コメの高騰「自民党の2枚舌」が原因だった!日本の農家を騙し続け、消費者を叩く農水省の大問題

コメの高騰「自民党の2枚舌」が原因だった!日本の農家を騙し続け、消費者を叩く農水省の大問題

「令和のコメ騒動」とも言われた、昨夏のコメ不足と価格高騰。それを受けて、農林水産省は政府備蓄米の放出を決めた。政府は「新米が出てくれば価格は落ち着く」などと説明するが、経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏は「コメ不足騒動は一過性の問題ではない」と語る。その背景にある問題点とはーー。

「通常の流通ルートに米が集まっていない」コメ価格高騰の政府の見解に疑問

 農林水産省は、2024年産米の価格高騰について「供給が不足しているわけではないが、通常の流通ルートに米が集まっておらず、流通が滞っている」との見解を示している。具体的には、大手集荷団体(全農系・全集連系)への集荷量が減少し、生産者や小規模な集荷業者が在庫を保有し、さらには積み増していることで、在庫が分散し、実際の供給に時間を要しているとの認識である。

 まるで、自分たちや自分たちの影響下にない組織が流通を担っていないために価格が高騰しているとでも言いたげな説明である。あたかも「転売ヤー」や、行政の目が届かない主体の責任にしておけば、自分たちは責任の追及を免れることができると考えているかのようである。しかし、この見解には複数の点で疑問が残る。以下、公的な統計や信頼性の高い資料に基づき、客観的に検証・評価していく。農林水産省農産局が2025年3月に発表した『米政策の推進状況について』には、次のような記述がある。

『米の円滑な流通の確保のための対応』

生産量は前年産よりも多い一方で、集荷の大宗を担う全農系・全集連系に米が集まっていない(対前年▲21万トン〈12月末時点〉)ことから、生産者や小規模な集荷業者が在庫を保有・積増ししていると推察。在庫が分散していることで、円滑な供給に滞りが生じている状況。

全体として供給に不足が生じているものではないものの、通常の供給ルートではない流通が増えたことで供給が滞っている可能性が高い。このため、昨年の品薄のようなことが起きないよう、政府備蓄米の集荷業者向け買戻し条件付き売渡しを実施。

※筆者注:「大宗」とは「大部分」「主な部分」「中心となるもの」といった意味を持つ漢語である。現代の一般的な文章としては不親切な表現であり、「中心的な担い手」や「主な集荷先」など平易な言葉に置き換えるべきである。従来から使われてきたからという理由だけで今回も使用するその姿勢には、農政当局の前例踏襲主義と硬直的な行政体質が透けて見える。

農林水産省の説明には「4つの問題点」

 この記述が意味するところはこうである。「米は十分に生産されているが、大手の集荷団体(全農や全集連など)に集まっていない。そのため、生産者や小規模な集荷業者が在庫を抱え、結果として在庫が市場のあちこちに分散している。供給そのものに不足はないが、通常のルートを通らない流通が増えたことで、円滑な供給に支障が生じている」という状況説明である。

 しかし、こうした農林水産省の説明には、少なくとも4つの問題点がある。

 まず第1に、米価がここまで高騰しているにもかかわらず、「単に流通がうまくいっていないだけ」という説明は明らかに不十分である。農水省の資料によれば、令和6年産米の平均価格は60キロあたり24,383円であり、前年より9,068円も高く、上昇率は59%に達している。さらに、2025年2月の平均価格は26,485円で、前年同月比で73%もの上昇となっている。これほどの価格上昇を「流通がやや滞っているだけ」とするのは、原因を過小評価しているとしか言いようがない。

 第2に、「大手の集荷団体に米が集まっていないために流通が滞っている」という説明に対し、それを否定するようなデータも存在する。たしかに、生産者から集荷業者への集荷量は前年を下回っていたが、その集荷業者がスーパーや小売店に販売した数量は、前年より66,000トンも増加していた。つまり、販売側の流通はむしろ活発化していたのであり、「流通の滞りが価格高騰の主因である」という説明とは矛盾している。

 第3に、米の生産コスト自体が上昇しているという事実がある。たとえば、令和2年(2020年)と比べて、光熱費は約130%、肥料代は約137%にまで増加しており、3〜4割のコスト増となっている。農業者は従来以上に高いコストをかけて米を生産しており、結果として販売価格が上がるのは当然の帰結である。

 第4に、流通にかかる諸費用の上昇も無視できない。たとえば、倉庫での保管料、輸送費、品質検査費、広告宣伝費、販売手数料などを合算すると、60キロあたり約2,000円、すなわち全体の約10%が流通コストとして上乗せされている。加えて、人件費や燃料費(特にガソリン価格)も上昇しているため、物流コスト全体が増加しているのは避けられない現実である。

約半世紀にわたり「減反政策」を続けてきたことも原因

 以上の観点からすれば、「米は足りているが流れが悪くなっているだけ」という農水省の説明には重大な問題がある。価格高騰の原因は、在庫の分散という単一の要素に還元できるものではない。肥料・燃料などの生産コストの上昇、既存の集荷・販売の仕組みの陳腐化、さらには物流コストの増大など、複数の要因が複雑に絡んでいる。農水省の説明は、それら構造的な問題に目を向けず、表層的な現象だけを捉えているように見える。

 こうした原因分析が甘いということは、政府が現在進めている「備蓄米の売渡し」も、本質的な解決策になっていないということを意味している。

 政府は、1970年から約半世紀にわたって「減反政策(生産調整)」を続けてきた。これは、「米を作らなければ補助金を出す」という仕組みであり、長年にわたり農業の健全な発展を阻害してきた。具体的には、農家の意欲が低下し、水田の自由な活用が制限され、日本の農業の競争力が弱体化した。補助金依存の体質が常態化し、結果として農業の担い手の高齢化も加速した。

 農林水産省自身も、2014年度『食料・農業・農村白書』の中で「生産調整の継続は、需要に応じた生産や販売への関心を低下させ、農業の構造改革を妨げてきた側面がある」と記しており、政策の失敗を渋々ながら認めている。

国産米の輸出支援にも消極的…ポテンシャルを発揮できていない

 2018年に生産調整制度は形式上廃止されたが、現在も「水田活用の直接支払交付金」などを通じて、作付けや品目の選択を政府が実質的に誘導している。このような状況で「減反はすでに終わった」と主張するのは、実態を無視した責任逃れに等しい。言い換えれば、二枚舌である。

 さらに深刻なのは、政府が長年にわたり国産米の輸出支援に消極的だった点である。2000年代の日本のコメ輸出量は年間5,000トン未満にとどまっていた。日本産の米は海外で高品質なブランドとして評価されているにもかかわらず、販路の開拓や制度的支援はほとんど進まなかった。農林水産省が策定した『コメの基本方針』(令和4年)でも「近年ようやく輸出が増え始めた」と記されており、過去の対応の遅れを事実上認めている。政府は2030年までに米の輸出を35万トンに拡大する方針を掲げているが、ミニマムアクセス米の輸入枠約77万トンには遠く及ばない。

「対策を講じている」政府は二枚舌・三枚舌で国民を欺く

 この結果、日本のコメは本来持っていた国際的な競争力を生かす機会を逃し、国内の農家は「作らなければお金が出る」という、歪んだ制度の中に長期間放置されてきた。令和6年産米の価格高騰に対しても、政府は「備蓄米の一時放出」など短期的な対応に終始しており、根本的な農政の見直しは遅れたままである。

 消費者が高すぎる米価に苦しんでいる現状を直視すれば、今こそ農政の抜本的な転換が求められている。平時には生産を拡大して米をはじめとする農産物を輸出し、有事には輸出向けの供給を国内に切り替える――そうした柔軟かつ安定的な戦略が必要である。一部に噴出する農家への直接支払制度(ベーシックインカム)は、諸外国で採用されている実績があるものの、非効率性が格段に増すことも判明している。かつて石破茂首相もこの制度を支持していたので注意が必要であろう。石破首相は、野党の提案には増税を示唆してくさすものの、自分のやることにはとことん甘いところがある。

 農林水産省と自民党は、備蓄米の放出によって「対策を講じている」という印象を演出しつつ、自らが長年にわたって犯してきた政策的失敗の責任から逃れるために、二枚舌・三枚舌で問題の本質を曖昧にしようとしている。こうした姿勢は、国民の信頼を損ねるばかりである。

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この人に任せればコメ価格は下げられる…農政の専門家が名前をあげるJA農協にメスを入れられる唯一の人物

石破茂首相が「強力な物価対策を行う」意向を示した。コメ価格は下がるのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「市場を独占して価格を操作しているJA農協がある限り、コメの値段は下がらない。本気で物価高対策を行うなら、ここにメスを入れるべきだ」という――。

■「コメ価格を下げる」と言及した石破首相

 3月25日、石破茂総理は「予算成立後、コメやガソリンを念頭に強力な物価高対策を実施する」旨述べたと報道された。

 予算成立に向けて協議している最中に飛び出した発言に、参議院の与野党の国対委員長は怒り心頭だが、コメ対策は早急に行わなければならないことは事実だ。問題は、何をやるかである。効果のない対策を講じても意味はない。

 コメのような食料・農産物については、価格は需要と供給で決まる。

 需要が増えれば、または供給が減れば、価格は上昇する。逆の場合には、低下する。豊作になればキャベツの価格は暴落し、長雨などで不作になれば急騰する。中学校で習う経済原則である。

 昨年の夏以降、農水省は新米(24年産米)が供給されるようになると米価は下がると言ってきた。しかし、逆に米価は高騰した。これは23年産米が猛暑等によって供給が40万トンほど減少し、この分を本来24年10月から消費するはずの24年産米から先食いしたからである。“消えたコメ”などはない。そもそも供給が端から40万トン減少していたから、需要と供給の経済学で米価は上昇したのである。

■備蓄米放出も価格が下がらないワケ

 新米が出回っても、それは年間消費されることを前提に供給される。年間の供給が40万トン不足していれば、価格が上がるに決まっている。残念ながら、農水省はこの基本的な経済学を理解してなかった。さらに、24年産米が供給される予定の10月から半年たった中間時点の3月になっても、民間の在庫量は前年同月比で40万トン減少していると思われる(24年10月から25年1月まで前年同月比44万トン減少)。同じ40万トンの不足でも、500万トンのコメの供給が必要な昨年10月時点より、250万トンのコメの供給が必要な今年3月時点の方がより供給不足は深刻である。だから、コメの値段は昨年9月から上昇していったのだ。

 では、備蓄米の放出量を増やせばよいのかというとそうではない。

 備蓄米が放出されても、コメの値段が下がる兆しが見えない。それは、農産物の中でもコメについては、JA農協という独占的な組織が存在するからである。

■コメ市場を独占して価格を操作

 JA農協の由来と力を説明しよう。

 戦後日本は大変な食糧難に見舞われた。浮浪者がたむろした上野駅では毎日数名の餓死者がでた。戦時中から食糧が不足していたため、政府は1942年の食糧管理法によって国民に平等にコメを供給する配給制度を実施していた。それに加え、1945年産米が大不作でヤミ値が高騰した。農家は政府に売らずにヤミ市場にコメを売った。それでは配給制度を運用する農林省にコメが集まらなくなるので、戦前の統制団体を改組してコメの集荷にあたらせようとして農林省が作ったのがJA農協である。

 酪農にはJA農協以外に酪農業協同組合(専門農協という)が存在し、生乳の集荷・販売にあたっている。しかし、コメについてはJA農協以外に農協はない。独占的な市場支配力を行使したいJA農協は、コメについては専門農協を作ることを許さなかった。食糧管理制度が存在していたころ、生産者からのJA農協の集荷率は95%に達していた(残りの5%は全集連という商人系)。

 これまでもJA農協はコメの値段を操作してきた。豊作で米価が下がりそうなのに、在庫操作によって、逆に上がったときもあった。

 2011年まで公正なコメ取引のセンター(「全国米穀取引・価格形成センター」)が存在した。しかし、圧倒的な市場支配力を背景に卸売業者と直接交渉(相対取引という)して値決めした方が有利だと判断したJA農協は、このセンターの利用を拒否するようになったため、同センターの利用は激減し廃止に追い込まれた。

■コメの先物取引もJA農協に潰された

 先物取引は、農家にとって経営を安定させるリスクヘッジの機能を果たす。

 戦時中統制経済に移行するまで、コメの価格形成は1730年創設の大阪堂島のコメ先物市場で行われてきた。大阪堂島のコメ市場は世界最初の先物取引の市場だった。ところが統制経済に移行すると自由な取引は否定され、1939年に堂島市場は閉鎖された。コメの統制を完成したのが1942年の食糧管理法だった。同法が1995年に廃止されて以降、先物取引の申請が商品取引所から度々行われたが、コメ価格の操作が困難となると判断したJA農協の反対により潰されてきた。現在指数取引がやっと認められたに過ぎない。

 コメは保存が利くので、独占力を持つJA農協は在庫操作による価格操作を行いやすい。同じく政治力を発揮する酪農については、生産物は保存が利かない生乳である。農業団体が需給操作をしようとすると、生乳を川に投棄するなどで廃棄処分するしかない。このため、生乳の供給管理は、それをバターと脱脂粉乳に加工して行うしかない。その在庫を管理するのは乳業メーカーであって、酪農業協同組合ではない。

■JA農協が絶対にコメ価格を下げない理由

 今回JA農協がコメの値段を下げようとしない二つの特別の理由がある。

 一つは、JA農協は、24年産の集荷量が落ちたため、25年産米については、24年産の179万トンから48万トン上積みし227万トンにするという目標を掲げている。そのために、農家に高い概算金(後に実際の売買代金で調整される仮渡金)を提示しようとしている。既にJA全農にいがたは農家への概算金を昨年の60キログラム当たり1万7000円に対し35%増の2万3000円とした。しかも、これは最低保証価格だという。概算金はあくまでも仮渡金だが、後に米価が下がり農家から過剰に支払った価格分を取り戻そうとすると、農家は次から農協に出荷しなくなる。JA農協としては、高く提示した概算金の水準を維持しようとするしかない。

 次に、備蓄米について、農水省は1年後の買い戻し特約を付けて農協に販売した。買い戻すことは一年後に同量を市場から引き上げることなので、その時点での米価を上昇させる。さらに、JA農協としては買ったコメと同量のコメを一年後政府に売らなければならない。高く買って安く売ると損をする。今回農協の買い付け価格は60キログラム当たり2万1000円となった。現在の2万6000円の相対価格(卸売業者への農協販売価格)よりも安いが、平常年の1万5000円に比べると高い水準である。JA農協としては、備蓄米の売買で損失が出ないようにするためには、米価を2万1000円以上に維持する必要がある。

 つまり、備蓄米放出に抵抗してきた農水省は、備蓄米が放出されても市場への供給量が増えずコメの値段が下がらない仕組みを組み込んだのである。これを正さないで石破総理が備蓄米の追加放出を決めてもコメの値段は下がらない。

■対策1「コメ政策を官房長官直轄とする」

 では、石破総理は何をなすべきだろうか?

 昨年夏から、農水省はコメの値段を下げることに否定的な態度をとり続けてきた。23年産米が猛暑の影響を受けていたことは23年秋にわかっていた。生産が減少し供給が不足したのだ。

 昨夏スーパーからコメがなくなった際、卸売業者等の在庫が40万トンも減少しているのに、卸売業者が売り惜しんでいるからだと卸売業者の責任にした。秋に新米が出始めると価格が落ち着くと誤った見通しを示した。しかし、最近に至るまで流通在庫が前年同月比で40万トン以上減少している状況からすれば、新米を先食いしていたことは明らかだった。供給が不足しているので、需要と供給の経済学通り、その後コメの値段は高騰した。

 すると、農水省は得体のしれない業者がコメ流通に参入し投機目的で買い占めているからだと主張を切り替えた。農水相も繰り返し、流通段階でコメがスタックしているからコメの値段が下がらないと発言している。“消えたコメ”である。これが農協の集荷量の減少21万トンに見合うのだと言った。一貫して流通業者が悪いのだという主張である。

 しかし、農水省は一度もこの“消えたコメ21万トン”の存在を明らかにしていない。どこかにあるはずなのに確認できない“幻のコメ”である。同省は、備蓄米の放出はこの流通の目詰まりを解消するためのもので、備蓄米を放出するとこのコメが市場に出てくると主張していた。そうであれば、市場の供給量が備蓄米の放出量の倍の42万トン増加し、米価は相当下がるはずだが、一向にその気配はない。遅ればせながら、騙されていたマスコミも、最近では“消えたコメ”はないのではないかと疑うようになってきた。また、既に述べたように、農水省は備蓄米を放出してもコメの値段が下がらない仕組みを組み込んでいる。

 要するに、農水省はコメの値段を下げる気はさらさらないのだ。農水省が目を向けるのは、JA農協を中心とする農政トライアングルである。米価を高め零細な兼業農家を温存してそのサラリーマン収入をJAバンクの預金として活用したいJA農協、その関連組織に天下りしたい農水省、JA農協が組織する票に依存する自民党農林族議員。かれらには、国民や消費者の姿は映らない。このような組織に、コメについての“強力な物価高対策”を任せることは不適当である。

 林官房長官は農水大臣の経験もあるし、農政トライアングルに染まっている議員でもない。官房長官の下で、コメ対策についての方針を決定し、それを農水大臣を通さずに直接農水省の業務担当に指示する体制を講ずるべきである。

■対策2「備蓄米は卸売業者や大手スーパーに直接販売に変更」

 現在備蓄米は、ほぼ全量JA農協に販売されている。JA農協は米価低下を恐れて備蓄米の放出に反対してきた。備蓄米21万トンが卸売業者に流れても、JA農協が従来卸売業者に販売していた21万トンを販売しなければ、市場への流通量は増えず、コメの値段は下がらない。これまでも、JA農協は在庫を調整することでコメの値段を操作してきた。

 食糧法(「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」)は備蓄米の放出先を農協などの集荷業者だけでなく、卸売業者やスーパーなどの流通業者にも認めている。農水省がその放出先を農協などに限定したのは、備蓄米を放出してもJA農協は市場への供給を増やさないという目論見があった。備蓄米は農協に販売することをやめ、消費者に近い卸売業者やスーパーなどに販売すべきである。

 同時に、備蓄米の買い戻し特約という条件を廃止すべきである。これまで、このような特約を付けて放出することはなかった。米価を下げまいとする農水省の姑息(こそく)な手段である。

■農水省の不誠実さを示す「汚染米事件」

 2001年のBSE発生に伴う混乱の際、農林水産省は“生産者重視の農政から消費者に軸足を置いた行政を展開する”と宣言し、出直しを表明した。

 にもかかわらず、2008年には汚染米事件が政治問題化した。汚染米事件とは、農林水産省から工業用の糊として売却されたカビや農薬で汚染されたコメを、「三笠フーズ」などが、焼酎、あられ、せんべいなどの加工用途、保育園の給食用、弁当等に不正に横流しをした事件である。

 農林水産省はこのような毒性の高い物質を横流し防止の着色・変形加工をしないまま、通常の主食用向けと同様の丸米と呼ばれる状態で三笠フーズに売却した。5年間に96回も実施したという売却後の横流れ防止の検査についても、農林水産省の担当者は三笠フーズの帳簿だけで売却先を確認し、帳簿上の売却先に出向いて確認しようとはしなかった。三笠フーズの担当者さえ、「商品の行き先をたどれば、簡単に虚偽を見抜けたはず」と話している。検査日を事前に三笠フーズに通告して検査していた点も国会で追及され、担当局長は検査の杜撰さを認めた。汚染米事件は2007年1月に不正な横流しが行われているという告発が残留農薬検査書付きで農林水産省になされたが、担当課長は農政事務所に告発書は示さず、三笠フーズに対する在庫確認を指示しただけで、真剣に調査しようとしなかった。

 この事件をきっかけに、農水省はコメのトレーサビリティ法(「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」)を作り、生産から販売・提供までの各段階を通じ、取引等の記録を作成・保存させることにした。これをキチンと運用していれば、“消えたコメ”などありえない。懲りないのだ。

■かつて農水省改革が掲げられたが…

 このような中で、2008年9月に就任した石破農林水産大臣は、農林水産省の中堅職員に11月「農林水産省改革のための緊急提言」をまとめさせた。

 この提言は極めて率直である。冒頭

今回の汚染米問題で農林水産省の信頼は完全に失墜した。(BSE問題の際)職員は消費者の視点、国民の健康を守る意識を最優先することを誓ったはずであった。にもかかわらず今回の問題が発生した。この時点で、省としての使命を果たせない以上、農林水産省は廃止されて然るべきとの審判が国民から下されたと、職員一人一人が自覚するべきである

 と厳しい自己批判を行っている。

 その上で、

① 国民のためにこそ存在するという使命感の欠如

② 事なかれ主義の調整型政策決定(直接的な利害関係者と調整すれば事足りるといった自己防衛的な政策決定がはびこる、政策の裏付けとなる事実を大切にして客観的・科学的な政策決定を行い、それを継続的に検証する意識も低下、特定の勢力の意向を強く反映した政策決定が行われる)

③ 攻めよりも守りを重視する消極的判断の横行(国民視点で果敢な政策を打ち出す人材が育ちにくい環境が形成されている。この結果、農林水産省においては今まで自分たちが行ってきた業務を守ることのみに力点が置かれ、自発的に改革に取り組む職員が阻害されることとなった)

 と指摘している。

■もう農水省は解体するしかない

 農林水産省で必要な能力とは、「特定の勢力の意向を聞く能力」「利害関係者と調整する能力」「いずれ自分がOBになることも考え、OBの天下り先の確保を含めた農林水産省の組織維持に貢献できる能力」「上司や自民党農林族にゴマすりを行う能力」であって、経済学等を応用して農業や農村の実態を客観的・科学的に分析し、国民のために適切な政策を企画・立案・実現する能力ではなかった。

 何度も同じ不祥事が繰り返され、その都度反省や二度と問題を起さないという誓いがなされるが、すぐに元に戻ってしまう。また、今回のコメ不足の根本にある“減反政策”を廃止するためには、これを推進してきた農政トライアングルを消滅させなければならない。国民は本気で農水省の解体に着手しなければならないときが来たのかもしれない。

《コメ高騰》「転売ヤーが原因」は間違い...?備蓄米放出後も《最高値更新》で「話が違う」の声殺到、「犯人不明の米騒動」の謎

備蓄米の放出は始まったのに…

長引く「令和の米騒動」を受けて、政府はついに備蓄米の放出という切り札に手をつけた。まずは14万トンの備蓄米を対象に入札が行われ、3月18日には落札された備蓄米の引き渡しも始まった。

前回の記事『【コメ高騰】切り札《備蓄米放出》が決定したが…「転売ヤー」も続々参入『マネーゲーム化』を防げなかった「政府の失策」』にて、筆者は備蓄米の放出が決定した以上、「これ以上に米価が上がるとは考えづらい」と説明した。しかし、恥ずかしながら、その目論見は見事に外れている。

最高値を更新し続ける米価

備蓄米の放出決定後も、米価は上昇の一途をたどっている。JAなどの集荷業者と卸売業者の取引価格にあたる相対取引価格は過去最高を更新し続け、2月には60kgあたり2万6485円(2024年産米)を記録した。昨年同時期に2023年産米が1万5303円だったことと比べると、実に70%以上の高騰幅だ。

この状況に対し、SNSなどでは「話が違う」という声が多く上がっている。事前の見立てでは、備蓄米の放出が決まれば、米価がこれ以上高くなる可能性は低いという予測が支配的だった。

卸売業者からは「スーパーの店頭で10kg入りの袋が売れなくなってきている」という声も上がっており、消費者のコメ離れに拍車がかかることへの警戒感も高まっている。

もっとも、備蓄米は引き渡しが始まったばかりで、まだ一般に広く流通する状況には至っていない。実際、江藤拓農水相も「備蓄米の価格はまだ米価に反映されていない」と述べ、今後の動向を注視する構えを見せている。

「業者悪玉論」は正しかったのか

だが、“備蓄米放出”という政府の英断が、思ったような効果を見せていないことは間違いない。

というのも、これまで農水省は「一部のブローカー的な業者による、売り惜しみといった投機的な行為が米価高騰の原因」と分析してきた。米が空前の高値相場となるなか、さらなる高騰を期待した業者が米を抱えこみ、流通をストップさせていることが理由だと考えられてきたのだ。

そこで、政府が大量の備蓄米を放出して相場の下落を引き起こせば、これまで売り惜しみしてきた業者から米が出回り始め、流通の目詰まりが解消できる。農水省の狙いはここにあった。

さらにいえば、備蓄米の流通が始まる前にも米価は下落に転じるはずだった。米を抱え込んでいる業者は、備蓄米が出回って相場が下がる前に売りさばこうと考えるはずだからだ。

しかし、現実はそうならなかった。備蓄米の放出が決まった後も、何食わぬ顔で米価のグラフは上がり続けたのだ。「一部の業者が米をため込んでいる」という、政府が示してきた分析結果が実は間違っていたという可能性が色濃くなってきた。

備蓄米はいくらで売られたのか?

さらに、もう1つ注意すべきは、今後、備蓄米がわれわれの手元に届くようになったとしても、米価が劇的に下がる見込みは薄いということだ。

その理由は至ってシンプルである。政府から民間業者に売り渡された備蓄米の金額がそこまで安くないためだ。

もちろん、これは政府の策略とか、そういった問題ではない。単純な市場原理の話だ。多くの業者が米を求めている状況で備蓄米の入札を行えば、落札価格がそんなに安い金額で収まるはずがない。

すでに引き渡しが始まった備蓄米の場合、落札平均価格は税込換算で約2万3000円だ。直近の相対取引価格が2万6000円を超えていることと比べるとそれなりに安く見えるが、ここに流通経費などが上乗せされると、その価格差はさらに小さくなる。この結果について、「需給の状況を考えればこうなることは想定内」と評価する専門家もいれば、「予想より高くなってしまった」と嘆く業界関係者の声も聞かれる。

備蓄米の放出決定による相場への牽制効果は想像以上に弱く、流通が始まっても劇的に米価が下がる見込みは薄い。備蓄米の放出というのは政府にとって相当な大仕事だったはずだが、期待通りの成果が出るかどうか、雲行きは怪しくなっている。

「犯人不明」の米騒動

筆者も政府の分析結果に則って記事を書いてきたことは間違いないので、仮に政府の見解が不正確だったとしても、そのミスをあげつらうつもりはない。むしろ、その内容をそのまま発信してきたことについては大いに反省しなくてはいけない。

だが、これまでの見立てが間違いだったとすると、米価高騰の元凶は一体どこにあるのだろうか。

米の流通実態を完全に把握することは不可能である以上、その原因を今すぐに特定することはできない。一部メディアなどでは「夏に向けた米不足の再来に備えた業務用の買いだめが原因」という見方も報じられているが、現場では「やっぱり米の生産量が少なかったのでは」という声も上がっている。ある農家は「温暖化による品質の劣化が米不足につながっている側面は無視できない」とも話す。

騒動の“真犯人”は不明だが、いずれにせよ「令和の米騒動」はいまだ突破口を見出せていない。

《コメ高騰》「2025年も高値になることは確実」「令和の米騒動は終わらない」…専門家がそう明かす「決定的な理由」

長引く「令和の米騒動」を受けて、政府はついに備蓄米の放出という切り札に手をつけた。まずは14万トンの備蓄米を対象に入札が行われ、3月18日には落札された備蓄米の引き渡しも始まった。

筆者は備蓄米の放出が決定した以上、「これ以上に米価が上がるとは考えづらい」と説明してきたが、恥ずかしながら、その目論見は見事に外れている。

米の流通実態を完全に把握することは不可能である以上、その原因を今すぐに特定することはできない。“真犯人”は不明だが、いずれにせよ「令和の米騒動」はいまだ突破口を見出せていないのが実情だ。

「25年産米も高値になることは確実」

ただ一つ、業界内で確実視されつつあることがある。

これから春、夏と季節が過ぎて、秋の新米季節になれば米価は下がるのか。この質問への答えがノーということだ。

現在の米価高騰の最初の引き金は、そもそも昨年秋の新米時期に、農協などが例年にない高値で農家から米を買い集めたことにあった。そして、今年秋の新米も昨年と同程度か、それ以上の価格で農家から買い集められる可能性が早くも濃厚になりつつあるからだ。

まだ春先なのにもかかわらず、なぜそのようなことが分かるのか。決定的だったのは、2月末の全農新潟県本部の動きだった。

全農新潟県本部は、県内の米を集めて全国に売り渡す商社機能を担っている。周知の通り、新潟県は日本最大の米の産地であり、その動向には強い影響力がある。

その全農新潟県本部は2月末、2025年産米について60kgあたり2万3000円(1等コシヒカリ)を最低ラインとして買い集める方針を発表した。これは、2024年夏に示された買い集めの基準に比べて35%アップということになる。

この狙いについて、県本部の担当者は「早めに価格を提示することで、確実に米を集荷したい」と話す。

しかも、今回発表された金額はあくまで「最低保証額」に過ぎない。つまり、実際にはこれ以上の金額で農家から米を買い集めることも予想され、そうなれば昨年から今年にかけての米価高騰が再来する可能性もある。

事実、新潟での決定を受けて、業界内では「2025年産米も高値になることはほぼ確実」という見方が広まっている。

「米騒動」以前、米は安すぎた

多くの読者の皆さんは「いつになったら米の値段が元通りになるのか」と心配されているかもしれない。だが、筆者も以前から指摘しているように、今までの米価が本当に適正だったのかどうかはよく考えなくてはいけない。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、米を育てるのに必要な肥料などの価格は急速に高騰している。2020年を基準にすると、肥料は最高で60%近く上がった。

これに対して、米の価格はむしろ下落傾向だった。米を育てるのに必要なコストは急激に高くなった一方で、米の値段は上がっていないという状況だった。「令和の米騒動」が始まる以前、米は安すぎたのである。

「1杯60円のごはん」は本当に高いのか?

もちろん、日本の主食に位置付けられている米が、消費者の手の届かない価格になってしまうことは問題だ。しかし、現在の状況においても、米の価格は茶碗1杯あたり約60円だ。今どき、ペットボトルのお茶1本でも150円近くすることを考えると、茶碗1杯あたり60円というのは負担不可能な金額だろうか。

3月24日付の日本農業新聞に掲載された論説において、九州のある農業者はこう書いていた。

「消費者は茶わん1杯分の米の価格を考えたことがあるだろうか。〜中略〜 どんぶり飯でも60~70円だ。この価格が本当に高いのだろうか。自動販売機の飲料はここ数年30~50円値上がりしたが、消費者もマスコミもほとんど騒がない」

これが農業者の本音だろう。そして、先に説明した新潟での決定が象徴しているように、農協もその思いを支持する方向で動き始めている。農協がかなり早くに米価を提示したことで、新潟県内の農家からは「田植え前に米価が出されたことで安心して米を作ることができる」として歓迎の声が上がっている。

これから先、米の価格が元通りになることはないのかもしれない。いささか急な展開に消費者の多くは戸惑っているが、数年続けばそのうち今の米の値段に慣れるのではないか。「令和の米騒動」は日本の米の“ニューノーマル”に向けた過渡期なのだろう。

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