ChatGPT、「記憶力」をアップデートして過去の会話を参照可能に。便利?リスクは?
歓迎すべきなのか憂うべきなのか判断に苦しむな、これは。
ChatGPTがちょっぴりアップグレードしました。便利だけどちょっと物議を醸すかもしれない新機能が加わっています。
ChatGPTに記憶力が追加
Open AIは木曜日(4月10日)、設定のスイッチをオンにするだけで、ChatGPTの過去のチャット履歴を参照して今後の会話に生かしてくれる機能の追加を発表しました。
複数の会話にまたがる大きなプロジェクトや、AIとのリアルなやりとりを楽しみたい人にとってはめっちゃ役立つ機能になるかもしれませんよ。
とはいえ、ログイン情報がバレたり、だれかにアカウントへアクセスされたりしてしまった場合、見られるデータが増えることになるので、ちょっと心配にもなりますよね。でも、これは特に珍しいことでもありません。GoogleやAnthropicもすでに同じような機能を有料ユーザー向けに提供しています。今回のアップデートは、OpenAIがライバル企業に追いついただけともいえます。
忘却系から記憶力抜群系に早変わり
これまでのGPTモデルは、話した内容の「記憶」がその会話内だけにとどまる忘却系AIでした。たとえば、「黄色が好き」って伝えても、新しい会話を始めて「私の好きな色はなんでしょう?」と尋ねたら「知らんがな」って言われるさみしい感じ。記憶力のなさをカバーするには、設定で「保存されたメモリを参照する」をオン(下の画像を参照)にして、「黄色が好きなことを忘れないでね」と念押しする必要があったんです。
でも、今日からは違います。ChatGPT PlusかProを使っている人は、設定画面に追加された新しいスイッチ「チャット履歴を参照する」をオン(上の画像の赤で囲んである部分)にするだけでOKです。
あとはいつも通りに話すだけで、ChatGPTが過去の会話を参照して、トーンや傾向などをこれからの会話で文脈として活用してくれるようになります。さっきの例でいえば、使い込んでいくなかで「黄色が好きな人」という傾向をChatGPTがつかんでくれる感じ。
ただ、過去ログを何もかも覚えているわけじゃないので、検索エンジンの「サイト内検索」のような使いかたはできないと本人(ChatGPT)が言っていました。ChatGPTとの会話履歴を検索したい場合は、左上の検索(虫めがね)アイコンをクリックする必要があります。
ClaudeやGeminiと比べてどうなの?
この機能、AnthropicのClaudeやGoogleのGeminiですでに使っていたんですけど、記憶力がおぼつかない私からすれば、AIが自分に関するささいなことまで覚えてくれているのが魔法のようでずっと大満足でした。
たとえば、Claudeと新しい仕事の計画について話したあと、新たな会話でブレインストーミングを始めると、「ああ、それ前に話してたやつね」ってすぐに察してサクッと手伝ってくれました。
とはいえ、こうした会話の「記憶」をAIがどう扱うかについて、ユーザーがもっと細かくコントロールできたらいいのに、とも思います。ChatGPTには、会話を保存しないAI版のシークレットモードのような「一時チャット」という機能はありますが、控えめな場所(右上)にひっそりとたたずんでいるので、使うきっかけがなかったりするんですよね。使ってみて初めてなんなのか理解する、みたいな。
プライバシーをとるか、魔法をとるか
おまけに、どこかでAIに自分のことをしゃべりすぎてるんじゃないかって感覚がいつもつきまとってるんです。スマホのなかの写真をぜんぶクラウドにアップロードしたときのちょっとした不安のような、モヤモヤした気持ちが消えないというか。
でも、AIを使い込むほどに、プライバシーに関するリスクよりもメリットのほうが大きいと感じるようになりました。もちろん、将来的にこの選択が自分の首を絞める可能性は否定できませんけど。
ChatGPTに相談してみると、「正直、それはあなたがChatGPTに何を望んでいるかによりますね」と言われました。その回答を見たときに、ChatGPTとはいい感じにわかりあえている気がしました。
この新機能は、4月10日からChatGPT PlusとProユーザーへの提供が開始されていますが、イギリス、EU、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスでは利用できません(EUがデータ保持ポリシーをより重視していることを考えると驚きはありません)。
新たに追加されたチャット履歴参照機能は、Enterprise、Edu、Teamユーザーにも後日公開される予定とのこと。この機能が追加されているかどうかは、「改善された新しいメモリの紹介」というタイトルのポップアップが表示されるか、上のほうの画像にあるように設定の「パーソナライズ」に「チャット履歴を参照する」という新しいスイッチがあるかどうかで確認できます。
プライバシー保護のリスクよりも便利さが勝っちゃいそうな気しかしません。