Google の独占規制に新たな動き。司法省がChrome売却とAI投資制限を提案
GoogleはAppleやSamsungなどとの検索契約の自由化を主張し、政府の監視縮小を提案。
司法省はChrome売却や検索エンジン契約の禁止を求め、AI投資の事前通知も義務化。
Googleは反トラスト法違反判決に控訴を表明し、アドテク事業の裁判でも分割の可能性。
トランプ政権下でもGoogleに逆風
ドナルド・トランプ米大統領の2期目の就任式には、アルファベット(Alphabet)およびGoogleの最高経営責任者(CEO)であるスンダー・ピチャイ氏をはじめ、大手企業のトップが集まった。この顔ぶれを見た多くの人々は、巨大テクノロジー企業、いわゆるビッグテックが今後数年間、反トラスト法裁判を含め、順調に事業を展開できるだろうと考えた。
そのため、Googleが米司法省の高官と会談し、検索事業関連の反トラスト法裁判で命じられたChromeブラウザの売却を含め、以前に提案された独占是正策の取り下げを働きかけたことが明らかになると、多くの人々はGoogleの政治的影響力によって同社に有利な展開になると予想した。
しかし、先週後半の展開はその予想を覆すものとなった。ブルームバーグ(Bloomberg)は先週、「Googleは米国企業による技術支配の維持を主な理由に、独占是正案の取り下げを求めた」と報じたが、この試みは成功しなかったようだ。
ちなみに、アミット・メータ判事は昨年、検索市場におけるGoogleの戦術を違法と裁定している。
先週、司法省は「最終判決案」の修正版を裁判所に提出した。その主なポイントは、Googleに対してChromeの売却を改めて求めるとともに、デバイスやブラウザで同社の検索エンジンをデフォルト設定する契約を禁止する内容となっている。
3月7日に提出されたこの文書には、「Googleは、SiriやSpotlightを含むApple独自の機能や機能性に関して、米国内でGoogle検索をデフォルトの検索エンジンに設定する契約を締結してはならない」と明記されている。
Googleの独占規制に変更点。AI投資の禁止を緩和、検索広告規制を撤回
Googleに対する反トラスト法裁判に関連して出された最新の最終判決案では、当初の提案からいくつかの重要な変更が加えられている。
禁止行為の明確化:Googleの経済的対価に関する表現を、裁判所の要請に応じてより具体的な内容に修正した。
AI投資に関する事前通知:従来の是正案では、検索、検索テキスト広告、AI、アドテク領域における競合他社へのGoogleの投資を全面的に禁止していた。しかし、最終判決案では、投資、提携、買収などの際に「事前通知」を義務づける形に変更された。
Androidの売却:ただちに売却を求める要請は取り下げられたが、GoogleがAndroidを自社の利益のために不当に利用していると判断された場合、強制的な分離を求める方針は維持された。
シンジケーションとデータアクセス:データ共有に関する是正措置に大きな変更はないものの、過去の提案で「不明瞭」との指摘を受けたため、修正案には追加の説明が盛り込まれた。
検索テキスト広告:司法省は、「Googleは競合他社にシンジケートする検索テキスト広告の価格を限界費用に設定しなければならない」とする要件および「競合他社がGoogleからシンジケートする検索テキスト広告の割合を最大25%とする」規定を撤回した。
修正後の最終判決案は、裁判所の意見や要望を反映し、コンプライアンスの徹底を図るとともに、従来のバージョンで指摘された曖昧さを解消することを目的としている。
Googleの独占規制をめぐる攻防。デフォルト検索契約とアドテク事業が焦点に
Googleは、昨年12月に裁判所に提出した文書のなかで、「Apple、サムスン(Samsung)、ベライゾン(Verizon)を含むサードパーティのブラウザプロバイダー、端末メーカー、ワイヤレス通信事業者は、デフォルト検索エンジン契約を自由に結ぶべきだ」と主張していた。
Googleの法規制担当バイスプレジデントであるリーアン・マルホランド氏は、同社の提案について「法令遵守を担保し、政府による監視や介入を最小限に抑えつつ、プライバシー保護とイノベーションを推進するものだ」と説明している。
メータ判事は、3月後半に予定されている公聴会を経て、Googleに求める事業慣行の変更について最終判断を下す見込みだ。一方、Googleは反トラスト法違反裁判の当初の判決に対して不服を表明し、控訴する意向を示している。
また、司法省とGoogleは、同社のアドテク事業の適法性をめぐる別件の裁判でも、レオニー・ブリンクマ判事の判決を待っている。判決は数週間以内に下される見通しであり、司法省はこの裁判においても、オンライン広告市場におけるGoogleの支配的地位を是正するために、同社の事業分割を検討している。