失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料高騰問題」の深層

失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料高騰問題」の深層

ここ数年、自動車の保険料はじわじわと上昇している。だが、その中でもテスラの上昇率は突出している。車両価格の変動、修理費の高騰、そして市場の変化──テスラ特有のリスクとは?

テスラの車が、イーロン・マスク氏に対する怒りの矛先となっている。マスク氏はここ数カ月、ドナルド・トランプ氏の就任式でナチス式敬礼とみられるジェスチャーをしたことや、その後数週間で数千人の連邦職員の解雇を命じたことなどで物議を醸してきた。

マスク氏は、自身が所有するX(旧Twitter)上で批判を否定。「過激な左派」が自分をナチス呼ばわりしていると投稿し、反発を強めている。

しかし、米国内のみならず、ドイツや英国などの国々でも、テスラ車が攻撃される事態が相次いでいる。車が銃撃されたり、放火されたりするケースのほか、「スワスティカー(Swasticar)を買うな」と書かれたステッカーが貼られたり、大きな赤いスワスティカを描かれたりする被害も報告されている。

一部の所有者は「イーロンが狂う前に買った車です」と書かれたステッカーを貼るなどして自衛を試みているが、専門家は、テスラへの破壊行為が増えれば、すでに高額な車両保険のさらなる上昇を招く可能性があると警告している。

テスラの車両や販売店、充電ステーションは、マスク氏に対する抗議の格好の標的となっている。特に、マスク氏がトランプ政権の「特別政府職員」として果たしている役割が反発を呼んでいる。

マスク氏は、政府効率化局(Department of Government Efficiency、通称DOGE)の主導者として、連邦政府職員の大規模削減を進め、数千人の解雇や政府機関の予算削減を命じている。民主党議員らは、マスク氏の権限の合法性や、彼が事実上フリーハンドで政府機能に介入している点について疑問を呈している

EV革命の象徴とされてきたテスラも、マスク氏への反発によって深刻な打撃を受けている。特に欧州では、マスク氏が現地の政治に介入しようとしたことで販売が急落。世界全体でも販売不振が続き、同社の株価も大幅に下落している。

テスラの保険料はいくらかかるのか?

最も安いモデルであるテスラ・モデル3の価格は3万5000ドルからであり、マスク氏のEVは決して市場で最も手頃な価格ではない。それに加え、テスラの自動車保険はすでに多くの車よりも高額になっている。

2025年3月のBankrateのデータによると、2023年モデルのテスラ・モデル3に対するフルカバー保険の年間平均費用は3495ドルに達している。「これはトヨタ・カムリの全国平均2678ドルよりも年間約800ドル高い」と、Bankrateの保険アナリストであるシャノン・マーティン氏は本誌に語った。

「しかし、モデルXやS プラッドのドライバーはさらに高額な保険料を支払っている。比較すると、BMW i4の保険料はモデル3と同程度で、フルカバーの年間平均費用は3792ドルとなっている」とマーティン氏は補足した。

Insurifyのデータジャーナリストであるマット・ブラノン氏によると、現在、EVの保険料はガソリン車と比べて平均23%高くなっており、年間フルカバーの平均コストは3430ドルに達している。

「2025年2月時点で、テスラ・モデル3、モデルY、モデルXは、最も保険料が高いEVとなっている」とブラノン氏は述べた。Insurifyのデータでは、テスラ・モデル3のフルカバー保険料は昨年から30%増加し、年間4362ドルとなった。

「これは、同クラスのメルセデス・ベンツAクラスよりも25%高いコストとなる。2025年のテスラ・サイバートラックの年間フルカバー保険料も3813ドルに達した」とブラノン氏は付け加えた。

テスラの保険料は今後さらに上昇するのか?

ブラノン氏によると、盗難や破壊行為(ヴァンダリズム)は、保険会社が保険料を決定する際に考慮する重要な要素だという。

「テスラ車を狙った破壊行為が増加し、収束しなければ、今後包括保険(コンプリヘンシブ・カバレッジ)の料率が上がる可能性がある」と彼は警告した。

マーティン氏は、車両保険の包括補償部分では破壊行為もカバーされるが、事故による損害と比べると保険料への影響は小さいと説明する。しかし、影響はゼロではないという。

「2023年にTikTokで流行した、特定のKiaやHyundaiモデルを狙った盗難トレンドから学んだように、この種の損害が続けば、保険会社はテスラ車の保険提供を拒否する可能性もある」とマーティン氏は警鐘を鳴らした。

2022年、KiaやHyundaiの一部モデルでは、エンジンを始動させる際に必要なイモビライザー(盗難防止装置)が搭載されていなかったことから、TikTokやInstagramで「盗みやすい車」として話題になった。

この装置は、本来であればキーを挿入すると信号を送る仕組みで、適切な信号がない場合はエンジンをロックし、車両を始動できないようにする。しかし、この機能がないことを悪用し、未経験の若者でも簡単に車を盗めるようになり、SNS上で「Kiaチャレンジ」として広まっていった。

その結果、2023年にはKiaやHyundaiの盗難件数が全米で急増。これを受け、保険会社は盗難リスクの高い州でこれらの車の保険提供を拒否する事態に発展した。米国大手のState FarmやProgressiveは、2015年から2021年に製造されたKiaやHyundaiの特定モデルについて、州ごとに補償範囲を縮小したり、新規契約を停止したりする措置を取った。

車全体の保険料が上昇中

自動車保険料はここ数年で上昇を続けており、マーティン氏はこの傾向が今年も続くと予測している。「自動車のコスト自体が上昇する可能性があり、その要因として関税が大きく影響するかもしれない」と彼女は指摘した。

さらにマーティン氏は、「最近の破壊行為の増加はテスラに集中しており、他のメーカーの車には影響していない。そのため、テスラインシュアランス(Tesla Insurance)を利用するドライバーは、他社の保険を契約している人よりも大幅な保険料の上昇を経験する可能性がある。リスクが分散されていないためだ」と述べた。

ブラノン氏によると、この上昇傾向はEV市場ではさらに顕著になる可能性がある。

「EVの保険料は2024年に28%上昇しており、ガソリン車(内燃機関車)の保険料上昇率の2倍の速さだ」と彼は指摘した。「テスラ車のフルカバー保険料は過去数年間上昇し続けており、高額な修理費が保険料に影響している。もしテスラ車の部品コストが上昇すれば、フルカバー保険料もさらに引き上げられる可能性がある」。

テスラの低迷は続くのか?

テスラが受けている打撃は評判の悪化だけではない。EV市場の競争が激化し、同社は従来の大手自動車メーカーだけでなく、中国のBYDのようなEV専門メーカーとの競争にも直面している。

しかし、テスラの急激な低迷は、マスク氏がトランプ政権で果たしている役割と無関係ではないと指摘する声もある。Cars.comの最新データによると、トランプ氏がホワイトハウスに復帰して以来、中古EV市場が大きく変化している。

現在、米国では中古EVを購入しようとする人々が、前年より31%多い選択肢を持つようになったが、その一方で、テスラ以外のEVを探す傾向が強まっている。

Cars.comによると、テスラ以外のEVの需要は前年比で28%増加しているのに対し、テスラの中古車検索数は先月比で16%減少している。これは、テスラの中古車価格が6.6%下落しているにもかかわらず起きている現象だ。

新車市場でも同様の傾向が見られる。Cars.comの調査では、EV全体の検索数は前年比25%増加したが、テスラ車を避ける動きが顕著になっているという。研究者らは、バイデン政権が導入した7500ドルの連邦EV税額控除がまだ適用されるうちに購入を決めようとしている可能性があり、トランプ政権による政策変更を警戒していると分析している。

ブラノン氏は、テスラが慎重な購入者を引き付けるために、さらなる値下げを余儀なくされる可能性があると指摘している。

「テスラはすでにサイバートラックとモデル3の価格を引き下げている」と彼は述べた。「中古テスラの平均価格は過去1年で7.8%下落しており、これは中古車市場全体の平均下落率(2.7%)の約3倍の速さだ」。

さらに彼は、「2023年から2024年にかけて、同社の販売台数は6%減少した。もし需要が低迷し続ければ、テスラはさらなる値下げや、0%金利ローンなどのインセンティブを拡大する可能性がある」と分析している。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏