日産内田社長が強制退任!後任の「暫定CEO」にパパンCFO、ホンダとの統合再交渉も視野に

日産内田社長が強制退任!後任の「暫定CEO」にパパンCFO、ホンダとの統合再交渉も視野に

 日産自動車の内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)が退任する方向で社内の調整が進んでいる。就任から5年。内田社長は、社内外の退任待望論をものともせずに表舞台で戦ってきたが、ついに万策尽きたようだ。特集『日産 消滅危機』の#24では、内田社長辞任の内幕を明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

● パパンCFOの前職は北米事業トップ 業績悪化の元凶を作った責任者として批判も?

 2019年12月の就任から5年、ついに進退極まった。日産自動車の内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)が退任する方向で社内の調整が進んでいる。

 3月6日に開催予定の日産の指名委員会で、内田社長の解職、および後任人事について議論されることになっている。

 ダイヤモンド編集部の調べでは、後任の「暫定CEO」として選出されるのはジェレミー・パパンCFO(最高財務責任者)となる予定だ。

 パパン氏は、日産の最高意思決定機関であるエグゼクティブ・コミッティ(EC)メンバーの一人。業績悪化の引責で退任した前CFOのスティーブン・マー氏に替わってCFOに就いたばかり。CFO就任前まで北米事業の責任者、アメリカズマネジメントコミッティ議長を務めていた。

 後任のパパン氏は、2019年に内田社長が登板した際に、北米事業のCFOとして構造改革を乗り切った実績はある。ただし、ある日産関係者は「日産全社のリーダーシップをとり先頭に立つ人物ではない」という。業績悪化の元凶と作った前北米事業トップを次期後継に据えることに、批判の声が上がることになりそうだ。

 後継人事では、チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)を務めるギョーム・カルティエ氏も候補だったが、同関係者は「(パパン氏が、)子会社化されてもホンダとの統合交渉を進めるべきと主張していることが指名委員会メンバーに評価されたようだ」と語っている。

 トップ刷新を機に、日産は破談となった統合交渉を再開させる公算が高まっている。パパン氏の初仕事は、ホンダの三部敏宏社長に頭を下げることから始まるのかもしれない。

日産[e-POWER]が大ピンチだと!? ホンダの[e:HEV]と比べると評判がイマイチなのはなんで?

 結局、破談となった日産とホンダの経営統合だが、両社には経営状態やその理念に加えて技術にも大きな違いがある。それを象徴するのが日産のe-POWERとホンダのe:HEV。今回の一連の報道では、この2つのユニットの違いが白日の下にさらされてしまった……。

 ※北米でのe-POWERユニットについて一部事実と異なる表現がございました。訂正してお詫び申し上げます

 文/長谷川 敦、写真/日産、ホンダ、CarWp.com

日産苦戦の要因はハイブリッドシステムにあり?

 日産とホンダが袂を分かつ理由はベストカーウェブをはじめとするさまざまなメディアで語られているので、本稿でそれを詳しく書くことはしないが、日産が苦境に陥っているのは事実だ。

 ではなぜ日産が苦境に陥ったのか?その原因もひとつではないはずだが、大きな理由として北米市場での売り上げ低下がある。

 日産車が北米で売れていないのは、同社の持つハイブリッドシステムが当地に適していないからだといわれている。

 その日産製ハイブリッドシステムがe-POWER(イーパワー)で、日本国内では人気と評価を得ている(2024年コンパクトカー売上No.1)ものの、北米ではそもそも展開がない。

 これにはe-POWER特有の理由があって、そのことについては後述する。

 対するホンダのハイブリッドがe:HEV(イー エイチ イー ブイ)と命名されるシステムであり、こちらは全世界で高く評価され、実際にセールスも好調だという。

 一見同じように思える両社のハイブリッドシステムだが、実際にはほぼ根本からの違いがあり、これが売り上げにも影響しているのは事実。

 そこで次項からe-POWERとe:HEVの詳細を見ていくことにし、どうして評価に差がついたのかを考えてみたい。

日本特化型?の日産e-POWER

 日産のe-POWERが登場したのが2016年。2代目ノートのマイナーチェンジと同タイミングでラインナップに追加された。

 e-POWERは世界で初めて量産コンパクトカーに採用されたシリーズ式ハイブリッドシステムであり、登場するやいなや注目を集めて好調な販売成績を記録した。

 シリーズ式ハイブリッドシステムはそれまでのパラレル式とは異なり、走行用の動力はすべて電動モーターから得るのが特徴だ。

 つまり車体に搭載されるエンジンは発電用であり、少々乱暴にいうとe-POWER搭載車は発電機を積んだ電気自動車ということになる。

 e-POWERのポイントは、通常は走行に使う1.2リッター直列3気筒エンジンを発電用にしたことで、これに電動モーターとバッテリーを組み合わせてハイブリッドシステムを完成させている。

 内燃エンジンにはエネルギー効率に優れた回転数があり、e-POWERでは走行を電動モーターに任せることによって、エンジンを最も燃費の良い回転数で回すことができる。

 そのため燃料消費が抑えられ、結果として高い燃費性能を実現した。

 この特性は電動モーターが得意とする発進〜低速走行で顕著に発揮され、いわゆる街乗りで燃料代を抑えることに貢献する。

 だが、e-POWERには高速走行時の燃費が思ったほど良くないという弱点もある。

 パラレル式ハイブリッド車が高速走行では主に内燃エンジンの動力を使うのに対し、e-POWERでは高回転時の効率が落ちてしまう電動モーターで高速も走らねばならず、結果としてハイブリッドでありながら燃費性能が低下してしまう。

 これが時にe-POWERが「街乗り専用」と揶揄されてしまう理由だ。

 低速走行の多い日本、特に都市部ではe-POWERの強みが発揮される。しかし高速で長い距離を走ることの多い北米では高速燃費が良くないはずで、e-POWER車のセールスは苦戦することが予見される。

第3世代e-POWERは欠点解消を目指す!

 e-POWERはシリーズ式ハイブリッドだが、内燃エンジンと電動モーターのどちらも動力に使用するハイブリッドシステムはパラレル式と呼ばれる。

 トヨタが採用するのがこのシステムで、低速走行は電動モーターが請け負い、高速ではエンジンとモーター両方の力で走行する。

 エネルギーを効率良く使えるパラレル式ハイブリッドはきわめて高い燃費性能を発揮するものの、そのぶん制御が難しく、ユニットも高価になってしまうのが難点。

 ホンダのe:HEVはパラレル式に分類されるが、低速では電動モーター、高速走行は内燃エンジンと、速度域によって動力を切り換えるのが特徴だ。

 この方式ならばエネルギーの損失も少なく、低速から高速までのトータルで燃費が向上する。

 つまりe:HEVは高速走行の機会が多い海外需要にもマッチしていて、実際に世界各国で人気を集めている。

 そしてポイントなのが、e-POWERよりは複雑になってしまうが、トヨタ式ほど制御が複雑ではないためコストを抑えられることだ。

 こうしたコストはもちろん車体価格に影響し、ホンダのe:HEV搭載車はリーズナブルな車両価格になり、かつ燃料代も抑えられるというメリットが得られる。

 おそらく現状で最も効率の良いハイブリッドシステムはトヨタ式だが、同社はハイブリッドシステムに一日以上の長があり、後続メーカーがなかなか追いつけない領域にいる。

 そのために日産、ホンダともに独自のハイブリッドシステムを開発したのだが、EV寄りの戦略をとった日産の判断が今のところは失敗に終わっているといえそうだ。

 もちろん、燃費はドライバーの乗り方ひとつでも大きく変化するので、e-POWERとe:HEVのどちらが優れているかのジャッジは簡単にはできない。

 とはいえ日産のハイブリッドシステムが世界では苦戦しているのも事実であり、それが現在の経営悪化の要因になっているのは間違いない。

 初代ノートe-POWERの発売直後は高い評価を得て販売成績も大きく伸びたが、それはあくまで日本国内や欧州の一部などでの話だった。

 そしてさまざまなハイブリッドシステムが出揃った感のある現在では、e-POWERの弱点が目立ってきてしまっている。

 こうした状況を打破するためか、日産は開発中の第3世代e-POWERを前倒しで市場に投入するというウワサも浮上してきた。

 従来のe-POWERで弱点だった高速燃費の不利を改善したといわれる第3世代e-POWERは、同時にコストダウンに成功したとの話もある。

 これらのウワサが真実であれば、燃費性能に優れ、さらに車体価格も抑えられた新たな日産製モデルが登場する可能性も高い。

 この第3世代e-POWERが日産復活の切り札となるのか?これからも注目していきたい。

ホンダ、日産の内田社長が退任すれば統合交渉再開へ=FT

ホンダは、日産自動車の内田誠社長が退任すれば両社の経営統合交渉を再開する意向だと、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が17日、関係者の話として報じた。

両社は13日、昨年末から進めてきた経営統合協議を打ち切ったと発表した。

FTによると、ホンダは日産内の反対勢力によりうまく対処できる新社長の下で交渉を再開する意向。内田氏は2026年まで留任する意向を示しているが、統合交渉をまとめられなかったことから幹部や筆頭株主のルノーから辞任圧力に直面するとみられるという。

またFTは、日産の取締役会も内田氏の退任時期について非公式な協議を開始したと伝えた。

「日産が悪い」は本当か? ホンダとの経営統合破談のウラにメディアが隠した事実

 2025年2月13日、ホンダの三部敏宏社長と日産の内田誠社長がそれぞれ会見し、昨年末から進めていた「両社の経営統合に関する検討」を終了すると発表した。事実上の「破談」となり、両社は(協業の協議は続くものの)経営戦略の見直しを進めることになる。この「破談」の内幕について、経済誌やSNSではさまざまな憶測が乱れ飛んでいるが、実際のところ、なぜ日本自動車界最大級の資本提携の話がわずか1カ月半で協議され、終了し、破談となってしまったのか。ファクト(事実)を元に、経緯を辿って内幕を考察してみたい。

「経営統合」迷走の行方…ホンダと日産の提携が二転三転した責任はメディアにあり??

 ここしばらく自動車業界の話題を独占していたのは、ホンダと日産の経営統合の二転三転するドタバタ劇だった。すっかり悪者にされて、批判にさらされている日産だが、どうも話がおかしい。

 おそらくほとんどの人は、「経営に失敗して倒産が目前に迫った日産が、無駄なプライドで、ホンダの風下に付くのを拒否して、さらなる苦境に陥っている」という理解だと思う。

 だが、これはまったく話が違う。そこへ誘導していったのはまたもや大手マスコミである。時系列に沿って、ファクトを並べてみよう。

 まず、2023年4月から2024年3月の日産自動車の決算(現時点の最新本決算)は、近年稀に見る好決算であった。

 ・小売販売台数 344万2,000台(前年比 104.1%)

・売上高 12兆6,857億円(前年比 119.7%)

・営業利益 5,687億円(前年比 150.8%)

・営業利益率 4.5%(前年比 プラス0.9ポイント)

・当期利益 4,266億円(前年比 192.2%)

 もちろんこの時点では日産の経営不安など口にするものはなく、日産のV字回復を誉めそやす記事が多かった。

 問題は2025年4月から9月の上半期決算、つまり新年度開始後の半年で、対前年比99%減と急転直下の悪化をしたことである。確かに上半期の日産の決算は悪かったが、それはたった半年の話である。日産の規模の会社がたった半年で倒産の危機に陥ることなどありえない。

 実際日産の財務状態に関しては、上半期決算で最高財務責任者(当時)のスティーブン・マー氏が以下のように発言している。

 「決算をご覧いただければ、ネットキャッシュは自動車事業でも1.3兆円と健全な水準です。流動性も健全で、未使用のコミットメントラインは1.9兆円。キャッシュ相当は1.4兆円。十分なキャッシュは確保できています」

 筆者の計算では、日産の経営がまったく回復しないままだとしても、手元の資金だけで丸1年以上、銀行からのコミットメントラインを合わせれば5年半は持ちこたえられる。その間に手を打ちさえすれば良いのだ。

 さらに2024年12月23日のホンダ・日産・三菱自動車による合同会見の内容をサマリーすれば以下のようになる。

 ・日産は2026年までに自力再建を実行し、健全な財務体質に復帰する。万が一それができなかった場合は、経営統合は白紙撤回する

・日産の自力再建後は、ホンダと日産は、持ち株会社の下で対等の立場で経営統合を進め、シナジー効果を高めていく

 つまり、「まずは自主再建ありき」であり、「再建が済めば対等」というのは当たり前の話である。

 しかも日産は、新規で設立する持ち株会社は「ホンダからの初代社長擁立」と、「株価総額比率による役員配分」について合意しており、常識的な範囲で譲るべきところは譲っている。

 ところが大手メディアは、この記者会見の話を完全に無視して、あくまでもホンダによる日産の救済であるかのように書き立てた。それがホンダの判断を狂わせたのではないか。

 自主再建ありきの統合と、対等の立場については、2024年12月の時点ではホンダの三部敏宏社長も同意している。ホンダの公式YouTubeに会見の模様はすべて残っているので誰でも再確認できるはずだ。

 おそらくは、メディア報道に煽られたホンダOBをはじめとするホンダのステイクホルダーが、三部社長を突き上げ、「瀕死の日産を救うとは何事だ。ましてや対等など話にならん」と詰め寄ったものと思われる。

 あまりの剣幕に社内調整がむずかしくなった三部社長は、やむを得ず日産に対して、子会社化ということでまとめられないかと打診したのではないか。

 日産としては、それは最初の話とあまりにも違う、すでに持ち株会社の件で譲歩もしている上で、さらに手のひら返しの条件変更を持ち込まれたのでは条件の飲みようがない、となる。

 つまりは、ホンダ三部社長と日産内田誠社長の間で重ねてきた話し合いの前提を正しく報道しないメディアによって、この経営統合は破壊されたと言ってもいい。

日産のクルマが値引きしても売れない2大根本原因!「HV敗戦」とアップデートされない「老齢車」問題に迫る

日産自動車が大幅な減益に見舞われている。中国の販売不振に加えて、米国の不振が響いた格好だ。なぜ日産は米国で苦戦を強いられているのか。特集『日産 消滅危機』の#16では、米国で好調なホンダの販売戦略と比較しながらその原因に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

販売奨励金が利益を圧迫

大幅値引きで何とか販売

 日産自動車が昨年11月7日に発表した2024年9月中間決算は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比90.2%減の329億円となった。

 大幅減益となった要因は米国事業の不振だ。販売台数の落ち込みを比較すると、米国は2.7%減の44万9000台と、5.4%減の33万9000台となった中国と比べて踏みとどまっているように見える。

 だが、日産の大幅減益をもたらしたのは、販売台数の減少ではなく、むしろ、不人気なクルマを売るための販売奨励金(値下げの費用)の増加である。

 欧州における販売奨励金が362億円なのに対し、米国での販売奨励金は1004億円に上っているのだ。

 24年3月期の通期決算では、販売奨励金の影響額が524億円だったが、今期は半年で前期の2倍もの費用がかさんでいることが分かる。

 これまでは半導体不足を背景にクルマ不足が続き、販売奨励金がなくても売れる状況だった。日産の商品力が、トヨタ自動車やホンダと比べて劣っていることが、クルマの供給不足によって覆い隠されていたのだ。

 だが、自動車部品の供給網の混乱が解消してクルマの生産が回復すると、実力差が隠せなくなった。

 日産は販売台数を維持するため、ディーラーに支払う奨励金を上積みして“何とか”売っている状況なのだ。

 日産は「e-POWER」という独自のハイブリッドシステムを持つが、トヨタやホンダの同システムと比べ燃費が劣る。そのため、長距離を運転するドライバーが多い米国ではe-POWER搭載車を販売していない。

 ただ、米国の販売不振の要因は、駆動システムの優劣だけではない。次ページでは、販売戦略や車齢などをホンダと比較しながら、日産が米国で失敗した元凶を明らかにする。

日産、誰も辞めない“小幅”役員人事に非難囂々!経営陣の高額報酬ぶりをホンダと徹底比較

日産自動車は昨年12月に役員人事を発表したが、刷新感に欠ける内容だった。ホンダが求める自立的な再建を果たすためにもさらなる経営体制の見直しが求められそうだ。特集『日産 消滅危機』の#17では、役員人事の問題点を明らかにするとともに、日産役員が受け取る高額報酬の実額を公開する。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

CFOは事実上の更迭

社内から適性を疑問視する声

 日産自動車は昨年12月、役員人事の変更を発表した。経営再建のためには経営陣の刷新が期待されたが、ふたを開けてみれば小幅な「担当替え」にとどまった。

 その中で、注目された人事を挙げるとすれば、スティーブン・マー最高財務責任者(CFO)の中国事業への担当替えだ。

 マー氏は1996年に北米日産の会計・財務担当として入社した後、常務執行役員などを経て、2019年からCFOとして内田誠社長体制を支えてきた。1月以降も執行役にとどまるが、CFOから中国事業担当への配置換えは事実上の更迭とみるのが自然だ。

 マー氏を巡っては、24年9月中間決算で日産の経営不振が明らかになる以前から、CFOとしての適性を疑問視する声が社内で上がっていた。

 本来、CFOの果たすべき役割は、会計や財務をバックグラウンドに持ち、経営者の意思決定に必要な「提案・材料」を与えることだ。だが、日産関係者は「マー氏は経営者の参謀的役割を果たすCFOではなく、いまだに昭和の金庫番をやっている」と手厳しい。設備投資や開発投資を伴う稟議案件が多数、マー氏のところで止まってしまうケースもあったという。

 パワーハラスメントの疑惑もあった。ある日産社員は「社内では、マー氏のパワハラ体質は有名。上司には忠実なものの、同僚や部下と上手にやっていく能力に欠けており、実際に(部下の)部長クラスのメンタルがやられていた」と眉をひそめる。

 そうした過去の経緯から、マー氏がCFOのままでは、痛みを伴う構造改革をやり切り、リスクを取って競争力ある分野に投資を大胆に傾けるシナリオを描けないと内田社長が判断したようだ。代わりにCFOに就いたのが証券会社勤務のキャリアを持つジェレミー・パパン氏だ。直近まで北米事業のトップを務めていた。

 CFOは事実上の更迭となったが、誰も辞任をしない日産の役員人事は問題だらけだった。次ページでは、配置転換に留まった役員人事の問題点を明らかにするとともに、批判が集まる日産幹部の高額報酬の実額を公開する。

日産の取締役2名がホンダ統合白紙決議に「反対」票!糸を引くみずほ銀行の大誤算

日産自動車の取締役会が「ホンダによる子会社化」の提案を拒否し、ホンダとの統合協議を事実上、打ち切ることになった。ただし、取締役会の決定は満場一致ではなく、ホンダ案に同調する向きもあったことがダイヤモンド編集部の調べで分かった。特集『日産 消滅危機』の#21では、「子会社化含みでもホンダとの協議継続」を主張した取締役2名の実名を明かす。議論が真っ二つに割れた背景には、日産のメインバンクであるみずほ銀行の“変節”があった。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

ホンダが日産に突き付けた最後通告

狙いは支配権拡大ではなく経営陣刷新

 わずか1カ月半での婚約破棄だった。

 2月5日、日産自動車の取締役会は「ホンダによる日産の子会社化」の提案を拒否し、ホンダとの経営統合に関する基本合意書(MOU)を破棄する方針を固めた。

 ホンダが日産に対し、統合スキームを従来の持ち株会社方式から「子会社化方式」への変更を打診したが、日産はその要求を受け容れることができなかった。

 子会社化が実施されたならば、ホンダと日産の隷属関係は決定的となることから、日産の拒否反応は殊のほか強かった。日産社内の衝撃は大きく、「統合破談のトリガーを日産に引かせるために、あえてホンダが強硬手段を講じた」(日産社員)と疑いの声が上がるほどだった。

 だが実際には、ホンダが強硬手段を選んだ真因は、他ならぬ日産自身にあった。ホンダが統合条件として日産に求めたのは、会社の膿を出し切る構造改革案である。その骨子は、経営層の大幅削減を前提にした人員計画と、工場や生産ラインの削減を前提にした生産能力計画を提示することだ。

 だが、日産の内田誠社長が提示するプランは、昨年11月の「ターンアラウンド計画」の延長線上の域を出ず、策定スピードも遅きに失した。業を煮やしたホンダの三部敏宏社長は、日産による自助努力による再建を諦め、子会社化のカードを切ることにした。

 ホンダは日産への支配権を強めたかったわけではなく、決断できない日産経営陣を刷新する荒療治として子会社化を選んだのだった。

 三部社長は「日産の救済はしない」としてきた従来方針を覆し、日産の人事に介入することで構造改革の策定・実行を主導し、そればかりか、日産の“負の遺産”を引き受ける覚悟を決めたのだった。

 日産の急激な財務悪化を懸念し、ホンダ経営陣でも日産統合に関する考え方が割れる中、三部社長が社内の抵抗勢力をギリギリ抑えつつも繰り出した、日産への最後通告だった。

 そして迎えた2月5日、日産の取締役会が出した答えは、「ホンダによる日産の子会社化を拒否し、統合交渉を打ち切る」というものだった。

 ただし、日産の取締役会は満場一致だったわけではなく、一部、ホンダの強硬手段に同調する向きもあった。取締役2名が、「子会社化含みでも、ホンダと協議を継続する案」に票を投じたというのだ。

 次ページでは、ホンダとの協議継続を主張した取締役2名の実名を明かす。実は取締役会の結論が真っ二つに割れた背景には、日産のメインバンクであるみずほ銀行の“変節”があった。

日産問題の真相!内田社長退任報道の裏側!黒幕は内部に!? ◉加藤康子×岡崎五朗×池田直渡

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