Windows 10ユーザーに決断の時が迫る、物議をかもしたWin11の新機能Recallが提供開始
決断の時が来た。マイクロソフトは、物議をかもしたWindows 11の新機能Recall(リコール)の提供開始を明らかにした。
そのなかで同社は、Windows 11への無料アップグレード対象に該当せず、セキュリティサポートを完全に失うというサイバー上の危機に直面しているWindowsユーザーに向けても、改めてアップグレードの選択肢を提示した形だ。Canalys Researchによると、その台数は2億4000万台とされる(2023年12月時点)。同社は「今後、これらのPCはセキュリティ更新プログラムや機能アップデートを受け取れなくなります」と警告し、現時点で取るべき対応策を示している。
WindowsLatestが発見したマイクロソフトの新たな警告によれば、「まだWindows 10を使っているのですか?」という問いかけに続いて「マイクロソフトは、安全なWindows 11 PC、できればCopilot+ PCを購入することを推奨しています」と述べているという。
これは大きな痛手だ。5億人のWindows 10ユーザーがWindows 11への無料アップグレードを利用できる一方で、それに該当しないユーザーは、高額なPCへの買い替えか、サポートの切れた環境でセキュリティ上のリスクを冒し続けるかを迫られている。
■Windows 11、Copilot+ PCを強く推進
マイクロソフトはこう呼びかけている。「アマゾン、Best Buy、Boulanger、コストコ、Currys、Elkjøp、Fnac、Harvey Norman、JB Hi-Fi、JD.com、MediaMarkt & SATURN、Officeworks、Sharaf DG、Walmartといった、グローバルパートナーの店舗で最新のWindows 11およびCopilot+ PCを検討してください」。投稿には各販売店のショッピングリンクまで添えられている。
さらに同社は「AIはもはや流行語ではありません。すでに76%もの消費者が難しい作業にAIを利用しています。私たちはサブスクリプション不要で、直感的かつ高速に組み込まれたAI体験を提供し、ユーザーが最大限に生産的になれるよう支援します」と述べている。
当然、まだ十分に使える非AI対応のWindows 10マシンを持つユーザーからは不満が相次いでいる。リサイクルか廃棄かという二択を迫られているのだ。WindowsLatestは「Copilot+ PCは確かに良い選択肢だ」としながらも、「しかし、セキュリティに関わるTPM 2.0というWindows 11の必須要件を満たさないだけで、完全に機能するWindows 10 PCを捨てるのは筋が通らない。しかしマイクロソフトはそうしろと言っており、選択肢はないのだ」と指摘している。
■伸び悩むCopilot
同サイトによれば「要するに、消費者は決断を下す時期だ。Windows 10のサポートは2025年10月14日に終了する予定であり、マイクロソフトは今回の新しい投稿に加えて、フルスクリーンのポップアップで注意喚起を行っている」という。では、なぜここまで強く、Copilot+ PCへの買い替えを促すのか。
XDA-Developersは「最近の報告が、このAIハードウェアの採用を促す動きの中心にあるのかもしれない。その報告によると、毎週Copilotを使っているユーザーは『わずか』2000万人で、ChatGPTの4億人とは大きくかけ離れている。しかも採用率は頭打ち状態のようだ。マイクロソフトが早急に何らかの手を打たなければ、この2000万人という数字はそのままか、あるいは減少するだけで、同社がこの技術に数十億ドル(約数千億円)を投じたことを考えると理想的なことではないだろう」と述べている。
これに対してマイクロソフトは異なる見解を示している。「初期の反応は想像を超えていました。これほど短期間で新たなカテゴリーが普及した例はありません。1月にお伝えしたように、米国のホリデーシーズンに売れた高価格帯ノートPCの15%がCopilot+ PCだったのです」。いずれにせよ、同社がさらに多くの、何百万台ものPCを販売したいと考えているのは明らかだ。
なおCopilot+ PCに乗り換えた際には、冒頭に挙げたRecallも利用することになる。この機能は、PCでのすべての操作を記録し、最新のセキュリティアップデートを適用するよう動機付けるものだ。それは失うことのできない恐ろしいデータの宝庫だ。すでに報じられているように、この機能をオンにするユーザーへの最新の警告は「周囲に知らせておくこと」だ。ほかの人々のデータも同時に記録されることを忘れてはならない。
Windowsの「リコール」機能が徐々に解禁。この機能を制御するには?
セキュリティ面はまだ不安。
Windows 11における、PCの操作履歴が検索できる「リコール」機能。この機能は、ほとんど全ての画面がスクリーンショットされるシステムです。プライバシーを気にするならば、やはり問題が残るかも。
発表されたと思ったら撤回されたり、紆余曲折のあったリコール機能。本機能が発表されてからしばらく経ちますが、今回、どうやらこの機能が改善されて戻ってきているみたい。
Microsoft(マイクロソフト)の最新ブログによると、Windows Insiderビルド「KB5055627」において、リコール機能が段階的にベータユーザーへ展開されるとのこと。
プレビュー版の通り、この機能はほとんど全てのアプリやWebページ、ドキュメントなどを自動的にスクリーンショットします。撮影されたスクリーンショットはカタログ化され、オンデバイスのAIが内容を解析。ユーザーは、これらのスクリーンショットを検索することで、簡単に過去閲覧したページに戻れるというわけです。
「昨日見ていたページなんて覚えてないよ〜」という人には、ありがたい機能に思えるかもしれません。一見便利そうにも見えるこの機能ですが、多くの注意点があるということには留意する必要があります。
リコール機能の問題点
本機能はストレージ容量を消費し、スクリーンショットを保存します。1TB以上のSSDを持つPCだと、デフォルトの状態でも、150GBがリコール機能に割かれてしまう模様。さらに、スクリーンショットの保存期間も設定する必要があります。
そして、最も大きな懸念点は、やはりプライバシーの問題。リコール機能がプレビューされたのち、撤回された理由は、「ログインしていれば誰でも、暗号化されていないスクリーンショット履歴にアクセスできる」という重大なセキュリティ欠陥が指摘されたため。このプログラムは、銀行口座や社会保障番号など、あらゆる機密情報も平然と記録していました。
現在、リコール機能は再設計され、スクリーンショットにアクセスするにはWindows Helloによる生体認証またはPINコードによる認証が必要になっています。また、撮影の一時停止や、特定のアプリやウェブページでの撮影を除外することもできるようになりました。
とはいえ、まだまだ万全ともいえないのが実情。昨年末には、リコール機能が銀行情報を閲覧していることを認識できなかったという報告もあります。機密ページをしっかり除外できるかどうかはユーザーの手にかかっているのです。
リコールは、新しいアップデートを適用したPCを初めて起動する際に、有効にするかどうかを選択することができるようになっています。無効にしたい場合は、Windows 11のタスクバーで「Windowsの機能の有効化または無効化」と検索し、「リコール」のチェックを外しましょう。
ファイル管理や記憶に自信がないという人にとっては魅力的な機能ですが、一定のリスクがあることも把握しておいた方がいいかもしれません。
他人経由で情報が漏れる可能性
リコールの危険性について、セキュリティ意識の高いユーザーたちは警戒心を高めています。
この機能を、他のプリインストールアプリと一緒に無視することは可能ですが、デバイスに詳しくない家族が同じような対応をしているとは限りません。特にPCの知識が少ないユーザーの場合、リコールが有効になっていることすら認識していない可能性があり、意図せず他人のプライバシーを侵害するリスクもあります。セキュリティブロガーのEm氏は、
Mastodonの投稿で、以下のように指摘。
もし家族に写真や機密情報を送ったら、その情報が相手のデバイスに記録されてしまう可能性があります。しかもこちらは、記録されたことを認識できないこともあるでしょう。
Microsoftは、すべてのユーザーが高いセキュリティ意識を持っている訳ではないことを認識するべきです。この機能がデフォルトで無効にされており、ユーザーが意図的にオンにできるようなシステムであれば、ここまで問題視されることもなかったのではないでしょうか。
私は、リコール機能を使うこともあるかもしれませんが、メインPCでは使用しないつもりです。リコールは、便利な機能である一方で、十分な理解と慎重な設定が求められるものだと言えます。