2025年の半導体市場15%成長、2nm技術や先端封止技術 AIと高性能コンピューティングがけん引
米調査会社のIDCによると、世界の半導体市場は2025年に15%超成長する見通しだ。AI(人工知能)とHPC(高性能コンピューティング)への世界的な需要が引き続き増加することが要因だ。クラウドデータセンターから特定産業の主要アプリケーションに至るまで、様々な分野で技術の移行が進み、半導体業界に新たな成長の機会をもたらすという。
メモリー24%増、非メモリー13%増、成熟ノードも好調
メモリー分野は24%以上の成長が見込まれる。主に、AIアクセラレーターに必要なHBM(広帯域メモリー)である「HBM3」や「HBM3e」などのハイエンド製品の普及、そして2025年後半に導入される新世代「HBM4」が主要因となる。
非メモリー分野は13%成長するとみる。AIサーバーやハイエンドスマートフォン用のIC(集積回路)、無線LAN「Wi-Fi 7」といった、高度な技術世代(プロセスノード)半導体の需要が後押しする。「レガシー半導体」とも呼ばれる成熟プロセスノード(旧世代型)品も、消費者向け電子機器の回復を背景に好調に推移するという。
ファウンドリー業界を支配するTSMC
半導体のファウンドリー(受託製造)で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の市場シェアは2023年時点で59%、2024年時点で64%だった。これが2025年には66%へと拡大し、韓国サムスン電子や中国・中芯国際集成電路製造(SMIC)、台湾・聯華電子(UMC)などの競合を大きく引き離すとIDCはみる。
一方、パッケージング(封止)技術やフォトマスク製造、非メモリーのIDM(垂直統合型デバイス製造)なども含む、ファウンドリーの新定義「Foundry 2.0」においても、TSMCは急成長すると予想される。TSMCは、従来の業界構造と最新の業界構造の両方にわたり、全方位的な競争優位性を示すという。
先端プロセスノードの生産能力12%増
IDCによれば、AIブームを背景に先端プロセスノード(20nm以下)への需要も急増している。TSMCは台湾で2nm及び3nmの製造を継続するとともに、米国で4nm及び5nmの製造を進めており、間もなく量産に入る予定である。
サムスン電子は、GAA(ゲート・オール・アラウンド)世代を最初に導入した経験を生かし、韓国の首都ソウル南郊の華城で2nmの技術を進化させている。
米インテルは、新たな戦略計画の下で1.8nmプロセス「Intel 18A」の開発に注力している。これら企業の動きにより、先端プロセスノードの生産能力は2025年に12%増加するとIDCは予測する。「2025年は2nm技術にとって重要な年になる」(IDC)という。
先端パッケージング技術が急成長
IDCは、「先進的なパッケージング技術はますます重要になっている」と述べる。FOPLP(ファンアウト・パネルレベルパッケージ)は2025年以降、急速に成長するとみられる。加えて、複数の半導体チップを組み合わせるチップレット集積技術「CoWoS(コワース)」は生産能力が拡大する見通しだ。2024年、TSMCのCoWoS生産能力はウエハー換算で33万枚だった。同社はこれを2025年に66万枚と、倍増させる計画だ。
米エヌビディア(NVIDIA)や米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、米ブロードコム(Broadcom)といった高性能コンピューティング企業からの需要がその背景にある。これに伴い、プロセス装置メーカーなど台湾の装置サプライチェーン(供給網)も成長の機会を得るとIDCは分析する。
前述した通り、IDCは2025年の世界半導体市場が2桁成長を遂げると予測している。しかし、半導体産業は、地政学的リスクや、産業補助金、貿易関税などの経済政策、最終市場の需要、新たな生産能力による需給の変化など、様々な変動要因に対応する必要がある。これらは、2025年に注視すべき重要な要素だとIDCは指摘する。