全方位ほぼ死角なし!スバル「クロストレック ストロングハイブリッド」に乗ってわかったハイレベルの完成度
世界でポルシェとともに低重心の搭載が可能になる水平対向エンジンを採用し、シンメトリカルAWD、アイサイトなどを搭載するスバル車のラインナップの中でも、インプレッサのクロスオーバー版であるクロストレックは、一般ユーザーはもちろん、自動車専門家の評価も高い、出色の出来の1台と言っていいモデルだ。全長4480×全幅1800×全高1575mmという比較的コンパクトなボディサイズも扱いやすさに直結する。
全方位ほぼ死角なしのクロスオーバーモデル
そのこだわりある2ピニオン電動パワーステアリングによる、スムーズでリニアなステアリングフィールと抜群の操縦性、マイルドハイブリッドの濃厚でトルキーな動力性能、オールシーズンタイヤ装着にしてクラスを超えた上質極まる乗り心地、これまたクラスを超えた車内の静かさ=静粛性、カーブも安心安全な低重心感覚に徹した確かなトレース性能、そして3つのカメラによるアイサイト史上最上の安全性能=新世代アイサイトの搭載、悪路、雪道、アウトドアライフにうってつけの、レイバックにないXモードによる高い悪路の脱出性能(AWD/2モード、ヒルディセントコントロール付き)、スバルスターリンクのつながる安心としてSOSコール、オペレーターサービスなど、全方位ほぼ死角なしのクロスオーバーモデルに仕上がっているのだ。安全性能に関しても、自動車安全性能でNo.1を獲得(2023JNCAPファイブスター大賞受賞)したほどである。
とはいえ、水平対向エンジン×AWDモデルゆえの燃費性能にちょっと抵抗を感じているスバルファン、潜在的スバルユーザーもいるに違いない。クルマはとてもいいけれど、燃費がもっと良くなればなぁ・・・というわけだ。
が、その心配、不満は今、一気に解消されたのである。そう、スバル初の次世代e-BOXER=シリーズ・パラレル式のストロングハイブリッドが、まずはクロストレックに搭載され、発売されたのだ。
何しろ、これまでのマイルドハイブリッドモデル(e-BOXER)に比べ、燃費は約20%向上。つまり、クロストレックのマイルドハイブリッドモデルの15.8km/Lに対して、ストロングハイブリッドは一気に18.9km/Lに向上(WLTCモード燃費)。
結果、スバルのAWD車史上、最上の燃費性能を実現することになったのだ。これはスバリストにとっても、スバルのクルマは欲しいけれど、燃費がちょっとね・・・と躊躇してたスバリスト予備軍の人にとっても、大きなニュースと言っていい(マイルドハイブリッドモデルも併売)。
そこで、クロストレック ストロングハイブリッドモデル=Premium S:HEV EXを借り出し、東京~南房総を往復するドライブを決行。最初に言ってしまえば、実燃費として18km/L台を出すのは容易で、実際、高速約60%、一般道約40%の行程を普通に走って、スバリスト驚愕!?の実燃費19.9km/L(WLTCモード超え)を平然と叩き出したのだから、驚きを隠せない。
その数値は、この季節の備えとしてスタッドレスタイヤを装着しての実燃費!! だから、標準のオールシーズンタイヤであれば、さらに伸びたはずである。
付け加えれば、AWDシステムは、ストロングハイブリッド車の4WDによく見られる電気式(トヨタのE-Fourなど)ではなく、本格SUVに準じる機械式AWD(燃費面では不利!?)を継承しているのだから、いかにハイブリッドシステムの燃費性能が優れているかが分かるというものだ。
そんな驚異的な実燃費を水平対向エンジン×AWDで実現したハイブリッドシステムを説明すれば、エンジンはこれまでのクロストレックの2Lではなく、新開発の2.5Lのストロングハイブリッド専用ユニットを搭載。
スペックはマイルドハイブリッドの145ps、19.2kg-mに対して160ps、21.3kg-mを発揮。モーターもマイルドハイブリッドの13.6ps、6.6kg-mから一気に119.6ps、27.5kg-mへと高まっている(駆動用バッテリーは118Vから260Vに)。まさにストロングを名乗るのに相応しいモーターパワーを持つハイブリッドモデルになったことになる(車重はマイルドハイブリッドモデルに対して約50kg増でしかない)。
おかげでEV走行比率が増え、さらに加速力もアップ。具体的には0-100km/h加速はマイルドハイブリッドモデルより2.1秒も速いとされている(スバルの社内データ)。つまり、燃費性能だけでなく、動力性能まで向上したことになる。
しかも、燃料タンクをこれまでの48Lから63Lに増大。ストロングハイブリッド化と合わせ、航続距離はマイルドハイブリッドモデルに対して約60%伸び、満タンで1000kmの無給油ロングドライブも可能であり、ドライブそのものにさらなる余裕が生まれるわけだ。
後編では、スタッドレスタイヤを装着したクロストレックストロングハイブリッドモデルの実際の走りや、見事な良ポイントについて紹介していく。
安心安全かつ疲れ知らずのドライブを楽しめる!
さて、スタッドレスタイヤを装着したクロストレックストロングハイブリッドモデルの走りについてだが、高速走行でのうねり路面、段差の通過を含め、乗り心地は速度を問わず文句なしに快適そのものだ(マイルドハイブリッドも同様。オールシーズンタイヤならさらに快適)。とにかくボディ剛性の高さと前席のかけ心地の良さ、ショックを直接的に伝えないしなやかな乗り味、そして外乱からの収束性が見事なのである。
2.5Lとなった水平対向エンジンの全域での静かさにも驚かされた。いわゆるボクサーサウンドは影を潜め、水平対向エンジンならではの濃密でウルトラスムーズな回転上昇に伴うエンジンノイズのキャビンへの侵入はごく抑えられ、アクセルペダルを床まで踏むようなことをしない限り、車内は平和に、静かに保たれる(レイバックほどではないが)。これがもし、これまでの2Lエンジンであれば、これほどまでの車内の静かさ、ジェントルでゆとりあるトルクがもたらす走りの上質なテイストは得られなかったのでは・・・と思えたのも本当だ。今回はスタッドレスタイヤを装着しているのだが、これが標準の、開発陣が「想定外の仕上がり」と言い放った、乗り心地の良さ、ロードノイズの小ささが自慢のファルケンのオールシーズンタイヤであれば、さらに快適な走り、ドライブが可能になることは、マイルドハイブリッドモデルでの試乗経験からも、明らかだ。そして最低地上高200mm!!の悪路走行にも強いクロスオーバーモデルにして、山道のカーブや高速レーンチェンジを含むいかなる走行シーンにおいても実感できる低重心感覚と安心感ある操縦性の良さを味わうことができたのだからびっくりだ。それはストロングハイブリッド化による前後50:50に近い重量配分の恩恵でもあるはずだ。
今回、試乗したのは繰り返しになるけれど、最上級グレードのPremium S:HEV EX。アイサイト、アイサイトセーフティプラスはもちろん、スバル自慢の高度運転支援システム、”アイサイトX”まで標準装備する上級グレードだった。つまり、高速道路での渋滞時ハンズオフアシスト、アクティブレーンチェンジアシスト、カーブ前減速制御などが加わる最先端の先進運転支援システム搭載車であり、高速走行での運転に関わるストレスは渋滞時を含め最小限。一般道や山道走行を含め、まさに安心安全かつ疲れ知らずのドライブを楽しむことができたのである。パワーステアリングはやや重めの設定だが、いつまでもステアリングを握っていたくなる運転感覚だったとも言い変えられる。
最後に価格だが、ストロングハイブリッドモデルはPremium S:HEVが383.35万円~。試乗したPremium S:HEV EXは405.35万円~となる(EXはナビゲーション機能標準装備。ストロングハイブリッドモデルのAC100V/1500Wアクセサリーコンセントはオプション)。ちなみにマイルドハイブリッドのTouringは301.4万円~(マイルドハイブリッドモデルのナビゲーション機能はオプション)。ここで余計なお世話を言わせてもらうと、クラス上で乗り心地や静粛性で上回る、1.8L BOXER 直噴ターボ “DIT”搭載のレイバックは399.3万円~(ナビゲーション機能、アイサイトX、ハーマンガードンサウンドシステム標準装備。Xモードは不搭載)。こちらのWLTCモード燃費は13.6km/Lと、さすがにストロングハイブリッドには及ばないものの、車格、クロスオーバーモデルにして大人っぽいエクステリアデザイン、後席やラゲッジルームのゆとり、後席エアコン吹き出し口(クロストレックは未装備)の装備を含め、アイサイトX装着車同士で価格が接近する両車の間で悩める人は悩めるかも知れない・・・
とはいえ、AWD×スタッドレスタイヤ装着で18km/L台から最高19.9km/L(エアコン使用。高速約60%、一般道約40%走行時)という今回のストロングハイブリッドモデルの実燃費の説得力は絶大だろう。
そしてロングドライブ、悪路走行の機会が多いユーザー、アウトドア派には、そのスバル車史上最上の燃費性能に加え、脱出性能を高めるXモードと車内外で1500Wまでの家電品が使えるAC100V/1500Wコンセント(災害時にも有効)がオプションで用意されるクロストレックのストロングハイブリッドモデルに軍配が上がりそうだ。が、301.4万円(FWD)から手に入る、文句なしの操縦性能、乗り心地や車内の静かさが魅力のマイルドハイブリッドモデルの仕上がりの良さにも注目だ。どのグレード、パワートレーンを選んでも満足できるのがクロストレックなのである。