ブレーキは単に止まるためや、減速するためのものではなくなってきました。
様々な機能と統合され機能しています。今回はブレーキがどのように連携して働くのか見ていきます。
横滑り防止装置(ESC)とは?機能と役割、オフスイッチがある理由
横滑り防止装置の生産車への義務化からしばらく経ちました。ただ、「セカンドカー購入で低年式のスーパーハイト系軽自動車を買う」といった、改めて横滑り防止装置の有無を確認した方がよい場合があります。今回は横滑り防止装置の機能や役割について紹介します。
横滑り防止装置は、車体の姿勢の乱れを防ぎ、走行安定性を保つための装置です。「Electronic Stability Control」の頭文字を取ってESCとも表されます。またメーカーによっても名称が異なります。
横滑り防止装置が機能するのは、主に以下のような場面です。
コーナリングで車体が外側に膨らむ「アンダーステア」を抑える
コーナリングで車体が内側に巻き込む「オーバーステア」を抑える
雪道や降雨時走行での車体のスピンを防ぐ
緊急回避時の車体のスピンを防ぐ
センサーが車両の横滑りを感知すると、制御コンピューターが四輪それぞれにブレーキ制御などを加え、車体を安定させます。
2018年2月以降の生産車は全車装備
国土交通省により、横滑り防止装置は新車への装備が義務付けられています。義務化措置は2012年に普通車の新型車から導入され、2018年2月以降は軽自動車も含めた全ての新車が対象となっています。
2012年10月~ 新型生産車(普通車)
2014年10月~ 新型生産車(軽自動車)及び継続生産車(普通車)
2018年2月~ 継続生産車(軽自動車)
ABSとTRCとの違い
横滑り防止装置と混同しやすいのが、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)とTRC(トラクションコントロール)です。どちらも車体の姿勢を保つのに役立つ装置ですが、機能する場面が異なります。
ABSは、急ブレーキなどの際にタイヤをロックさせず、ハンドル操作を可能とする機能です。またTRCは、発進時の空転を抑えます。このように、ABSやTRCが制動時や発進時に活躍する機能であるのに対して、横滑り防止装置は通常走行時に役立つ機能です。
横滑り防止装置の効果
独立行政法人自動車事故対策機構は、横滑り防止装置の事故低減効果を以下のように発表しています。
車両単独事故…約44%減少
正面衝突事故…約24%減少
またEUのHPでも、横滑り防止装置で「車両単独事故や正面衝突事故が30~35%減少する」という日本の調査結果が紹介されています。
背の高いクルマでは特に重要
近年はミニバンや、軽自動車でもスーパーハイトワゴンといった背の高いクルマが人気です。車高の高いクルマは重心が高く、横滑りを起こすと横転の危険性が高まります。そのため横滑り防止装置の搭載が特に重要です。
新車では既に装備が義務化されていますが、低年式の中古車を購入する場合は横滑り防止装置の搭載有無を確認しましょう。
メーカーごとの名称一覧
横滑り防止装置の名称はメーカーによって異なります。主要メーカーにおける名称は以下の通りです。
メーカー | 略称 | 名称 |
---|---|---|
トヨタ | VSC | ビークル・スタビリティコントロール |
日産、スバル | VDC | ビークル・ダイナミクス・コントロール |
ホンダ | VSA | ビークル・スタビリティ・アシスト |
マツダ | DSA | ダイナミックススタビリティコントロールシステム |
三菱 | ASC | アクティブスタビリティコントロール |
スズキ | ESP | エレクトリック・スタビリティ・プログラム |
ダイハツ | DVS | ダイハツ・ビークルスタビリティコントロールシステム |
オフスイッチの意味と使用場面
横滑り防止装置には、実はオフスイッチが存在します。これは雪道やぬかるみでスタックした時に敢えて機能を外し、タイヤを空転させるためです。
横滑り防止装置が作動すると、タイヤの空転が抑制されます。しかしスタック時はエンジンの回転数を上げ、タイヤをある程度空転させなければいけません。そのため横滑り防止装置の機能をオフにして対処します。
クルマ選びでは安全性能を重視して
近年は様々な予防安全装備の義務化が進み、事故件数も減少しています。しかし新車であっても、メーカーや車種、ボディタイプによって予防安全装備の差は大きいです。そのためクルマ選びでは安全性能もチェックしましょう。
ガリバーでは、クルマの安全性をメーカー横断で評価した「安全な車ランキング」を公開しています。ボディタイプごとの注目ポイントも解説しているので、ぜひクルマ選びの参考にしてください。
ブレーキに備わる機能、ABSやEBDとは?
クルマの三原則、「走る・曲がる・止まる」の中でも、もっとも大切な「止まる」を支えるブレーキ。
「ディスクブレーキ」あるいは「ドラムブレーキ」という基本構造は今も昔も変わらないものの、現代のクルマにはさらに安全性を高める制御技術が盛り込まれています。
今回は、ブレーキに備わる機能をご紹介していきましょう。
ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)
今では軽トラックなど一部のクルマを除き、ほとんどの車種で標準装備となったABS。急制動時にタイヤがロックするのを防止するシステムで、ブレーキを強く踏むことで作動します。グリップを失わないように制御するため、ステアリング操作がしやすくなるのがその効果です。
動作時には、「ゴゴゴッ」という音とともにブレーキペダルに振動が伝わるため、「壊れたのか?」と驚く人もいるようですが、これが正常な動作反応ですのでご心配なく。
EBD(電子制御制動力配分システム)
最近のクルマのABSは、必ずといっていいほど「EBD付きABS」と書いてあります。
「Electronic Brake force Distribution」の略であるこの装置は、前後・左右のブレーキバランスを自動的に調整するもの。積載時の制動性アップやコーナリング時の車両姿勢の安定化に寄与します。「EBD付きABS」と表示されるのは、ABSの油圧制御装置を利用して作動するためです。
ブレーキアシスト
こちらは、ブレーキを踏み込む速度や力を検知して、クルマが「緊急ブレーキだ」と判断した場合、制動力を高めてくれるシステムです。
ドライバーの約半数が、緊急時に十分なブレーキ操作ができていないという調査があり、ドライバーのブレーキ操作を補助する目的で開発されました。ABSとともに多くのクルマに装備されています。
普段、何気なく踏んでいるブレーキペダル。この先には、これだけの制御システムがついていて、ドライバーをサポートしてくれていると思うとありがたいものですよね。
でも、もちろん過信は禁物。余裕を持って十分なブレーキ操作ができるよう、安全運転への心がけは忘れないでください。
なお、年式やグレードによっては装備されていないシステムもあるので、ご自身でお乗りのクルマに何がついているか改めて確認し、マイカーへの知識を深めておくことをオススメします!
自動ブレーキ技術の「AEB(衝突被害軽減ブレーキ)」とは?
AEBとは「Autonomous Emergency Braking」の略で、警告音やブレーキ制御により衝突事故の回避・被害軽減を支援する装置です。
日本語で「衝突被害軽減ブレーキ」と呼ばれる他、「AEBS(Autonomous Emergency Braking System)」「先進緊急ブレーキ」といった呼び方もあります。また、消費者の間では「自動ブレーキ」と呼ばれることが多いです。
高齢ドライバーの増加や居眠り運転による重大事故の発生などから、近年日本では国を挙げてAEBの普及が進められています。
Q AEBとABSは何が違うの?
A「ABS(Anti-lock Brake System)」は、ブレーキを強くかけた時にタイヤがロックされるのを防ぐ機能です。事故の回避などに役立つ点はAEBと共通していますが、機能の仕方は全く異なります。