トランプ関税協議 日本が持つ“3つの交渉カード”の中身 「やり過ぎた…」アメリカ側に焦りも?
“トランプ関税”をめぐる、日米の2回目の協議が行われました。出席した日本の担当大臣は手応えを語りましたが、どんな内容が議論され、日本が使える交渉カードにはどんなものがあるのでしょうか? アメリカ側が焦りを感じているという見方もあります。
そこで今回の#みんなのギモンでは、「“トランプ関税”協議でどうなった?」をテーマに解説します。
■自動車の追加関税から1か月…影響は
忽滑谷こころアナウンサー
「関税をめぐり、日本とアメリカが2回目の協議を行いました。協議はワシントンで日本時間の2日朝6時前に始まり、約2時間にわたって行われました。日本側は赤沢経済再生担当大臣、アメリカ側はベッセント財務長官が出席しています」
「日本時間の4月17日に続き、2回目の協議となりました。日本が求めるのは関税措置の見直しですが、自動車に対しては4月3日から25%の追加関税が発動しています。また、5月3日には自動車部品についても25%の追加関税が発動される見通しです」
「自動車の追加関税から1か月がたちましたが、影響はどのくらい出ているのでしょうか?」
戸田舜介・日本テレビ経済部記者(1回目の協議に同行)
「赤沢大臣が言うにはですが、自動車メーカーでは1時間ごとに日本円で1億5000万円ずつ損が出ているということです。部品もとなるとさらにダメージが大きく、だからこそ交渉が早急に進展することが求められています」
■赤沢大臣「前進することができた」
「今回の会談でも、赤沢大臣からはアメリカの関税措置について『極めて遺憾だ』と、一連の措置の見直しを強く申し入れたということです」
忽滑谷アナウンサー
「注目の2回目の協議がどうなったのか。会談後の赤沢大臣の発言です」
赤沢大臣
「今回非常に突っ込んだ話ができました。可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう、率直かつ建設的な議論を行い、前進することができた」
■為替や安全保障は?…議論の内容
直川貴博キャスター(元福島中央テレビアナウンサー)
「世界各国の中で日本はスタートを切り、注目されています。手応えがありそうな感触に思えましたが、どうですか?」
戸田記者
「同行した政府関係者の1人も、会談を終えた赤沢大臣は『晴れやかでいつもより明るい様子だった。手応えを感じていたようだった』と話していました」
忽滑谷アナウンサー
「気になる実際の議論の内容についてです。詳細はまだ明かされていませんが、日米間の貿易の拡大・非関税措置・経済安全保障面での協力について、議論をしたということです。一方で、為替や安全保障については議論にならなかったということです」
■具体的なカードでの交渉、いつから?
山崎誠アナウンサー
「今回の協議では、実際にこうしたカードが切られることはあったのですか?」
戸田記者
「具体的なカードで交渉し合うのはまだまだ先になりそうです。というのも2日朝の協議では、3日から事務レベルでの協議に入り、5月中旬以降に再び閣僚同士での協議を行うことで一致したということです」
「この意味合いを政府関係者に取材すると『今回の協議で大枠は話せただろうから、具体的な詳細をそこで詰めていくことになるだろう』と話していました」
「別の政府関係者は今回の一番の成果について『2時間以上話し、会話が成立したこと。次回も協議しましょうと決まったことだ』と語っていました」
忽滑谷アナウンサー
「赤沢大臣からは『手応えを感じた』という話がありましたが、ここから本格化という感じになりそうですね」
■首相「早いことを優先するあまり…」
森アナウンサー
「とは言え、(自動車メーカーでは)1時間で1億5000万円の損が出ているという話でした。なるべく早く決着したいと思いますが、いつぐらいにまとまるという目安はあるのですか?」
戸田記者
「石破首相は『一致点を見いだすために最大の努力をお互いにしていくということであって、時期について言及をすべきことであるとは思っておりません』と発言しています」
「『早いことを優先するあまり、国益を損なうものであってはならないというのは当然のことでございます』とも述べました」
■猶予期間を終えると大きな影響
戸田記者
「日本政府としては5月中旬以降、集中的に議論を進め、6月にも日米両首脳で合意に達することを目指したいという考えです」
忽滑谷アナウンサー
「一方、アメリカはどうでしょうか?」
戸田記者
「日本政府内には、アメリカ側が焦りを感じているという見方があります。ある政府関係者は『アメリカはやり過ぎたと思っているようだ。政策の軌道修正をしたがっている』と話しています」
「トランプ政権は自動車の他に、アメリカに入るものに対して24%の追加関税を課すとしていて、7月上旬までの90日間は猶予期間とされています。この期限が切れると日本国内にも大きな影響が出ますが、実はアメリカにもダメージはあります」
「ある(日本の)政府関係者は『期限が切れるまでに何とかしないと株価が急落する。アメリカ側はスケジュール感を持っているはずだ』と話していました」
忽滑谷アナウンサー
「日米交渉の本格化はこれから、ということになりそうです。日本の利益を守る結果にどう結びつけていくのか、注意深く見ていく必要がありそうです」
石破首相、車含む全関税見直し要求 日米協議「立場に隔たり」
石破茂首相は3日、米国から帰国した赤沢亮正経済再生担当相と首相公邸で会談し、トランプ米政権の関税措置を巡る2回目の閣僚協議の報告を受けた。
首相はこの後、記者団に「日米間には立場の隔たりがある。一致点を見いだせる状況にはない」と説明。米側が自動車や鉄鋼・アルミニウムへの関税は交渉対象外との認識を示していることに「全ての関税について協議を行っている」と述べ、一連の関税措置全ての見直しを求める考えを強調した。
首相は林芳正官房長官、岡野正敬国家安全保障局長らも交えて今後の対応を話し合った。5月中旬以降に行われる次回閣僚協議に向け、赤沢氏と林氏に対し「進展がなければいけない。どう対処するか検討、調整を迅速、緻密にやってほしい」と指示。国内対策に万全を期す考えも示した。
首相は米政権が自動車部品への25%の追加関税を発動したことに関し「残念なことだ。見直しを引き続き求めていく」と記者団に語った。
赤沢氏も記者団に「自動車、自動車部品、鉄鋼・アルミを含めた関税措置の見直しがパッケージに入らないと合意できない」と明言。「その見通しが立っていない」と述べ、粘り強く協議していく方針を強調した。