搭載したワゴン車を発見し、その車両からドコモの使用バンドに重なる周波数の電波が発信されていることを突き止めた。この車両が「偽基地局」として機能している可能性があるという。

 携帯電話の「基地局」とは、電波を中継するアンテナの拠点であり、スマートフォンはこれらと通信することで通話やデータ通信を行う。偽基地局は、正規の基地局を装い、スマートフォンとの通信を試みる。

 総務省は、個々の事案の対応については回答を避けているが、都心での携帯電話が通じなくなる問題の一つとして、違法電波による「干渉」があることを認めている。また、主要携帯事業者4社も、妨害電波について、以下のようにコメントしている。

NTTドコモ:妨害電波による被害状況を認知し、関係各所と連携して対応中。

KDDI:状況を注視し、情報収集・調査を行い監視。

ソフトバンク:疑わしい事象を注視し、関係各所と連携して情報収集。

楽天モバイル:発生を注視し、今後も監視。

● 通信事業者の電波を妨害し、通信を乗っ取り、フィッシングメールを送信

 偽基地局は車載型で、ツーリングワゴン車の荷台に収まるサイズだ。通信不良を引き起こしたいエリアに出向いて、妨害電波を発信する。

 この移動基地局は、日本の携帯電話事業者の信号を妨害し、近隣の4G/LTE対応携帯電話との通信を試みる。多くの5G携帯電話も初期通信はLTEを使用するため、事実上そのあたりにあるすべてのスマートフォンが影響を受ける。

 通信が途絶すると、偽基地局は端末に2G(GSM方式)への通信方式のダウングレードを試みさせ、「中国移動(チャイナモバイル)」や「中国聯合(チャイナユニコム)」といった中国の携帯電話事業者を名乗るネットワークへの接続を促す。

 接続が成立すると、弱い暗号化モードで通信が行われ、偽基地局は端末に中国語(簡体字)で「あなたの銀聯カードが使えなくなりました」といった内容のSMSを送信する。このSMSはフィッシング詐欺であり、記載されたURLにアクセスすると、数万円単位での被害が発生する可能性がある。

● 「偽基地局」犯罪のターゲットは「中国人スマホユーザー」

 偽基地局の主なターゲットは、中国の携帯電話会社と契約しているスマートフォンユーザーであり、メッセージ内容も中国大陸から日本にやってきた人々を想定している。

 日本人ユーザーのスマートフォンが通じなくなる現象はその余波によるものであり、大きなとばっちりを受けていると言えよう。

 特にドコモユーザーは、妨害電波の周波数がドコモの利用帯に一致しているため、影響を受けやすい。他のキャリア(au、ソフトバンク、楽天モバイル、MVNO含む)も、通話不可やデータ通信不可になる可能性があり、安心とは言い切れない状況だ。

 この種の中国人向け「偽基地局を使ったSMSフィッシング詐欺」は、日本以外の国でも発生しており、中国公安が注意喚起の動画を公開したり、タイでは偽基地局搭載自動車の持ち主と見られる中国人が検挙される事例もある。

● 偽基地局ワゴンは、複数のナンバープレートを付け替えている

 偽基地局の行為は、明らかに電波法に違反するものであり、総務省には厳正な対応を求めたい。また、SNS上の報告によれば、偽基地局に使われている車両には複数のナンバープレートが用意されており、付け替えることで追跡を逃れようとしていると推測される。仮にナンバープレートが偽造したものでなくても、他人名義であれば不正使用にあたり、偽造ならば明白な犯罪である。ここまでくればもう、警察による捜査と摘発が求められる段階に来ていると言えるだろう。

 筆者は、この件について「中国が悪い」と一方的に決めつけるつもりはない。しかし、もしこれが事実であるならば、たとえ同胞同士の詐欺であっても、他国の地で、その国の市民にまで被害を与える形で行っていいことなのか。中国本土から来た犯罪者グループが、同じ中国人を標的にしているとはいえ、その行為によって多くの無関係な人々が被害を受けていることに、まったく良心がとがめないのか――そう問いかけたくなる。

 今後、都市部で通信不具合に直面し、「圏外」「中国キャリア名」などが表示されたり、不可解な中国語SMSが届いたりした場合は、偽基地局の存在を疑うべきかもしれない。特にその場で不自然なWebリンクに誘導されるようなメッセージを受け取ったら、絶対にアクセスしないよう、気をつけてほしい。

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