広さと走りを両立!ワゴンの魅力を再定義したフォルクスワーゲン「ゴルフ8.5ヴァリアント eTSI Active」の完成度

広さと走りを両立!ワゴンの魅力を再定義したフォルクスワーゲン「ゴルフ8.5ヴァリアント eTSI Active」の完成度

2021年に発売された、電動化、運転支援の強化、デジタル化が強化された第8世代のフォルクスワーゲンゴルフにも、ワゴンのヴァリアントが用意されていた。

が、これまでのヴァリアントと大きく違うのは、基本となるハッチバックモデルよりホイールベースが伸ばされ、ワゴンとしての機能、実用性を大きく高めた点だった。具体的にはハッチバックのホイールベースが2620mmであるのに対して、ヴァリアントは50mm長い2670mmに延長。ボディ全長もハッチバックの4295mmから4640mmへと345mmも伸ばされている。

そんなゴルフヴァリアントが2025年1月、ハッチバックモデルとともに8.5へと進化した。

新インフォテイメントシステム、パワートレーンなど各所にみられる進化

フロントのVWエンブレムがイルミネーション付きになったのはハッチバックモデル同様で、新インフォテイメントシステム=”MIB4”は12.9インチに大型化され、8でのウィークポイントだったエアコンの温度やオーディオのボリウムを調整するタッチスライダーにやっとバックライトが付き、夜間の操作性が向上したほか、「ハロー・アイダ」または「ハロー・フォルクスワーゲン」と呼びかけると起動してエアコンやナビの目的地設定などの機能を音声で操作できるIDAボイスアシスタントを新搭載。テールランプにはダイナミックターンインジケーターも用意されている。

パワートレーンも変更され、eTSI Active Basic、eTSI Activeに搭載されていたマイルドハイブリッド採用の直列3気筒1Lガソリンターボユニット(110ps、20.4kg-m)を廃止。8.5ではガソリンエンジンモデルとして、おなじみのマイルドハイブリッド採用となる直列4気筒1.5Lガソリンターボに統一。

116ps、22.4kg-mと150ps、25.5kg-mの2種類の最高出力、最大トルクを持つパワーユニット(モーターは19ps、5.7kg-m)が用意されることになった。また、TDIと呼ばれるクリーンディーゼルターボエンジンは2Lの排気量で150ps、36.7kg-mを発揮。いずれもVW自慢の7速DSGが組み合わされる。WLTCモード燃費はガソリンモデルが18.3~18.4km/L、クリーンディーゼルモデルが20.1km/Lとなる。

タイヤサイズはガソリンモデルのeTSI Active Basicが205/55R16、eTSI Styleが225/45r17、eTSI R-Lineが225/45R18。TDIモデルは225/45R17または225/40R18がグレードによって装着されている。

ゴルフのハッチバックではなく、あえてヴァリアントを選ぶ大きな理由が、ラゲッジルームの使い勝手にあることは明白だ。さらに、ホイールベースの延長による後席膝周りスペースのさらなるゆとりも見逃せないポイントとなる。

具体的には、ゴルフ8.5のラゲッジスペースの実測寸法は、ハッチバックモデルが開口部地上高660mm、フロア奥行き750mm、フロア幅1030mm、天井高675mm。一方、ヴァリアントは開口部地上高610mm(開口部に段差なし)、フロア奥行き1040mm、フロア幅1005~1250mm、天井高680mmと、開口部地上高の低さによって重い荷物の出し入れがより楽になるのと合わせて、ラケッジフロアはより広くなっているわけだ。

さらに後席を倒せば、ほぼフラットになるフロアの奥行きは1640mmに達する(前席シートバック背後までなら1900mm程度に)。さらにパワーゲートも用意されている。

後席の居心地、膝周り空間のゆとりもハッチバックモデルより優れている。身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で、ハッチバックモデルは頭上に130mm、膝周りに175mm(ゴルフ7ハッチバック、ヴァリアントは160mmだった)。

対してヴァリアントは頭上の130mmは変わらないものの、膝周り空間はホイールベースの延長によって、足がゆったりと組める220mm!!まで拡大しているのだ。このハッチバックとヴァリアントのパッケージングの違いは、繰り返すが、第8世代で初めて行われたトピックと言っていい。つまり、ラゲッジルームだけでなく、後席のゆとりを優先するならヴァリアントを選べばいいことになるわけだ。

私事で恐縮だが、筆者は2014年型ゴルフ7ヴァリアントハイラインを所有し、今でも2020年型ゴルフ7.5ヴァリアントハイラインマイスターに大満足のまま乗り続けている。

が、後席に家族が乗ると、身長165cmの娘から「狭い」というクレームがくることもある(助手席を前出しして解決している)。それも、ゴルフ8ヴァリアントならクレームなし。ゆったりと寛げるとのこと。

7、7.5と8、8.5の後席居住性の差はけっこう大きいのである。しかも、eTSI Basicを除いてフルオートトリプルゾーンエアコンが完備され、後席独立で温度設定ができるのだから(7は運転席、助手席の2ゾーンで後席独立温度調整機能はなし)、空調による快適度も大きく進化しているというわけだ。

ゴルフらしさある乗り味という意味では、筆者は150psのエンジン、225/45R17サイズのタイヤを履くeTSI Style以上であると8時代から思っているところではあるが、今回、試乗できたのはゴルフ8.5ヴァリアントeTSI Activeであった。

つまり、8の3気筒1Lターボエンジン110ps、20.4kg-mに代わる、4気筒1.5Lターボエンジン、116ps、22.4kg-mのエンジンスペック、19ps、5.7kg-mのモータースペックかつ、205/55R16サイズのタイヤを履くモデルだった。

ある意味、ベーシックなゴルフであり、ヴァリアントであるのだが、もっとも燃費性能に優れた (18.4km/L WLTCモード) 気筒休止システム=アクティブシリンダーマネージメント(ATC)を備えたヴァリアントとも言えるのである。

ゴルフ史上もっとも静かな空間を約束

さて、ゴルフ8.5ヴァリアントeTSI Activeを走らせれば、まずはファブリックシートのかけ心地の良さ、腰回りの分厚いクッション感とホールド感に感心させられる。そして4気筒のスムーズさとゆとりあるトルクによるゴルフらしい軽やかな加速性能を実感でき、8の3気筒モデルとは走りの質感がまるで違うことに気づく。乗り心地はエアーボリウムの大きい16インチタイヤを履くこともあって、荒れた路面の走行や段差の乗り越えでもフラットライドに徹し、快適そのもの、上質だ。

動力性能そのものも、市街地や首都高速道路を走る限り、十二分。ドライビングプロファイルのエコモードでは穏やかな加速性能となるものの、コンフォート以上なら実用ワゴンとして加速力に不足はない。繰り返すがさすが、4気筒である。

車内の静粛性に関してもエンジンノイズはもちろん、ロードノイズもうまく遮断され、ゴルフ史上もっとも静かな空間が約束されている。48Vマイルドハイブリッド採用によるモーターアシストは感じにくいが、アイドリングストップからの復帰時などのショックのなさにその効果が表れていて、アイドリングストップ機能による煩わしさは皆無に近い。そして8.5の発見として、8よりボディ剛性が高まった印象を受けたのも本当だ。8の3気筒、ベーシックモデルは軽やか過ぎた走りでドイツ車らしさ、ゴルフらしさがかなり薄まってしまった印象を持っていたのだが、直4エンジンとスペックに表れないボディ剛性の強化!?によって、8の3気筒エンジンを搭載する”無国籍感”もあったベーシックモデルに代わる8.5のeTSI Activeモデルでも、7や7.5のガッチリ、ドシリとしたドライブフィールこそ得られないものの、軽快で爽やかなドライブフィールとともに、往年のゴルフらしさが多少、復活したように思えたのである。7.5以前のゴルフを知らないユーザー、あるいはより軽やかに走り、快適なゴルフヴァリアントを望むユーザーにとっては、これはこれで十分に満足できるゴルフのワゴン版、ヴァリアントと言えそうだ。

とはいえ、8ヴァリアントでの試乗印象からも、主力グレードとなるはずの150psを発揮するeTSI Style、R-line、そして図太いトルクが自慢のクリーンディーゼルターボとなるTDIの試乗も行ってみたい。そのレポートは改めて報告することにしよう。

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