テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは:スペイン、中国「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由

テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは

スペイン

EV専門誌「Electrek」によると、欧州大陸でテスラ車の販売が最も急減した国の1つがスペインだ。1月の販売台数は269台と、前年同月の1094台から75%減少した。

中国

中国の全国乗用車市場情報連合会(乗連会)の予備データを見ると、2月における中国製テスラの販売台数は3万688台と、前年同月比で49%減だった。それに引き換え、中国のライバル企業BYDは、国内向けと輸出向けを合わせた卸売販売台数が31万8233台と、前年同月比で161%増だった。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、スティーブ・マン氏によれば、中国製テスラの販売台数が減少したのは、上海工場で生産が停止されたからのようだ。つまり、生産が停止されていなければ、出荷台数の減少幅ははるかに小さかったということになる。

中国の国内販売台数に関する総合的データは、近日中に発表される予定だ。ロイターは、乗連会が2月初めに発表した報告書からの引用として、1月の販売台数は前年比で11.5%減、12月比で32.6%減と報じている。

「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由

<テスラに暗雲が立ち込めている。欧州市場での販売台数が大幅に減少し、株価も下落。かつてのEV王者は、この危機を乗り越えられるのか>

米電気自動車大手テスラの株価が、回復基調に向かわず苦戦している。新たに発表されたデータによれば、欧州における販売低迷が、山積する課題に拍車をかけているようだ。

Yahooファイナンスによると、テスラ株価は2月25日に8.4%下落し、この記事を執筆している2月26日午前の段階では299.19ドルで取引されている。

テスラにとって、2025年は厳しい船出となった。テスラ株は、世界で最も広く保有されている銘柄のひとつだが、Yahooファイナンスを見ると、年初来で約25%値を下げている。ドナルド・トランプ大統領の就任式が行われた1月20日以降の下落幅は約29%だ。

同社株価がこのところ下落している原因は多々あるが、とりわけ影響が大きいのは、最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏の米政府における役割だ。また、米国以外での販売不振が相次いで報じられ、海外のライバル企業との競争が激しさを増していることもある。

欧州でシェア激減、アジアでも販売不振

トランプ氏が大統領選に勝利した際、テスラは上昇局面に入った。同社株価は2024年12月半ばに480ドル弱とピークを迎え、これにより過去12カ月の上昇率は50%となった。ところが、2025年に入ってからの下落分で、同社の時価総額は数十億ドルも下がり、2月25日に株価が8.4%下落すると、2024年11月以来で初めて1兆ドルを割り込むかたちとなった。

株価が下落した2月25日は、欧州の新車登録に関する最新データが発表された日でもあり、欧州におけるテスラの販売不振が明らかになった。

欧州自動車工業会(ACEA)によると、欧州連合(EU)、欧州自由貿易連合(EFTA)、ならびに英国におけるテスラの2025年1月販売台数は9945台で、前年同月の1万8161台から45%減少した。これに伴い、同社のシェアも1.8%から1.0%に減少した。一方で、同期間に電池式電気自動車(BEV)の販売台数は3分の1以上(34%)の伸びを見せている。

この最新データが発表される前には、欧州だけでなくアジア太平洋地域における同社の販売不振についても報道されており、テスラが以前から直面している問題をいっそう大きくしている。

中国勢の台頭に直面

欧州での市場シェア低下からもわかるように、テスラは、独フォルクスワーゲンなどのライバル企業だけでなく、上海汽車集団(SAICモーター)といった中国勢との競争にも直面している。

広東省深セン市に拠点を置く比亜迪(BYD)は、このところテスラに迫る勢いを見せている。2025年2月には、英国での販売台数で初めてテスラを上回ったことが、英自動車工業会(SMMT)のデータで明らかになった。同時にBYDは、テスラがかねてから未来戦略の柱としてきた、安価な自動運転機能の搭載も始めている。

アナリストはまた、マスク氏がトランプ政権に関与することで、テスラ株主が差し迫っているとみなしているであろう優先事柄に集中できていない可能性を危惧している。これに加えて、マスク氏が政治的な姿勢を強め、欧州全域の極右政党支持を表明していることなどから、テスラの顧客ベースが離れていく怖れもある。世論調査によれば、テスラの顧客層は左寄りだ。

B・ライリー・ウェルス(ボストン)のチーフ・マーケット・ストラテジスト、アート・ホーガン氏は、ロイターに対して次のように語っている。

「マスクは、現場で細かく指示を出すタイプの経営者だ。ホワイトハウスの執務室であれほど長い時間を過ごしているのなら、自ら率いる上場企業を含めた企業の経営に、どのくらい時間を割いているのだろうか」

報道によれば、一部のテスラ車オーナーの中には、マスクの政治的な動きへの反応として、所有していたテスラ車を売却したり、新規注文をキャンセルしたりする人が出ているようだ。世論調査によれば、多くの見込み客が、同様の政治的な理由からテスラを敬遠し、代わりに海外メーカーの電気自動車を選んでいると示唆されている。

テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ

<「誇りを持てない」──かつてEV革命の象徴だったテスラを、世界中のオーナーが手放している。ブランドイメージの急落が、オーナーの選択を変え始めた>

テスラのオーナーたちが、イーロン・マスク氏のトランプ政権への関与に抗議し、車を手放していると報じられている。

一般のドライバーのみならず、一部の著名人も、マスク氏が新設した「政府効率化省(DOGE)」を率いていることや、トランプ氏の政策を支持していることに反発し、車を売却したと主張している。

テスラはここ数週間、厳しい状況に直面している。ヨーロッパでの販売不振や、中国の自動車メーカーBYDをはじめとするライバル企業の競争激化が、株価に悪影響を与えている。もしマスク氏の政治的活動が影響し、多くの消費者がテスラ車を売却したり、他ブランドへの乗り換えを決断すれば、EV業界のリーダーであるテスラにさらなる打撃となる可能性がある。

現在のデータでは、DOGEとトランプ政権は米国内で比較的高い支持率を得ている。しかし、他の調査では、マスク氏の政治的関与が理由でテスラを売却したり、購入を控える人が増えていることが示されている。

1月下旬にEV専門メディア「Electrifying.com」が実施した調査では、新車購入を検討している人の 59%が「マスク氏の存在がテスラ購入をためらわせる要因」と回答した。この調査(対象1000人)によると、すでにEVを所有している層の61%が「中国製のEVを購入することに前向き」と答えている。

オランダのニュース番組「EenVandaag」が2万6000人を対象に行った調査では、31%のテスラオーナーが「マスク氏の行動が原因で車を売却を検討、またはすでに売却した」と回答。さらに40%が「CEOの言動や政治的立場によって、テスラに乗ることが恥ずかしくなった」と答えた。

ヨーロッパでのテスラの販売不振も、マスク氏が英国やドイツの政治に介入していることが要因とされる場合がある。しかし、一部の専門家は「販売不振の主因は、テスラの製品ラインナップが時代遅れになっていることや、競争の激化によるものだ」と指摘している。

一方で、マスク氏の共和党支持層での人気が、右派の消費者をテスラに引き寄せる可能性もある。ただし、2023年のGallupの調査では、共和党支持者の間でEVを選択する傾向が低いことが示されている。

シンガーソングライターのシェリル・クロウは2月15日、Instagramにテスラを手放す様子を撮影した動画を投稿。「親にいつも言われていた...『付き合う人が自分を表す』ってね」とキャプションに記し、「どこで線を引くかは自分で決める時がくる。さよなら、テスラ」とコメント。

また、彼女は「@npr(米公共ラジオ)に寄付した」と明かし、NPRが「大統領マスク」によって脅かされていると主張した。

英国の新聞「The Telegraph」によると、ある元テスラオーナーは「リース期間が終わったら車を手放す」と語った。

「このブランドは、私にとってはもう毒のような存在になってしまった。1939年のドイツでフォルクスワーゲン・ビートルを買うようなものだ」と51歳の元オーナーはコメント。

EV専門メディア「Electrifying.com」のCEOジニー・バックリー氏は、金融メディア「This is Money」に対し、「テスラはEV普及に大きな貢献を果たしたが、マスク氏の個人的な関与がブランドに対する評価を二極化させ、多くの消費者が他社製品を検討する要因になっている」と述べた。

カナダのテスラオーナーのアラン・ロイ氏は、ニュースサイト「GlobalNews」に対し、「マスク氏の政権関与と、トランプ氏のカナダへの対応に怒りを感じたため、テスラ2台を売却し、サイバートラックの注文もキャンセルした」と語った。

さらに、最近では米国内のテスラショールーム前で反マスク派の抗議活動も行われている。デモ参加者はプラカードを掲げ、「クーデターを止めろ」とシュプレヒコールをあげながら、購入者に対しテスラを買わないよう呼びかけている。

投資会社Wedbush Securitiesのアナリストは2月12日付のレポートで、マスク氏のDOGE関連の行動やトランプ氏との強固な関係が「一部の消費者をテスラブランドから遠ざける可能性がある」と指摘した。

「この動きは11月以降、ヨーロッパや米国の一部地域で勢いを増している。しかし、現時点ではテスラにとって重大なブランドリスクではなく、管理可能な範囲にとどまっている」とレポートは分析している。

一方、EV支持派のX(旧Twitter)アカウントは次のように投稿した。

「活動家たちは、マスク氏に仕返しするためにテスラを攻撃しようとしている。団結すれば彼らの妨害は阻止できる」

「だが、こうした攻撃はマスク氏には何のダメージも与えない。彼を黙らせることもできない。ただ、アメリカの労働者、製造業、そして中国との競争力を傷つけるだけだ」

別のXアカウントi like teslasは、賑わうテスラショールームの映像を投稿し、「DOGEのおかげで、こんなに混んでいるのは初めてだ」とコメントした。

また、オランダの EenVandaag の取材に応じたテスラオーナーの一人は、「美しい音楽を作った作曲家の中にも悪いことをした人はいる。だからといって音楽の美しさが損なわれるわけではない」と語り、マスク氏の政治観に左右されないと述べた。

Yahoo Finance によると、テスラの株価は過去1カ月で 10.2%下落し、先週金曜日の終値は355.84ドルだった。ただし、選挙後の上昇トレンドが続いたため、過去6カ月では 76.7%の上昇を記録している。

マスク氏やトランプ氏に関連する問題を除けば、テスラ最大の課題は国内外のライバル企業との競争に打ち勝つことになりそうだ。

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