近視は怖い 「眼球は変形し眼病の温床に」 製薬会社発の眼鏡型機器が選択肢に

近視は怖い 「眼球は変形し眼病の温床に」 製薬会社発の眼鏡型機器が選択肢に

「近視を撲滅させたい」。そんな使命感を強める起業家が、博士号を持つ眼科医で窪田製薬ホールディングス(HD)の社長兼CEOを務める窪田良氏だ。窪田氏は眼病の発症リスクを高める近視を根本から解決しようと、遠くを見ている状態を光学的に再現する眼鏡型機器「Kubota Glass(クボタグラス)」を開発。スマートフォンの普及などを背景に近視の低年齢化が進む問題を周知させようと、啓発活動にも取り組む。

 目は、角膜と水晶体と網膜の距離を一定に保ち続けることで、体が成長しても見える状態を維持している。その制御機構が乱された状態が近視だ。

 その状態を改善に導く効果が期待される手段がクボタグラス。だ。窪田氏が「近視を根本的に治療したい」という思いで世に送り出した。

 近視は、室内で近くの物を見た際に網膜の後方に映像が映る頻度が高まると、網膜が後方に伸びて成長するというメカニズム。クボタグラスは物を見る仕組みを逆手にとって開発した機器で、AR(拡張現実)技術を駆使して遠くを見ているような環境を実現。映像をわざと網膜の手前に映すことで、奥に伸びた網膜を引き戻すという仕組みを取り入れた。

 鍵を握る技術の一つが、自然光のような広い波長と明るさを特徴とするマイクロLED(発光ダイオード)だ。まぶしさを感じることなく太陽光の下で遠くの景色を見ている状態を視界の中に作り出す。

 マイクロLEDの光で作った映像は十字状に切れた白っぽい円形で、白と白以外の部分が「明暗」となる。

 境界線を意図的にぼかし、網膜の手前にピントが合う「近視性のデフォーカス(ボケ)」を作り出す。ピントを合わせようとする網膜の特性を利用する。窪田氏は「実際に網膜を動かせたのが僕らの大発見だった」と力を込める。

 主なターゲットは成長期の子どもたちで、30代まで効果があると見込む。装着者ごとにレンズの調整が必要で、販売価格は税込み77万円。

 既に同社は量産体制を整え、本格販売に向けてマーケティングに乗り出した。

 特に注目する市場が中国だ。窪田氏は近視を巡る世界の情勢に目を向け、「国家レベルで近視を治そうとしており、(視界がぼやけるデフォーカスを指す)ボケの話を中国の関係者は誰でも知っている」と説明。その上で「日本では眼科医すら知らない」と指摘する。

 窪田氏は、こうした現状を打開しようと、国内で啓発に力を入れている。クボタグラスの販売もその一環で、6月19日までの日程で家電製品や住宅設備を提案する施設「二子玉川 蔦屋家電」(東京都世田谷区)に展示中だ。さらに昨年6月には、自著『近視は病気です』(東洋経済新報社)を出版。この活動を通じて、国家を挙げて近視の啓蒙に取り組む必要性を訴えてきた。

近視は病気

米国科学・工学・医学アカデミー(NASEM)は昨年9月、近視を病気に分類すると発表。子どもたちに毎日1~2時間屋外で過ごすことを推奨する報告書も公表した。

 各国は、深刻化する近視問題が経済に及ぼす影響に注目し、国家規模で近視対策を打ち出している。既にアジアで近視対策を促す機運が向上。シンガポールが01年から国家プロジェクトとして近視抑制に注力するほか、台湾や中国も抑止活動に力を入れている。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏