なぜ日本は「EV戦争」に乗り遅れた? 中国「充電5分」「交換3分」という現実! BYDとNIOが仕掛ける次世代戦略、日本の課題とは

なぜ日本は「EV戦争」に乗り遅れた? 中国「充電5分」「交換3分」という現実! BYDとNIOが仕掛ける次世代戦略、日本の課題とは

中国発EV革新モデルの台頭

電気自動車(EV)は世界的に急速に普及した反動で、近年は需要が減少している。一方で、ハイブリッド車(HV)のシェアは増加傾向にある。ただし、EVの技術進歩が止まったわけではない。そのなかでも次世代EVにおいて重要な技術のひとつとして注目されているのが「バッテリー交換式EV」である。

 EVは車載の大型バッテリーに電力を蓄え、その電力で走行する。だが多くのEVではバッテリーの充電に時間がかかる。ガソリン車のように短時間でエネルギーを補給することは難しい。そこで登場するのがバッテリー交換式EVだ。これは車載バッテリーを取り外し、フル充電済みの別のバッテリーに交換する方式である。まるで乾電池を取り替えるように、すぐにフル充電の状態にできる。

 このアイデア自体は古くから存在していた。EVの開発初期には、多くの企業がこの方式に取り組んでいた。しかし、いくつかの課題が立ちはだかった。

・交換用バッテリーの大量生産や大量配備

・安全で高速な交換システムの構築

・交換ステーションのインフラ整備

などである。こうした課題の解決には膨大なコストがかかるため、現在では充電式EVが主流となっている。

 ただ、中国では複数の新興企業がこのバッテリー交換方式の実用化を目指し、開発を続けている。そのなかでも上海蔚来汽車(NIO)は、このシステムに対応したEVをいち早く市場に投入した。NIOのシステムでは、バッテリー交換にかかる時間はわずか3分から5分ほど。交換作業は全自動で行われ、ドライバーが何かを操作する必要もない。

 すでにNIOのバッテリー交換ステーションは稼働しており、充電に時間がかかるというEVの大きな課題は、少しずつ克服されつつある。

CATL連携による覇権戦略

 NIOは2021年ごろから段階的に充電ステーションを拡充してきた。現在では中国国内に3000か所以上を展開しており、2025年ごろには5000か所の設置を予定している。欧州各国への進出も進んでおり、サービスは中国国内にとどまらず、世界規模へと拡大しつつある。

 2025年3月には、NIOと中国最大手の車載バッテリーメーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)が戦略協定を締結すると発表した。この協定により、バッテリー交換式EVの普及がさらに加速する可能性が高い。CATLは中国を拠点とするEV用バッテリーメーカーであり、

・米テスラ

・独フォルクスワーゲン

・トヨタ

・ホンダ

・日産

などにもバッテリーを供給している。その供給規模は、すでに世界最大級となっている。

 今回の協定によって、両社はバッテリー交換事業における研究開発からサービスネットワークの構築、電池資産の管理に至るまで、幅広い分野で協力する。これにより、中国のみならず世界最大規模のバッテリー交換サービスが構築される可能性がある。サービスが軌道に乗れば、NIOのEVは充電待ちのストレスなく長距離移動が可能になるだろう。

 また中国では、従来型の充電式EVに対しても急速充電技術の進歩が著しい。中国最大のEVメーカーである比亜迪(BYD)は、高速充電を可能にする独自の充電システムを開発した。このシステムは「1秒あたり2kmの航続距離」を目標としており、わずか5分でフル充電が可能とされる。これはバッテリー交換式に匹敵するレベルに達している。

 かつては充電時間がEV普及の足かせとなっていたが、今や世界は次のフェーズへと進みつつある。

30秒交換の実証成果

EV先進国となった中国では、ユーザーの利便性を大きく高める充電システムがすでに実用化されている。一方、日本国内では実現までにまだ時間がかかりそうだ。

 バッテリー交換式EVは日本でも以前から研究が進められていた。しかし、いまだに一般ユーザー向けの実用化サービスは存在しない。現在、国土交通省が旗振り役となり、国際ルールの策定に向けた開発と研究を進めている。ただし、対象はあくまで商用車だ。

 タクシーや配送トラックなどの商用分野でもEVの導入が進んでいる。だが、こうした車両は連続して稼働するため、充電にかかる時間の長さが運用上の課題となっている。これを解決する手段として、バッテリー交換式EVの実証実験が進行中だ。ようやく実用化に向けた第一歩を踏み出した段階といえる。

 一方で、別の分野ではバッテリー交換式の仕組みがすでに実用化されている。ホンダが展開する「Honda Mobile Power Pack e:」は、小型モビリティ向けの交換式バッテリーだ。このバッテリーは、ホンダ製の電動バイク「EM1 e:」に対応している。都内などに設置されたシェアリングサービスを利用すれば、わずか30秒でバッテリーを交換できる。さらに、このバッテリーはコマツ製の小型電動重機にも導入されている。将来的には大型重機への展開も視野に入っているという。

 日本では、EVそのものの普及が海外に比べて遅れている。だが、航続距離の短さや充電時間の長さといった課題を解決するうえで、バッテリー交換式EVは大きなブレイクスルーとなる可能性がある。

 とはいえ、中国のNIOやCATLのように積極的な投資を行う動きが日本国内で広がらない限り、乗用車分野での本格的なサービス展開はまだ先になりそうだ。

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