小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」

小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」

今年2月、X(旧Twitter)で〈小学校卒業後、中学校には通わないことを決めました〉と宣言し、物議を醸した12歳のYouTuber・Tarou。小学校2年生の頃からオンラインマルチプレイヤーゲーム「フォートナイト」(編注:複数プレイヤーが一つのフィールドで銃などの武器を手に入れ、最後の一人まで戦うシューティングゲーム)の実況を配信し、YouTube「たろうチャンネル」の登録者数は19万人を超える大手実況者である。

 中学校へ通わず、1日9〜11時間ほどを「フォートナイト」の練習に充てていく方針だというTarouとその両親。それでは今後、どのように学習をし、どのような生活を送るつもりなのか。Tarouとその両親が、インタビューに応じた。【全3回の第2回。第1回から読む】

青山のタワマンから「人口千数百人の村」に引っ越し

──Tarouさんは〈小学校卒業後、中学校には通わない〉と宣言しましたが、それは親子3人での決断だと伺いました。ご両親はどのような人生を歩んだのでしょうか。

母:私は幼稚園、小学校、中学校と受験をした、お受験人生でした。海外の大学を出て、一度普通に就職しましたが、今は自分で会社を経営しています。

父:僕は中学受験をして、筑波大学附属駒場中・高等学校から東京大学の法学部に進学しました。私の父と母も東大で、祖父母たちも高学歴だったから、「東大進学が当たり前」みたいな環境だったんです。僕も今はフリーランスで働いています。

母:もともと青山のタワマンに住んでいたんですが、親2人が自由な働き方をできる状況になって「落ち着いて家族に向き合える生活がしたい」と話し合いをして、Tarouが小1になった年の6月、人口が千数百人しかいない山奥の村に引っ越しました。ちょうどTarouの祖母が山奥に家を持っていたので、そこでのんびり暮らしたいということで越してきました。

──Tarouさんはそれまでは、インターナショナルスクールに通っていたと。引っ越しは嫌ではありませんでしたか?

Tarou:全然嫌じゃなかったなあ。ここでよかったと思います。自然もたくさんあるし、学校はみんな優しくて、給食も美味しい。校庭も広いです。

──今後、Tarouは中学校には通わないとのことですが、運動や学習はどうするのでしょうか? それから、「フォートナイト」の練習が9〜11時間となると、睡眠時間は?

父:睡眠時間は最低10時間、確保するようにしています。

母:厚生労働省の睡眠ガイドラインに出ているんですよね。私は「10って多くない?」と思ったんですけど、世の中ではそれくらいがいいとされているんだなと。

父:競技としてゲームをやるなら、寝不足だと全く集中できなくていいプレイができないんですよね。

 あとは体づくりのために、1日決まった時間、運動をしています。今は山を歩いて散歩したり、一緒にストレッチをやったりですね。最近、週に1〜2回、10分程度、強度の高い運動をすると、体づくりや健康にすごく効果があるということを知ったので、そういう運動をしています。

「学習指導要領をカバーしようとは思わない」

——「中学校に通わない」という決断で、最も多く上がった批判は「勉強はどうするのか」というところだと思います。実際のところ、どうなんでしょうか。

母:前提として、中学で学習指導要領で定められている内容をカバーしようとはそもそも思っていません。なぜならば、そこで身につくことがこれからの時代に本当に必要なことなのか、将来に役立つことなのか、というところに私たちが懐疑的だからです。 

父:受験をするかしないか、という問題だと思うんです。今のまま6年間過ごしたら、今の制度の5教科7科目ある東大入試に受かることは、難しいかもしれない。でも、6年後の受験システムがどうなっているかはわかりません。全く新しい方式が出てきたり、それが一般的になったりしている可能性もあると思っています。

 Tarouはこれまで、自分で興味を持ったことは熱意を持ってできているし、その時期(受験などを考える時期)にも自分がやりたいことって本人の中にあると思うんですよ。もし学力のようなものが必要になっても、自分から学ぶ意欲があればその時になんとかできるんじゃないかと。

母:夫がよく言うのは、「勉強っていうのは人生いつでもできる」ということ。一般的には学校を卒業したら仕事をするから、勉強をする暇がなかなかないけれども、勉強というもの自体は何歳になってもできるものなんです。むしろ興味が芽生えて、自分から必要だと思ったタイミングのほうが身につくし、吸収力もあると。その意味では、Tarouの今の一番の興味関心は、「フォートナイト」の世界大会出場に向いていると。

父:いい大学に入り、新卒で大企業に入ることが目標であれば、受験勉強みたいなことはしたほうがいいと思うんですけど、やはり6年後のシステムはわからないし、私は大学のあと自分で仕事をしていますし。むしろ子どもたちには、システムがどう変わっても対応できる柔軟性を育ててやりたいです。

 幸い、Tarouは好奇心が強いタイプで、今の時代はものを知るのに便利なツールもいっぱいある。興味があることに対して、毎日一定時間アタマを使ってAIとでも私たちとでもどんどん会話していってほしいと思います。今は「フォートナイト」への興味と意欲強く、いわゆる勉強的なものに対しては自発的なモチベーションは高くないので、親である私たちが、彼の好奇心を刺激する形での学習の機会をつくれるよう努めています。

母:私自身は、教養は将来の役に立つものだと思っているので、主に文化や歴史の勉強をしてほしい。だから、それらに関わる場所や機会には積極的にTarouと足を運んでいるし、なるべく幅広いトピックについて話をしたりしています。Tarouが何かに興味を持ったら、それについてAIを使って調べたり、考えを深めたり、学習したり、私たちや兄弟に解説や共有するようにさせています。そういったことを通して、科目にとらわれない形で教養が深まり視野が広がっていく……というイメージです。

──Tarouさんは、ぶっちゃけ中学校に行きたいと思いますか?

Tarou:ぶっちゃけ行きたくはないです。友達もいるし、上級生まで含めてみんな顔を知っていて仲が良いから、毎日会えなくなるのは残念だけど。

母:そもそもこの村では、放課後や休みの日に一緒に遊んだりすることがあまりないんですよね。親が車で送迎しないと会えないし、遊び場に移動できないので。学校の友達とも「フォートナイト」でオンライン上で遊ぶことのほうが多いかもしれません。

 既成観念に囚われず、独自の道を歩もうとする親子。第3回記事では、父が語った「フォートナイトで得られる最も大事な経験」と、Tarou本人が語る「将来の夢」について、詳報する。

《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」

今年2月、X(旧Twitter)で〈小学校卒業後、中学校には通わないことを決めました〉と宣言し、物議を醸した12歳のYouTuber・Tarou。小学校2年生の頃からオンラインマルチプレイヤーゲーム「フォートナイト」(編注:複数プレイヤーが一つのフィールドで銃などの武器を手に入れ、最後の一人まで戦うシューティングゲーム)の実況を配信し、YouTube「たろうチャンネル」の登録者数は19万人を超える大手実況者だ。

 中学校へ通わず、1日9〜11時間ほどを「フォートナイト」の練習に充てていく方針だというTarouとその両親。Tarouとその両親が、子育ての方針や将来のビジョンについて語った。【全3回の第3回。第1回から読む】

フォートナイトで得られる「挫折する経験」

──子育てについて、ご両親の方針を改めてお聞きします。

母:子どもたちを「自分のちからで楽しく生きていける大人に育てたい」というのが前提。ただ、今の社会制度では、楽しく生きていくにはある程度お金を稼ぐ能力も必要なので、将来的にそれにつながるようなことを、本人の適性に合う形で、やらせてあげたいなと思ってる。Tarouの下に2人子どもがいますが、弟たちのほうは勉強的なものが好きで、自分から漢字をたくさん覚えたり、プログラミングをやったりしています。

父:僕個人的には、漢字をたくさん覚えたりプログラミングをたくさん作ったりしても、明確な目的がなかったら、それだけでは意味がないとは思ってるんですけど。今は本人たちが興味を持ってやりたいことをやれる環境を整えています。

──YouTubeでの活動もまだまだ力を入れていきますか?

Tarou:世界大会が第一目標だから、YouTubeはやりたかったらやるって感じです。

父:私個人的には、 YouTuberって、自分でメディアを持つ経験ができるのが貴重だなと思っていて。将来どんな道に進んだとしても、発信力や伝える力ってすごく役に立つと思うので、Tarouにはその過程も含めて、どんどんチャレンジして頑張ってほしい。けれど、Tarouがやりたいこと以外はやらないので、YouTubeを続けるかどうかは私次第かもしれないというか……Tarouが気乗りする企画を私が用意し続けられるかどうかに尽きるのかも。

母:一般家庭で、子どもが興味を持ちそうな参考書を両親が用意するのと同じような感じだよね。

父:Tarouはやりたくないことは絶対やらないけれど、実現したい夢のために必要なこととかは、おかしいくらいやるんです。だから「何が必要なことなのか」を親がいっしょに考えてサポートしてやる。そうすると自分から取り組んでいきます。

 あと、私はやっぱり子どもにとって、失敗する経験が一番大事だと思っています。YouTubeが伸びなくなったらどうするんだとか、「フォートナイト」でも勝ち負けを繰り返して本気で悔しい思いをするわけですけど、そういう失敗や挫折は全然してもいいというか、それこそとても大事な経験になると思っています。

 競技ってすごく厳しい世界なので、トップレベルの戦いだと上手くいかないことのほうが多い。でもそういう厳しい世界へのチャレンジって、自分にモチベーションがないと挑んでいけないじゃないですか。だから、モチベーションがある今が、そういう挫折や失敗を味わって成長するチャンスなんです。YouTubeも、動画を撮っても数字的には思ったより上手くいかないことも多いんですけど、そういう経験をこそが一番大事だなと思っています。

──小学生のうちから試行錯誤や挫折の経験、数字との戦いをする必要はあるんでしょうか?

母:確かに小学生の間はそういう競争からは距離を置いて、ユートピア的な世界で生きてもらいたいって意見はあると思います。でも、本当にそう思うんだったら、受験戦争に子どもを巻き込んだりするのも少し変な気がします。

父:あとは、やっぱり自分がやりたくてやっていることなら、上手くいかなかったりクリアできなかったりしても乗り越えられるんですよね。やりたくないことを無理にやって、うまくいかないから辛いわけで。

Tarouの「将来の夢」

──小学生YouTuberといえば、「ゆたぼん」さんを思い浮かべます。現在16歳の彼も、かつては学校に行かない選択肢を取り、「学校に行きたければ行けばいいし、行きたくない子は行かなくていい」などと発信していましたが、Tarouさんから見てどのような存在でしたか?

Tarou:実は、動画を全然見たことがなくて……。

母:「ゆたぼん」さんとTarouは活動フィールドも違って、一概には言えないから比較するのは難しい。ただ、(私達は)うちはうちのやり方でやりたい、ということだけで、他人に「こうすべき」と伝えたことはないつもりです。

父:ゆたぼんさんの発信を見ていて、以前は彼がどう育っていくのかちょっと気になっていましたけど、最近は彼が留学へ行くことを決めたりとか、楽しそうで自発的でいいなあと思っています。

──TarouさんがこれまでにYouTubeで稼いだお金はどうしているのでしょうか?

父:彼の個人会社を作ってそこで運営しています。基本的に今あるお金は、貯めていくというよりは、YouTubeを維持発展させる、伸ばすための設備や機会への投資として使っています。Tarouの将来の選択肢としても。

──では、その将来についての考えをお聞かせください。

父:Tarouが中学校へ通わないと宣言したことで、Xでは「絶対にまずいから親として止めろ」といった心配のDMなどが届いたり、「法律違反だ」という意見もあったりしました。

「自分もプロゲーマーをやっていたけど厳しくて諦め、今は勉強している」という人もいます。自分の経験を踏まえて「絶対に勉強したほうがいい」という声は、なかなか説得力がありますよね。一方、私の古くからの知人には子育て世代の大手企業社員、経営者なども多いですが、そういった方々からは今回の決断に対して「合理的」「目標に対して最適な選択」と共感の言葉をかけていただけました。

母:私たちは、これからの社会では必ずしも「〜卒」という学歴が必要とされるとは限らないと考えています。

——Tarouくん的にはどうですか?

Tarou:(よく「将来の夢は?」と問われるが)それは、「なりたいこと」のことなのか、「なりたいもの」のことなのかってのが難しい。やりたいことは「フォートナイト」の世界大会とか、YouTubeとか、釣りとか。「なりたいもの」、つまり将来的に収入を得る方法はまだ特に決めてないけど、面白いこと、楽しいことで「やりたいこと」があるというときに、それが実現できるようになっておきたい、そのために、やらなきゃいけないことはやるようにしています。

母:Tarouは以前はずっと、将来の夢を聞かれたら「大人になりたくない」って答えてたんです。その理由は、「今がすごく楽しい」ってことと、「親が年老いたり死んだりするから、みんなと暮らせなくなっちゃう」ってことだったそうです。

 でも、ちょっと前から「13才にならないと大会に出られないから、13才にはなりたい」とか、今では「大人になってもいいんじゃないかな」と言っていました。

父:「大人になってもいいかも」だなんて、ちょっと笑っちゃいました(笑)。小さい頃の自分は「早く大人になりたい」思っていたので。

Tarou:世界大会出場を達成したら、次は、「世界大会で一位になりたい」と考えるようになると思います。今はとにかく、世界大会に出たいです。それが夢だし、目標です。

 3人でインタビューに応じた親子からは、仲の良さと、「言いたいことを言い合える」関係性を感じた。Tarouは中学には形式上は入学し、通学をしない形を取るという。まださまざまな道を選べる年齢であるTarouは、どんな大人になっていくのだろうか。

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