関税で二転三転 iPhoneの値上げは回避できるか
米国で話題の「関税」からスマホが除外されたかと思えば、今度は別の関税の対象になると報じられるなど、めまぐるしく状況が変化しています。
果たして米国のiPhoneは値上げを回避できるのでしょうか。
「相互関税」からは除外、でも別の関税の対象に
日本時間で4月12日、米国の相互関税の対象からスマホやノートPCなどが除外されたと報じられ、話題になりました。対象品目のリストは米国の税関(CBP)が公表しています。
これを受け、週末に取引できるナスダック100のCFDが上昇するなど市場からは好感されたものの、スマホなどに課せられる関税がゼロになったわけではありません。
ミラー大統領次席補佐官は「これらの製品はIEEPAに基づく20%の対中関税の対象である」とXへの投稿で指摘。この点はトランプ大統領によるTruth Socialへの投稿でも強調されています。
この20%とは「フェンタニル」関税のことを指しており、「相互関税」とは別の扱いになります。現在の対中関税としては、125%の相互関税と20%のフェンタニル関税の合計で145%となっています。
相互関税からは除外されたとはいえ、スマホなどは分野別の追加関税として「半導体関税」の対象になると報じられています。トランプ大統領によれば来週中にも詳細を発表するようです。
情報が五月雨式に出てくることにメディアも振り回されており、「二転三転」感が強まっている印象です。ただ、トランプ政権の中で一貫していると思われるのは、スマホや半導体の生産を海外(主に中国)に依存するのはリスクであるという考え方です。
そもそもアップルがiPhoneを中国で生産する理由について、ティム・クックCEOが2017年の講演で語ったことが注目されています。簡単にいえば、人件費の安さではなく、技術の質や種類が高まったことによる「層の厚さ」が決め手になっているようです。
その後、2022年にはロックダウンで工場が閉鎖されるなど中国依存度の高さが問題となり、アップルはインドへの分散を進めています。2024年にインド製のiPhoneは全体の15%程度に達したと報じられていますが、まだ85%は中国に依存していることがうかがえます。
今回の対中関税を避けるため、インドなどの生産体制を強化することが予想されるものの、それはトランプ政権が求める方向性とはいえません。「米国で生産するほうが安い」とアップルが思えるようになるまで、関税をかけ続けていく可能性も考えられます。
米国時間で5月1日にはアップルの決算発表が予定されています。ここで何が語られるのか、これまでにない注目を集めそうです。
特定の国だけ値上げすることの難しさ
こうした関税は、中国などで生産されたiPhoneを米国に輸入する際、アップルが支払うことになります。これを米国での販売価格に上乗せすることはできるのでしょうか。
製品を値上げすると販売台数が減ることが予想されるのはもちろん、トランプ政権から値上げをしないよう圧力がかかる可能性もあります。地域間で価格差が生じることで「転売ヤー」が活躍する機会にもなるでしょう。
その対策として製品に地理的な制限を加える手法はあり、Androidスマホでは現地でSIMカードを入れる必要がある「リージョンロック」を導入した端末があります。Nintendo Switch 2では「日本語・国内専用」モデルが登場しました。
一方、世界各国で少しずつ値上げをすればそうした問題は起きないものの、米国以外のメーカーとの価格競争では不利になります。また、海外の消費者にとっては米国の関税を負担させられることになり、反発が予想されるのも難しいところです。