「どのくらい売れる?」専門家が分析した、ニンテンドーSwitch 2の売れ行きの鍵を握る“3つのポイント”とは
任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch 2(ニンテンドースイッチ2)」が6月5日に発売されます。価格は4万9980円(日本語・国内専用バージョン)。世界各地の体験会を経て、任天堂のゲーム機としては約8年ぶりに登場するわけです。今後の注目は、スイッチ2が「どのくらい売れるか?」ですが、その際に注目すべき三つのポイントを挙げます。
抽選に応募しない多数派の動向がカギ
「スイッチ2」の価格ですが、世界的にインフレ基調であること、機器の性能アップ、何より「日本優遇」の色合いが強いこともあり、概ね歓迎されている流れにあります。ただしやむを得ない事情があるにせよ、従来の任天堂のゲーム機と比較すると、高い価格なのは事実。スイッチ2の抽選に応募しない多数派(ミドル・ライトユーザー)の動向がカギで、スイッチからの“買い替え”を順調にしてくれるかです。
ポイントの一つ目は、スイッチ2の初年度(2026年3月期)の出荷計画台数で、任天堂が従来と同じく決算発表で開示してくるでしょう。スイッチの後継機だけに最初は飛ぶように売れるでしょうが、その勢いが持続して、最大商戦期の年末も売れ行きが伸び、初年度で出荷計画台数に到達するか。そこがカギです。
二つ目は、地域別の売れ行きです。特に任天堂の売上高の4割以上を占める米大陸で売れるかです。なかでも北米は価格面での優遇がないため、北米の消費者の動向に与える影響も気になります。そもそも任天堂の海外売り上げは7割以上なので、日本で好かれても、他の地域で嫌気されるのは困ります。ここに米国のトランプ大統領の「相互関税」の影響も無視できず、現時点の予測は極めて困難です。
三つ目は、現行機(ニンテンドースイッチ)の売れ行きです。普通であれば、新型ゲーム機が出ると、前世代のゲーム機は急速にトーンダウンしますが、スイッチの場合は、来年に「リズム天国」や「トモダチコレクション」の新作を控えています。スイッチ2の価格で様子見をした層が、そのままスイッチを遊び続け、任天堂の業績をある程度下支えする……という展開も考えられます。
日本優遇で海外の反応は…
理想は言うまでもありませんが、スイッチ2で希望小売価格を上回るような悪質な転売を抑え込みつつ、しっかり売れていくこと。特に新しいゲーム機の初年度は、勢いがつけば、人気が人気を呼んで価格に関係なく売れる展開も期待できます。ですが消費者の心理は複雑です。案外簡単に買えたりすると「後からでいい」という“買い渋り”のような消費者心理が働くこともあります。理想を言えば、やや枯渇感がありながら、ギリギリ何とか買える状態……となりますが、なかなか無理筋の話です。
最も警戒するべきシナリオは…
最も警戒するべきシナリオは、ソニーの家庭用ゲーム機「PS3」や、任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」のように、発売前・発売半年での大幅値下げに追い込まれることです。「日本で売れたらOK」というのは、日本のユーザーの視点であり、企業としては世界で売れないと困るわけです。
そもそも、日本市場を優遇すれば、(我々)日本のユーザーが喜ぶのは当たり前。日本だけ優遇したこと、海外での価格に対して反発があるとも報じられています。海外の関係者らに、「スイッチ2」の発表を受けて、その国での前評判を聞いたところ、価格面、タイトルのラインナップについてネガティブな反応が多いそうです。日本の特別扱いに良い顔をしてない。それもまた一つの事実です。
世の中に「絶対」はない
ファミリー層もターゲットにする任天堂のゲーム機が5万円、450ドルという、“高価格帯”で売れるか……というのは、関係者が注目しているでしょう。現行機の高級バージョン「有機ELモデル」(3万7980円、約350ドル)が好調だったこともあり、スイッチ2が現時点で一部に「高い」という意見があっても、始まってみると売れることも十分にあり得ます。
ですが世の中に「絶対」はないのもまた事実です。
価格は“最大の強み”ではない
2020年のPS5の発売時は、価格も予想を下回り、期待が大きかったものの、転売が横行し、半導体不足、世界的な物流の混乱などがありました。例えば北米市場で、スイッチ2とPS5が似た価格になるケースもあり、どちらが売れるかです。PS5とスイッチ2は、商品の方向性が異なるのですが、売れ行きの動向はどうしても話題になるでしょう。ゲーム情報番組「ニンテンドーダイレクト」でスイッチ2の価格に一切触れなかったように、価格は最大の強みではないのです。
ゲーム機の売れ行きは、性能はもちろん、価格、発売のタイミング、ソフトのラインナップ、そして社会情勢なども影響します。何よりこの価格で売れるなら、任天堂の業績がより伸びることを意味します。
そもそも抽選に応募するようなヘビーユーザーは多少高価格であっても買ってくれます。そうではなく、その次のユーザーがどう動くか、かつ日本だけではなく世界規模で見ていく必要があるのです。意図して望んだわけではないでしょうが、結果としてスイッチ2が「挑戦」のようになっているのは興味深いところ。ターニング・ポイントになるか注目です。