アップルがインドへ本格シフト、「iPhone 16 Pro」の現地生産実現も課題は山積

アップルがインドへ本格シフト、「iPhone 16 Pro」の現地生産実現も課題は山積

米アップルは、中国偏重のサプライチェーンからの脱却を目指し、インドへのシフトを加速させている。背景には、米中貿易摩擦、中国政府の「ゼロコロナ政策」によるサプライチェーン混乱の苦い経験、そしてインド市場の潜在力がある。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、アップルは2024年に世界で2億3200万台のiPhoneを出荷した。そのうち約15%がインドで生産されたが、2027年にはこの比率を25%にまで引き上げる計画だ。

Apple’s quiet pivot to India

インドシフトの理由と背景

2017年、第1次トランプ政権の対中関税政策を機に、アップルはいわゆる「チャイナ・プラス・ワン」と呼ばれる戦略を本格化させた。これは、中国のサプライヤーに加え、他の国のサプライヤーを追加・活用することだ。

その魅力的な投資先となったのは、最大の人口規模を持つ民主主義国家で、巨大な市場を抱えるインドだ。モディ政権も、製造業振興策「メイク・イン・インディア」を推進し、外資企業の誘致に積極的だ。特に、PLI(プロダクション・リンクト・インセンティブ、生産連動型優遇策)と呼ばれる補助金制度は、スマートフォン製造に対する手厚い優遇措置となり、アップルの進出を後押しした。

アップルは2017年に電子機器受託製造サービス(EMS)大手の台湾・緯創資通(ウィストロン)と連携し、インドでiPhoneの生産を始めた。その後、同じくEMS大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業や台湾・和碩聯合科技(ペガトロン)がインド生産を開始した。インドの大手財閥タタ・グループが2023年に買収した、ウィストロンのベンガルール近郊の工場でもiPhoneを製造している。

インド戦略の成果、iPhone 16 Proの生産とシェアの拡大

アップルの目標は、インドを中国に匹敵する製造拠点に育成することだ。iPhoneの生産拠点を拡大するとともに、輸出拠点としての活用も視野に入れる。これまで、アップルはインドで成果を上げている。特に、最新機種の高スペックモデルである「iPhone 16 Pro」の生産もインドで行われるようになった。このことはアップルのインド戦略が着実に進展していることを示している。前述したとおり、iPhoneは従来からインドで生産されていたが、これまで旧機種か、最新機種の普及モデルにとどまっていた。

アップルは、製販両面でインドを重視している。同社は国際事業の経営体制を刷新し、インドに一段と比重を置くようになった。2023年4月には同社初のインド直営店「Apple BKC」を商都ムンバイでオープンし、その後、首都ニューデリーで2号店「Apple Saket」を開いた。これが奏功したのか、同社のインド市場における出荷台数は2024年に前年比34.6%増加し、出荷台数シェアは前年の6.4%から8.2%に拡大した(IDCのリポート)。FTによると売上高ベースのシェアは韓国サムスン電子を上回る23%になった。

India’s Smartphone Market Grew 4% in 2024 to 151 million Units

一方、インドは中国メーカーの安価なブランドが支配する市場であるため、アップルの出荷台数順位は6位である。だが、インドは利用者数ベースで世界2位の携帯電話市場であり、アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は依然としてインド重視の姿勢を強調している。同氏は「インドのスマホ市場には多くの成長の余地がある」とも付け加えた。

「道のり、決して平坦でない」

ただ、アップルには課題も山積しており、その道のりは決して平坦でないとも指摘されている。同社はインド事業において、①サプライチェーンの構築、②労働力の確保、③地政学的リスクといった課題があるという。

①について、インドでの部品調達は依然として少なく、多くは輸入に頼っている。部品メーカーの誘致が急務だが、中国のような大規模なサプライチェーンを構築することは容易ではない。例えば、スマートフォン用ガラスなど、特殊ガラスを手がける米コーニング(Corning)はインド企業と提携して製造施設を建設する予定だが、部品調達の大部分は依然としてインド国外に依存している。

②の労働力については、中国のような熟練した労働力、特に女性労働者の確保が課題となっている。インド社会には女性の就業を阻む文化的障壁も存在し、安全な労働環境の整備も求められる。南部タミルナドゥ州は女性の教育・雇用率が高く、専用バス輸送などの政策を通じて女性労働者の確保に力を入れているが、課題は依然として残る。

③の地政学的リスクには、米中間の緊張に加え、印中間の関係も挙げられる。中国からの技術者や資本財の移動が妨げられるなど、事業運営に支障をきたす可能性がある。2020年には中印間の国境紛争をきっかけに、インド政府がTikTokなどの中国発アプリの利用を禁止し、中国からの投資を制限した経緯もある。

インド市場の潜在力は大きいものの、アップルが中国に代わる新たな製造拠点としてインドを活用できるかどうかは、今後の取り組みにかかっている。

筆者からの補足コメント:

インド政府は国内半導体産業の育成に力を注いでおり、今後2年以内にインド初の半導体製造事業が立ち上がると、同国の商工相が自信を示しています。米経済ニュース局のCNBCによれば、インドのピユーシュ・ゴヤル商工相は同局とのインタビューで「インドは2年以内に半導体製造を開始するだろう」と述べ、同国政府の取り組みが順調に進んでいることをアピールしました。特に米マイクロン・テクノロジーのCEOとの緊密な連携や、インドの大手財閥タタ・グループの参画など、具体的な動きを挙げて計画の進捗を説明。米エヌビディアや米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)などもインドへの投資拡大を計画しており、同国半導体産業の将来性への期待が高まっているといいます。

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