Intel新CEO、前進に向け「4つの計画」表明

Intel新CEO、前進に向け「4つの計画」表明

IntelのCEOであるLip-Bu Tan氏は、同社の年次イベント「Intel Vision 2025」(米国ネバダ州ラスベガス、2025年3月31日~4月1日)に登壇し、同社の顧客基盤の代表者たちから成る聴衆に向け、同氏が既に“明確な見解”を持って“前進に向けた計画”を用意していることを示し、安心感を与えた。

 CEOに就任してからわずか2週間で登壇したTan氏は、米国半導体業界の巨大企業であるIntelを引き続き再建していくための手法については詳細を述べなかったが、企業文化の変革やイノベーション、謙虚さなどについて語った。

 Tan氏の計画のパート1は、顧客に“残酷なまでに正直な”フィードバックを求めることだという。「どうか遠慮なく正直に話してほしい。私は、厳しいフィードバックこそが最も価値あるものだと信じている」(Tan氏)

 Tan氏は、米国の作家・詩人・思想家であるHenry David Thoreau(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー)の名言「“Rather than love, than money, than fame, give me truth”(愛よりも、お金よりも、名声よりも、私は真実が欲しい)」を引用し、「私には、半導体業界が決して流行の先端ではなかった20年前当時、半導体に投資した経験があることから、コントラリアン(逆張り家)としてのソローに自分を重ね合わせている。この戦略は、成功を収めたのだ」と語った。

 Tan氏はその後、当時苦境に陥っていたEDAメーカーであるCadence Design Systems(以下、Cadence)のCEOへの就任を要請され、12年間にわたり指揮を執った。同氏のそこでの戦略は、Cadenceの企業文化を「イノベーションと顧客満足の実現」に向けて再形成することだった。同氏はこの戦略を、Intelのための手本とするようだ。

 また同氏は「Cadenceで顧客からのフィードバックを受けた時には自尊心が傷付いたが、それが私に大きな変化を引き起こし、Cadenceにとってのターニングポイントになった」と語る。同氏は恐らく、Intelにとっては今がどん底であり、または少なくともターニングポイントであると考えていることを示唆したのだろう。

 Tan氏の計画のパート2は、イノベーションを促進するためにIntelの企業文化を変えることだという。同氏は「そこには、革新を起こすチャンスがある人材やアイデアにリソースを投入することなどが含まれる」と述べる。

 「私は、焦点を絞った小規模なチームが、いかに迅速に動いてイノベーションを起こし、既存の企業に挑戦することができるかを見てきた。それをIntelでも実践していく。最初は完璧ではないかもしれないが、最終的には完璧に実現できると期待してほしい」(Tan氏)

 製品設計の精神を、ハードウェアファーストからソフトウェアファーストへと移行させ、「ソフトウェア2.0」のメンタリティを受け入れていくことになるだろう。

 Tan氏は「世界は変化した。今後は、解決すべき問題や対応すべき作業などから着手し、そこからさかのぼって取り組んでいく」と述べる。「最も重要なのは、仕事のやり方をシンプルにすることだ。官僚主義は、イノベーションを殺してしまう」と付け加えた。

 そして計画のパート3は、Tan氏が「非中核」と呼ぶ事業部門をスピンオフすることで、Intelの中核を成す事業部門に集中するというものだ。同氏は、どの事業部門を「中核」・「非中核」と見なすのか、また非中核部門にIntel Foundryが含まれるのかどうかという点については言及しなかった。

 パート4は、Intelが従業員数10万人規模のメーカーでありながら、一部のトップ人材を失っていることを認め、トップ人材を確保し、維持していくための人材獲得プログラムにコミットするというものだ。

経営幹部も“顧客中心”を強調

 今回のイベントの2日目の講演では、Intelの経営幹部がTan氏のコメントに倣い、過ちや不足を認め、より“顧客中心の”企業になるための取り組みについて繰り返し主張した。

 IntelのCCO(最高商務責任者)であるChristoph Schell氏は、Intelがここ1年ほどの間に実施してきた数々のポートフォリオ変更について語った。

 Schell氏は「このような変更の一部は、長期的な視点から見ると非常にメリットが大きいが、短期的には実行するにあたり痛みを伴うだろう」と述べ、数々の製造中止製品について取り上げた他、Tan氏が「ポートフォリオの削減はまだ完了していない」と明言していることについて注意を喚起している。

 Schell氏は「Intelの明るい面としては、2024年にx86アーキテクチャに関するアプローチを変更して、一部のカスタム/セミカスタム設計を許可したことにより、良い結果がもたらされているという点がある。当社のカスタムx86 SoC(System on Chip)の設計能力について、顧客からフィードバックを得られていることをうれしく思う」と述べている。

 Intel ProductsのCEOであるMichelle Johnston Holthaus氏は「製品グループは3つの主な焦点として、“PC分野におけるAI主導”と、“データセンターAIの強化”、“AIインフラポートフォリオ全体の革新”を目指していく。(Tan氏はこの前日に、データセンターAI分野におけるIntelの位置付に関して不満を表明していた。「新たなページを開く時が来た。一夜にしてできるようなことはないが、必ず実現する」と述べている)

「Intel 18A」がリスク生産段階に

 Intel FoundryのシニアバイスプレジデントであるKevin O’Buckley氏は、Intelの「18A」世代のプロセス技術がリスク生産段階に入ったという心強い知らせを発表した(シリコンで十分に実証され、商用量産向けにスケールアップするための準備が完了したことを示す)。これは、Intel Foundryにとって重要なマイルストーンであり、切望されていた朗報でもある。

 全体的に見ると、Tan氏が最も強く語った言葉は、なぜTan氏が自身のキャリアのこの時点でこうした大きな課題に挑戦するのかを不思議に思っていた人々に向けたものだった。

 「その答えはとてもシンプルだ。私はIntelを愛している。Intelが苦悩しているのを見るのは、私にはとてもつらいことだったからだ」と述べ、35分間の基調講演の中で唯一感情的になった。「Intelにとって、かなり長い間厳しい時期が続いていた。われわれはイノベーションで後れを取り、その結果、顧客のニーズを満たすのが遅過ぎた」

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